2005年08月05日
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カテゴリ: Essay
 マンションの八階に住んでいるのだけれど、今朝は窓を全開しているせいか、蝉の声がけたたましい。
 耳をすませると、どうやらミンミンゼミの鳴き声が圧倒的である。
 全くの無風状態なので、そろそろエアコンのスイッチをオンしたいところだ。
 でも今朝は、べたつく身体をそのままに放置している。
 汗だけではない色んなしがらみがまとわりついていて、そう簡単にはがせそうもない。
 だからという訳ではないがシャワーを浴びたいと思いつつ、こうしてうだうだとキーボードを打っている。

 そういえば、先日の姉からの電話には少しほろっとさせられた。
 「一番穏やかな人生を歩きそうだったのに、なんであなたにばっかり不運なことが舞い降りるんだろうねぇ」
 その言葉に、なぜか急に悲しくて涙声になってしまった。 

 ちゃんと楽しいことも嬉しいことも、いっぱい味わっている。
 でも周囲からみると、相当不幸そうに見えるらしい。

 わたしは平凡な日常を、誰よりも強く願って生きてきた。
 普通が一番だと信じて、石橋を叩いて渡ってきた。
 でもいつか、誰かに言われたことがある。
 「あなたの普通は言葉だけ。普通じゃないよ」
 こうなってみると、その通りだったのかもしれない。

 どこまで戻って人生をやりなおせば、この現実を回避できたのだろう。
 そんなことを思うとき、わたしの耳に蝉の声がきこえてきた。
 実家の近所の、寺の境内で日がな遊んだ子供のころの……。
 その蝉時雨が、重なった。

 いつのまにか現実の蝉時雨は、車の喧騒にかき消されていた。





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最終更新日  2005年08月05日 09時18分45秒
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