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2006年01月07日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 長い間愛用していたヘンケル製のお気に入り花鋏は、荷物の中に入れたつもりだったのだけれど、ドサクサの中姉の家に忘れてしまったらしい。

 本物が欲しいなーと思いながら、やはり高価な鋏はなんとなく買う気がしなかった。
 昨日、何気なく寄った刃物屋のバーゲンで、なんと二千円足らずで売っていた。
 思わず手にとって握ってみた。
 しっくりときて、中々良い塩梅だったので購入した。
 久しぶりの、本格的花鋏である。
 早速、お正月に生けた花の手直しに使ってみると、大好きな鋏の音がした。 
 それは、とても懐かしい音だった。


 わたしにとってのそれは、ある種の精神修養の場でもあった。
 花材を前に置いて生けこむ前の、あの緊張と研ぎ澄まされた空間が、わたしは大好きだった。
 高がいけばなで、と人は笑うかもしれないけれど、わたしにとっては実に崇高で落ち着く場所だった。
 どんなに辛く悲しい出来事があっても、暗く澱んだ日々が続いても、その場に臨んだ瞬間、わたしの心は穏やかで満たされたものだ。
 そんないけばなに、わたしが背を向けたのは、純粋さとは裏腹の現実の人間臭さに嫌気がさしたからである。
 きっと若さゆえの純粋さが、清濁併せ呑むということを拒んだのだろうと思う。
 今なら、案外それを受け入れることができたかもしれない。

 わたしは、断腸の思いで鋏を置いた。
 そして、二度と握るつもりはないと覚悟した。

 でも、やはりいけばなも、花も大好きで、それらに対する思い入れは、無理をして断ち切る必要もないものだった。
 鋏の音を聞くたびに今でも当時の純粋だった自分に会えるのだし、鋏の音は、わたしに再び静謐な時を取り戻してくれるのだから……。








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最終更新日  2006年01月07日 21時42分54秒
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