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2005年02月22日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 見たくなかった。

 でも手は止まり、釘付けになった。

 抗がん剤の投与で頭髪は抜け落ち、眉毛もない。
 数年前の面影は、全く失せていた。
 すでにわたしが知らない老人が、娘の隣に映っていた。
 胸をぎゅうっと締め付けられた。
 娘達はどんな思いで連休を、父親と過ごして来たのだろうか。
 「父さん、こんなになっていたの?」

 「そう。辛かったね」
 「うん、かなり。でも現実として捉えなきゃと思ってる」

 わたしの心臓の真ん中に、剛速球で娘達の本音が飛び込んできた。
 事態はかなり深刻を呈している。
 「父さんの人生ってなんだったのかしら?」
 別れた夫の、数年前の顔を思い浮かべた。
 「それを言うなら、母さん。自分の人生は?って思いなよ。
 母さんの人生も負けてないから」
 「まぁね」
 曖昧に笑いながら、わたしは深く傷ついていた。
 わたしの選んだ人生の先で、こんなに人を不幸にしてしまったのか。

 長女に声をかけられるまで、わたしは放心状態となっていた。
 「母さん。落ち込んでも今更仕方がないよ。それより、少し飲もうか」
 「うん。そうだね」
 父親の所から戻って来た日も今も、娘達は同じだった。
 少しも悲観的ではない。

 「うん」
 力なくうなだれたわたしに次女が、芋焼酎を渡した。
 再び写真を手にとって、わたしはじっと見つめた。
 あらためて、この悲しみの深さを思い知らされた。
 今夜は思い切り酔いたい、と思った。

 わたしたちは静かに焼酎を飲んだ。





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最終更新日  2005年02月24日 15時11分22秒
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