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2005年02月23日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay


 ものすごい風だった。

 今の住まいに越して来て、最初に感じたのがこの風の唸る音であった。
 その音はとても恐く、強靭なコンクリートの建物さえもどこかに運び去って、
 粉々にしてしまいそうなものすごい勢いであった。
 それは、女世帯の心細さをまるで見透かしたように、
 これでもか、これでも屈しないのかと、建物の壁をすさまじく叩くのであった。

 「恐いね」
 三人で布団に包まって、唸る風の音をやり過ごす。

 「大丈夫だよ。この建物が飛ぶはずないからさ。
 こういうのを、もがり笛のようなって表現するらしいよ」
 不安をうち消すように、他愛のない言葉を口に出した。
 その実、それぞれの胸のうちは地震の次の恐怖で揺れていた。
 最初に遭遇した夜。
 こうして、まんじりともしないで夜を明かしたものである。

 今ではすっかり、風の音は日常に溶け込んだ。
 「春一番だったらしいわね。
 ベランダの物干竿が飛んでいきそうだったわ」
 「そうよ。これからは三寒四温で確実に春はやってくるわ」


 わたしの大好きな瞬間である。
 これから大地は目まぐるしい勢いで、目を覚ます。
 きっと良いことがある、と希望や漲る力をくれる。

 だからわたしはまた、未来へ向かって逞しく生きていけるのだ。







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最終更新日  2005年02月24日 10時57分17秒 コメント(8) | コメントを書く
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