December 18, 2003
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カテゴリ: そのほか
【「リズム」という言葉】


 コーラス(これも外来語ですね。)を指導していても、この語の浸透の恩恵を受けているなぁ、と感じる場面は多々あります。特に音楽経験の少ない人が多く、しかも中高年になってから歌い始めた、という様な人が多い場合に特にそう思います。私がリズムという言葉を発しても、「音楽の専門用語だ。」という気負いもなく、違和感も殆ど無く皆が理解してくれます。そのことは、皆さんの歌でわたしもしっかり確認できます。拍節感、音符の長短の連続や組み合わせ、なんて言うより「リズム」の方が教えやすい、分かりやすい、という事はご理解いただけると思います。


【音階と"Scale"】
 日本語の音楽用語はとにかくほとんどが漢字です。音階、音程、律動、調性など、ほんの少しだけ例を挙げても明らかに、「漢字」で「文語」的で音楽の「専門用語」
であることが分かります。でも、英語に例をとってみても、音楽用語の全てに古来からのラテン語やギリシャ語や専門用語が使われているわけではありません。

 例えば"Scale"という英語があります。プラモデルやミニカーの好きな子供にとっては、模型と本物がどれだけ"Scale"が違うのか、ワクワクする大事なことです。大工さんであれ、お父さんの日曜大工であれ、大工仕事にも"Scale"は欠かせません。肉屋さんや、パン屋さんなど食品を売ったり作ったり、これも"Scale"は大事なことです。畑や牧草地や土地の広さを測るのにも"Scale"は必要です。郵便物にいくらの切手が必要か?これも"Scale"です。まだまだ、あります。そう、そして音楽を歌い奏でるとき、同じように音楽にもその"Scale"が必要なだけなのです。

 そして、その"Scale"がいいかげんで適当なものであれば、どうなるでしょう?仕事が出来なかったり、つまらない陳腐な模型だったり、作った棚や屋根が落ちたり、土地や畑の収穫のことで訴訟になったり、せっかくの手紙を受け取った人がお金を払わされたり、がっかりしたり、いろんな不満や騒動にもつながり、心や人間関係や社会の規律にも影響を与えかねません。社会がスムーズに動いて行くその裏側には、きっちりと"Scale"を守る人間の誠意の連鎖があります。

 音階もきっちりと"Scale"を取る訓練をしなければ、守らずに、また守れずに、楽しく気ままに歌っている人は楽しくても、隣の人は楽しくないかも知れませんし、聴いている人はもっとつまらないかも知れません。もしかするとどこかで怒っている人も居るかも知れません。(わたしの仕事の一つはこういう状況を回避させること、なのだと思います。)こういう事も日常英語を使っている中の"Scale"という言葉からの関連で簡単に理解できます。



ちなみに、虫のシラミ(階名ではありません!)も"Scale"だそうです。

 そして、さらには尺や寸、センチやメートル、などのように、文化、社会、国、地域、時代、とにかく様々な違いによって世界中に存在している様々な"Scale"に目を向けた時、音楽の"Scale"も同じように様々に存在している、という事が素直に理解でると思うのです。日常の言葉はそれこそスケールを変えれば、どんどんイメージが繋がって行きます。はたして日本語の「音階」という言葉でそこまでの広がりを持てるでしょうか?


【音階と"tonleiter"】
 日本語の「音階」はドイツ語の"tonleiter"がおそらく語源だと思います。ドイツ語の場合、英語の"Scale"に比べれば多少音楽に限定された言葉になってしまいます。しかし、この"tonleiter"も日本語の「音階」のように漢字で、しかも文語で更に専門用語という気負いを感じされる言葉ではありません。日常的な口語としてのニュアンスを持っています。分解して訳せば"ton"「音の」"leiter"「階段」または「梯子」です。子供にも素人にもその言葉を聞いたり使ったりする毎に、「音の階段」をイメージする事になります。

 "leiter"は"leiten"という動詞にも見たとおり関連があります。導く、連れて行く、運んでいく、案内する、通す(エネルギーを)、などが普段使われる"leiten"の意味です。これも、日常の生活の中の様子が素人や子供を問わず音楽への理解を助けてくれます。例えば、ある程度普通に言葉が出来る年齢の、ドイツ人の普通の子供に初めて"tonleiter"と言っても、何かの連想がそこに出来るわけです。日本語の「音階」をいちいち事ある毎に「音の階段」と言い換えても、7音節もある日本語の「音の階段」は物事の「名前」というより説明文でしかありません。小さな子供にはなおさらそう感じると思います。(わたしもそうだった様に記憶しています。)ドイツ人にとっては3音節でさっと言えてしまい、しかも良く知っているいつもの言葉"tonleiter"が何度も繰り返される方が、教える方にも、また教わる方にとっても便利です。


【「音程」は?】
どうも「音階」以外にも沢山のそういった例が、日本語の音楽用語にはあるようです。時間も余力もありませんので、これ以上ここには書きませんが、「音程」という日本語はどうでしょう?ある音楽事典を見ると"pitch"も「音程」、"intonation"も「音程」となっていました。では"pitch"と"intonation"は音楽の世界でも、日常の世界でも、英語を使い生活している人の中で、全く同じ物事を現しているのでしょうか?そんなことがある訳はありません。機会があれば、また書きますが、一度、興味のある方は是非調べてみて下さい。辞書を牽いただけでも、おもしろい発見が沢山あると思います。英語を母語とする人達に聞けばもっとおもしろい世界が広がるかも分かりません。是非、チャンスがあればやってみて下さい。





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Last updated  May 23, 2005 01:48:52 AM
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