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2010.06.25
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 本番まで残り3ヶ月を切った午後、まだ肌寒さの残るまどろみのなかで、男は不安な気持ちを隠そうともしなかった。
 「ピエール(=ウェボ/マジョルカ)は得点力のある選手、イドリス(=モハメドゥ/フライブルク)もいい選手、じゃあエトー(=サミュエル/インテル)を生かせる選手が誰なのか、カメルーンはそこに難しい課題を抱えてるんだよ。現在の4-4-3システムはル・グエン(=ポール/元フランス代表。03~06-07シーズンにかけてリヨンを率いて3連覇を達成)監督になってからのフォーメーションだけど、やっぱりエトーはセンターフォワードがベストだと思うんだよね。現在のアタッカーというポジションが本当に正しいのかどうか、そこに疑問符がつくんだ」


6月14日グループE第1戦@フリーステート(ブルームフォンテーン) 30,620人(80%)
日本代表 1-0 カメルーン代表
【得点者】
前半39分 本田圭佑(CSKAモスクワ)


 大会前には「日本の3連敗」を断言した筆者だったが、言い訳をする気は毛頭ない。まさかの日本の快進撃に、早くも「岡田武史監督続投論」も噴出しはじめた。期待感ほぼゼロだっただけに、正反対の位置にある歓喜へのリバウンドは大きい。しかし、「だったら続投」などという安易な反応には、ぜひ熟考を促したい。
 「たられば」で語るのは、少々気が引けなくもない。だが、もしイビチャ・オシムが倒れていなければ、たとえばチリのような、走力とパスワークで相手を陥れる危険なチームになっていた可能性が日本にはあった。その差は、数ミリ単位のわずかな成長だったかもしれない。それでも日本のサッカーのレベルを少しでも底上げする指導者として、オシムの存在は歴史に残るだろう。岡田監督をはじめ、ヴァンフォーレ甲府を率いた代表コーチの大木武、05年のワールドユースで日本を決勝トーナメントに導いた大熊清コーチなど、いわゆる「ボールも人も走る日本のサッカー」というオシムの思想は、多くの日本人指導者たちに影響をおよぼしたからだ。
 カメルーンとの本番まで連敗続きだった日本代表は、間違いなく崩壊の一途を辿っていた。韓国に連敗した岡田監督が発したあまりにもKYな「辞任発言」にいたっては、何人かの選手にすくなからず動揺を与えたにちがいない。「この監督を本当に信じていいのか」と。ところがカメルーンの壊れっぷりは、日本以上に深刻なのだった。


 「いま最も苦労しているのはディフェンス面だろうね。アフリカ選手権でもディフェンスがうまく噛み合わなくて、いろいろな選手を試していたからね(=2010年1月10日~31日。1-1のまま延長戦に突入したカメルーンだったが、前後半で1点ずつエジプトに失点を許して1-3、準々決勝で敗退した。カメルーンからは22歳のアレクサンドル・ソングひとりがベストイレブンに選出されている)。とくにここ最近はニコラス・ヌクル(=ASモナコ/20歳)だけがレギュラーで、あとは左サイドバックのベノア・アス・エコット(=トットナム・ホットスパー/26歳)がほぼ定位置確保かな。だけど、いまだにヌクルのパートナーが決まってないし、右サイドバックが誰になるかもわかってないんだ」

 ジュビロ磐田の李康珍(=イ・ガンジン/10年~、24歳)、鹿島アントラーズの李正秀(=イ・ジョンス/09年京都サンガ→10年鹿島アントラーズ/30歳、6月12日のギリシャ戦で先制ゴール)、サンフレッチェ広島のイリアン・ストヤノフ(=05年ジェフ千葉→07年サンフレッチェ/33歳)、あるいは湘南ベルマーレのジャーン(=02年FC東京→06年ベルマーレ/32歳セレソン2キャップ)など、一時期ほどではないものの、Jリーグのセンターバックは外国人に頼ってきたという経緯がある。その結果、代表クラスの優秀なセンターバックがなかなか育たなかったのだ。
 4年後に向けての不安は拭えないものの、しかし日本の同ポジションにはトゥーリオ(=浦和レッズ/29歳))と中澤佑二(=横浜F・マリノス/32歳)という不動のふたりが後塵を許さず、彼らのバックアップには屈強な岩政大樹(=鹿島アントラーズ)も控える。
 さらに、かつては外国人助っ人頼みだったサイドバックにも、左の長友佑都(=FC東京/23歳、欧州複数のクラブから照会中)、右の内田篤人(=鹿島アントラーズ/23歳、7月1日からシャルケに完全移籍)という若いふたりに加え、左右両サイドをこなせるアテネ五輪世代の駒野友一(=ジュビロ磐田/29歳)もいる。守備のうえに攻撃が成り立つ大舞台に向けて、ことディフェンス面においては、間違いなく日本はカメルーンを上回っていた。

 チームは、生き物である。松井大輔(=グルノーブル/29歳)からの右クロスをインサイドキックで冷静に流し込んだ本田圭佑の一発によって、そしてカメルーンの攻撃をことごとくブロックした守備によって、崩壊したはずのチームに力強いコンフィデンスが再生されていた。つまりカメルーン戦こそが日本がひとつにまとまる一服の精力剤となったわけである。繰り返し言おう。チームは、生き物だ。逆説的な物言いではある。だが本番前にチームがうまく立ち行かなくなったこと、とりわけ初戦の相手がカメルーンであったことを、日本はおおいに感謝しなくてはならない。





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最終更新日  2010.06.27 02:31:17
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