Spring Has Come

Spring Has Come

妊娠期~陣痛・入院まで


自分のお腹に新しい命が宿ったことを知った。
既に我が家には息子が二人おり、
「出来れば三人目は女の子を産んで撃ち止めにしたいな」
なんて密かに願っていたので、分かった時はとても嬉しかった。
予定日は、翌年の4月29日。みどりの日。
上の子達は揃って冬の生まれ、私自身も冬生まれ。
初めての、春に誕生する子である。
ついに子供は三人か~。大変だな。でも嬉しいな。
単純にそんなことを思いながら、普通に期待を抱きつつ
過ごした妊娠期間だった。

8ヶ月、妊娠31週。
初めて「女の子だと思う」と医師に言われた。
おおっ!待望の女の子か!
名前は何にしよう。
春だから気分はウキウキするし歌いたくなるし女の子だし(はしゃぎ過ぎ)
春歌と書いてハルカはどうだろう。そうしよう。
「はーちゃん」なんて呼び名もいいかな。
そう決めてからは、誰もいない時に小さな声で「春歌ちゃ~ん」と
呼びかけたりした。元々そんな柄ではないので、恥ずかしかったのだけど。
春歌は胎動は激しくはなかったが、頻繁にウニュ~グニュ~と動いて
「ここにいるよ」と返事をしてくれているように思えた。

10ヶ月、妊娠37週6日。
私はこれより前に、ずっと通っていた近所の診療所から、
N病院という総合病院に転院していた。
診療所ではお産は扱っていなかったからだ。
N病院で度々診察にあたったO先生は、多分私と同世代の
感じの良い、とてもかっこいい先生だった。
この日もエコー診察があった。
モニターに映し出される春歌は、元気に動いている。
どうやら目を覚ましているらしい。
O先生が笑顔で私に言った。
「見てごらん。指しゃぶりしてるよ。」
そこには片手の親指をとても上手にしゃぶる、春歌のアップがあった。
口をモグモグとリズミカルに動かすその仕草は、
まるで誰かに教わったかのように上手だった。
・・・可愛いなぁ。早く会いたいな。
心からそう思ったひととき。
そして、エコー写真をもらったのはこの日が最後になった。
この日の春歌の元気な横顔、生きている証である指しゃぶりの様子。
生涯忘れはしないだろう。

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