2012/05/08
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『CRONOUS』 ~黙示録~
第7話 『-戦乙女-』


朝食を済ませてから今日のそれぞれの行動のすり合わせをするのがギルドの約束である
僕はリハビリを兼ねてアイナさんとエンタイスに行く事になった
正直言うとまだ自分1人ならまだしも他人を連れて…っていうのは不安ではあった
そんな思いが顔に出ていたのか

「じゃあ…私はザンさんの補佐でもしようかな…」

そうカラーが言った
アイナさんはバルキリーだし…同じバルキリーのカラーさんが居てくれるのは心強かった



「はいよ!」

僕とアイナが頭を下げるとカラーからそんな小気味の良い返事が返ってきた
という事で僕たちはエンタイスに向かった
エンタイスの入り口でカラーがアイナにレクチャーを始める

「注意するのはサキュバスかな…ほとんどは隔離されてると思うけどたまに隔離から抜けてるのがいるので居たら退却…倒せない事もないけど無駄に疲れるからねw」

そんなカラーの言葉にアイナはうなずいて返事をした

「で…次はラミアかな…一撃がかなり痛いから戦う時は要注意って事で…で、パーティーの時は…」

カラーはバルキリーの立場としての行動を解りやすくアイナに教えていた
やはり…カラーに来てもらったのは正解だったと思える
戦い方のイロハやモンスターの特徴は説明できても
バルキリーとしての動き方となれば餅は餅屋と言ったところである



「はい…わかりました!」

カラーの講義にアイナは素直に返事をした

「じゃあ…やってみた方が早いわね…という事でザンさんよろしく~♪…敵の分布やルート的な物は慣れるしかないかないんで」

そんなカラーの言葉で狩りがスタートした
最初は入り口周辺から川沿いに移動…そして程なくして入り口に戻ってきた


「今のルート川沿いから西側のがけを上がってここに戻ってきたでしょ?」

カラーがそう言うとアイナは数回うなずいて返事をする

「戻ってくると今みたいに最初に倒したキメラが湧いてるのね…それを倒して同じように川沿いを進み今度は東側の崖を北上…そして崖を降りるとラミアがいっぱいいるのね…それを倒してここに戻る…これが通称『川』って呼ばれるルート、初めのうちはこの範囲で慣れるといいかな…安全な場所も数ヶ所あるので慣れれば1人でも来れる」

アイナはうなずいてカラーの説明を聞く

「ブゥードゥー装備の用意は?」

カラーのそんな質問にアイナは首を横に振って答えた

「なるほど…ブゥードゥー装備が着けられるようになるとだいぶ変わるからその辺がキモね…」

彼女は確かあの時ブゥードゥー装備を持っていた…しかしあれはおそらく使う事が出来ない装備…いずれ用意する必要がありそうだ

「ブゥードゥー装備となると合成素材集めが難儀する事になりそうねぇ…どれもここより上位の狩場でしか手に入らない物があるから…まぁいずれ考える必要がありそうね」

確かにカラーの言うとおり
どの装備にも1つづつ入手が困難な素材が混ざってはいる

「まぁ…悩んでもしょうがないから今は狩りを続けましょ♪」

という事で僕たちは狩りを再開した
時折カラーがアドバイスをしながら淡々と狩りが続く
どのくらい狩り続けたのか気が付くと午後になっていた

「いったん休憩ね…お昼にしましょ♪…で、午後は少し森の方に足を延ばしてみようか…」

カラーの提案に僕はうなずき昼食をとるためにウーノス城に戻った
そして僕たちの前に注文した食事が届いた時…

「で…彼女は何者なの?」

唐突にカラーがそう聞いてきた
僕は思わず口に含んだスープをふき出してしまった

「なるほどね…その反応から見て記憶がない迷子ってのはカムフラージュね…」

カラーはそうつぶやいてアイナを見つめる

「い、いや…ほら、突然そんなこと言われたら驚くってば…いやだなぁ…」

僕はテーブルをナプキンで拭きながらそう答えた

「じゃあ隠さず言うわね…正直、今日同行したのは確認のため」

「か、確認?」

「そうよ…で、確信したの…彼女は記憶喪失の迷子なんかじゃないって事をね」

カラーはそう言いながらフォークに巻きつけたパスタを口に運ぶ
僕は続きの言葉を待った

「この大陸でバルキリーはけして珍しくはない…だけどさっきの戦闘で彼女は負傷していない…」

「そりゃあ…僕が支援してるし前線のほとんどをカラーさんがこなしてたし…」

「私の目は節穴じゃないわよ…彼女はほとんど全ての攻撃を避けていた当然反撃もできたはず…でも反撃せずに避ける事に徹していた…これが意味する事って解る?」

解ってはいたが…僕はあえて返事をしなかった

「つまり彼女はエンタイスレベルの敵と互角…いや、それ以上に渡り合えるって事…つまり雷装備レベルではそうそう居る存在ではない…だけど私は彼女を全く見た事もなければ知りもしない」

カラーの言葉に僕は何も返せなかった
やはり彼女の鋭さは侮るべきではなかった

「ごめんなさい…」

その時、アイナがカラーにそう謝った

「あ、アイナさん…」

「いいの…確かに私は避けていた…反撃のチャンスがあってもあえてしなかった…そこを見抜かれてしまっては…でも、けして騙すつもりではないの…ただ、今は何も言えない…」

アイナはそう言ってうつむいた

「まぁいいやw別に責めるつもりでもないし…ただ、興味があっただけなのよ…色々な意味でねw」

カラーはそう言って笑った

「いつからその事に?」

僕はカラーに聞いた

「まぁ…言ってしまえば最初に会った時からね…という事で改めまして私はあなたと同じカーラ使いのバルキリーのカラー…ヨロシクね♪」

カラーはそう言って笑顔でアイナに握手を求めた

「よろしくお願いします!」

アイナはそう答えてカラーの手を取った
それを見て僕は胸をなでおろした
しかし…それと同時に僕があの時押し殺した疑問が頭をぐるぐると駆け巡った

「ザンさん」

彼女は本当に何者なのか…

「ザンさ~ん」

そして何をするためにココに居るのか…

「もしもーし」

そして…僕がギルドに導き入れた事は間違いではなかったのか…

「ザンジオさ~ん…行くよ~…」

今さらどうになる事でもない話だが
とんでもない過ちを犯したのではないのだろうか…そんな風にも思えてならなかった
いずれわかる事なのだろうけど
今は知らないという事がどれだけ不安なのかを痛感している
「なるようになるさ…っていうよりなるようにしかならんw」
トゥイージーがよく笑いながらそんな事を言うが
切り替えてそう思える事が羨ましく思えた
いや…そう思うように努めているのかもしれない
確かに不安のない人など存在しえない
ギルドを束ねるマスターがこんな風にうだうだしてたら話にもならない

「やっぱりトワさんはすごいな…」

僕はそうつぶやいた
そしてある事に気が付いた

「あれ?カラーさんとアイナさんが居ない…」

周囲を見回したがどこにも2人の姿は見えなかった

「うん?」

ふとテーブルに目をやると

『何度も呼んだけど気が付かないんで先に行きます♪…支払いよろしくwwごちそうさま~♪ -カラー-』

そんなメモが貼られた伝票が残されていた

「あちゃ…またやってしまった」

僕は物思いにふけるとついついのめりこんでしまう癖がある

「まぁ…ランチくらい………いち、じゅう、ひゃく、せん…」

僕は伝票に書かれた金額の桁を数える
一度伝票から目を離し目を擦ったあとでもう一度伝票を見る

「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…………な!何この金額!」

僕は慌てて店員を呼んだ

「スミマセン…この金額はなんでしょう?」

僕がそう店員に聞くと

「それでしたら…先ほどお連れ様がおみやげとしてワインやシャンパンなど数点お持ち帰りになりましたので」

店員はにこやかに笑いながらそう答えた

「ま、まじですか?」

「はい、マジでございます」

店員は満面な笑みでそう返した

「これでお願いします…」

僕はしかたなく倉庫の預金カードを店員に渡した

「毎度ありがとうございます」

店員は深々と頭を下げカードを受け取ると倉庫へと走った

「はぁ・・・」

僕は思わずため息をついてテーブルに突っ伏した
そう…僕は今日…油断がどれほど危険な事なのかを学んだ



…『To Be Continued♪』





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Last updated  2012/06/29 02:16:56 AM
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