バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

最低な大使館員




  昨夜の雨は上がってはいるものの、今朝の天候はどうも不安定。

一年のうち、300日が晴天と言われているギリシャでも、俺がアテネ入りして

からは、そんな天候どこへやら・・・・。

今にも雨が降り出しそうな、そんな強風かのなか大使館をまた訪ねた。

中に入ると、十月十九日付けの新聞が、カウンターの上に置かれているのを

見つける。

しばらくその新聞を見ていると、若い大使館員らしき男が、嫌そうな顔をし

て言った。

       嫌そうな大使館員「新聞を見に来たのですか?」

       俺       「いや・・・・別に・・・。」

   そういうか言わないうちに、素早くカウンターも上にあった新聞をひ

ったくる様にして持って行くではないか。

       俺       「何だ!新聞くらい見せてくれたって良い

               んじゃないの!!」

       嫌そうな大使館員「・・・・・・。」

       俺       「見せたくない新聞なら、カウンターの上

               に置いとくんじゃないよ!」

       嫌そうな大使館員「・・・・・・。」

       俺       「その新聞だって、どうせ税金で買ったも

               のだろ!」

       嫌そうな大使館員「・・・・・・・・。」

   すると、同じ大使館に勤めている人だろうか。

若い女の事務員が近づいてきて謝った。

       女性「すみません。規則なもんですから。」

       俺 「・・・・・。」

       女性「・・・すみません。」

   またその女性事務員が謝った。

       俺 「タイなんかでは、二三日遅れの新聞が、普通の喫茶店

         でも見ることが出来たのに、ここでは一ヶ月遅れの新聞

         さえ置いてないなんて、おかしいんじゃないの?」

       女性「すみません!外務省の方針で、新聞は大使だけしか取

         っていないんです。私達のところへも回ってこないんで

         す。私達も関係のある、重要な記事だけコピーで送られ

         てくるだけなんです。」

       俺 「・・・・だけど、それって税金でしょ。大使だけ

         の・・・・なんておかしいでしょ!たかが新聞でしょ。

         何なんですか、日本大使館では新聞が機密文書なんでし

         ょうか・・・ね。」

       女性「申し訳ありません。」

       俺 「そうですか。あなたに責任はありませんからね。あな

         たばかり責めたって・・・・しょうがないことですか

         ら。」

       女性「昔は、図書の貸し出しまでやっていたのですが、赤軍

         派の件がありまして、一部始終監視する訳にもいかず、

         止めてしまったんです。ここギリシャは紛争地域のイス

         ラエルやアラブが近いもんですから、必要以上に警戒し

         ているんです。」

       俺 「それならそうと話せば分かることじゃないです

         か!・・・ひったくることはないでしょう。見せたくな

         いものなら、見える所に置かなければいいことだし、た

         かが新聞だよ?もう少し同胞を信じて欲しいね。新聞ぐ

         らいの情報がそんなに貴重なもんかね。同胞の旅人の助

         けをするのが大使館員の役目だと思うけどね。」

       女性「すみません!」


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