2002年05月28日
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成長期(4)

11月20日頃に丸亀通いが一段落すると、「ちぎりこ」や「うないこ」を雇っての本格的な収穫が始まる。雨が降れば収穫はしないが、この仕事が約1ヶ月続くのだ。

収穫したミカンは、納屋に組み立て式の棚を作り、そこに貯蔵する。棚は間口が2間(3.6m)、奥行きが半間(90cm)で6段になっている。女竹を縄で編んだ「簾(す)」を敷いて、その上にミカンを並べるのだ。平二は1棚に600貫(約2.25t)入る棚を4つ作るのだが、ミカンの木も次第に大きくなり毎年収穫量が増えているために、すぐに一杯になってしまう。その後は納屋の軒下や母屋の土間にムシロを敷いて、その上に30センチくらいの厚みで並べる。そこが一杯になると、今度は座敷や奥の間の畳を剥がして並べる。それでも入りきらないときは床下にまで並べることもあった。収穫が終わる12月の中ごろには家の中はミカンで一杯だった。

ミカンの値段は収穫時期が一番安く、1月の末まで貯蔵しておけば次第に値段が上がってくるので、平二は少しでも長く貯蔵したかった。しかし、収穫したミカンを30cmの厚みで重ねていたのでは、上部は乾燥して皺だらけのミカンになり、下部は過湿状態で皮が膨れてしまう。それに上部の重さで変形する果実も出来るので、最高でも1ヶ月しか貯蔵出来ない。それに比べて、棚で貯蔵したミカンは2月になっても3月になってもきれいだった。

そのことに気づいた平二は、大正14年の春にミカン専用の貯蔵庫を造った。貯蔵庫は3つの部屋に分け、木造の土壁にした。換気が出来るように地面の近くに空気を取り入れる小窓を開け、天井裏へと空気が流れるようにした。もちろん小窓も天井裏への換気口も開閉できるようにしてある。平二が土壁にこだわったのは、納屋の棚で貯蔵した経験から、土壁が湿度を調節する機能を持っていることがわかっていたからだった。この貯蔵庫の完成によって棚の数は10個になり、平二のミカンは全部貯蔵できる体制が整った。

このようなミカン専用の貯蔵庫を造ったのは県下で平二が初めてだった。これを見た同世代の仲間達も、その後次々と同じような貯蔵庫を造った。ミカン専用貯蔵庫の棚で貯蔵したミカンは、果皮がしなやかで酸味もまろやかになり、収穫した直後のミカンよりもずっと美味しかったのだ。これに目をつけて高松の岸又、造田の丸十、大阪の石井などの仲買人が貯蔵ミカンを買いに来るようになった。岸又は牛車や汽車を使って高松へ運び、丸十は自分のダットサン・トラックで運んだ。大阪の石井は、出荷シーズン中はずっと曽保地区の伊三郎の家に駐在していた。そこでミカンを箱詰めして住友汽船で大阪へ運び、自分の店で売るだけでなく、木津や天満の市場へも送っていたのだ。






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最終更新日  2002年05月28日 13時10分15秒
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