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May 10, 2007
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カテゴリ: 暗闘
「速水、言葉がすぎる」  朝比奈藤兵衛がすかさず叱責したが、速水は平然と

反論した。  

「鈴木家老の考えそうなことですな、拙者はあの人には信がおけませぬ。老獪、

陰湿、権力欲の権現にみえます。旧幕軍が敗けるような事態ともなれば、加担し

た我等とご家老、・・・貴方さまにも責任を押しつける積もりにござろう」

「藩の存亡時じゃ、我慢してくれえ。お主の参加がなければこの策は成立たぬ」

  朝比奈藤兵衛が速水に頭を下げた。

「ご家老、お頭(つむ)をあげてくだされ、拙者にもことの道理は判ります。この

江戸の大手前と小川町には、千二百名もの旧幕軍の洋式部隊が駐屯いたして



「速水、わしの胸中が判ったかの、そちの申したとおり江戸は旧幕軍の巣窟じ

ゃ。それも精鋭の洋式軍じゃ」

  岡本文造と山田惣太郎の両名は黙し、江戸家老と速水小三郎の会話を耳を

傾けている。彼等二人にも国許の鈴木兵左衛門と、江戸家老の朝比奈藤兵衛と

の軋轢は承知するところであった。

「今月にも会津公はご帰国なさるそうですな。国許で政府軍と一戦するとの噂で

もちきりです」

  こうした噂の火の元は、陸軍総裁に昇進した勝海舟の思惑が大きく影響して

いた。江戸城を無血開城しょうと目論む勝は、二月九日に主戦派の永井尚志と

平山敬忠を罷免し、十日には会津藩主の松平容保、桑名藩主の松平定敬の登

城を禁じ、江戸からの退去を命じていた。



なされば、東北諸藩は連合するかもしれぬ」

  朝比奈藤兵衛が倅の茂吉と速水の様子を眺め言葉をついだ。

「小川町の知人からの話じゃが、歩兵奉行の大鳥圭介(けいすけ)殿が伝習隊

(でんじゅたい)の精鋭を率い、江戸から脱走するとの噂もあるそうじゃ」

「伝習隊とは旧幕軍の洋式部隊にございますな」



「そうじゃ、最新式装備の精鋭部隊が会津に向かうことになる」

  この頃の江戸は慶喜公が、江戸城を政府軍に開城するとの噂で陸続と幕軍

の脱走が始まっていた。諸大名の藩士までが政府軍、とりわけ薩長の専横を憎

み、幕府再興を夢みて脱藩し、北関東の各地に散っていたのだ。

  今日も幕府正規軍の一部が江戸から脱走していた。

「速水、戦国時代の到来かも知れぬな、だから、わしと鈴木殿は藩士を会津に

差し向けたいと考えておるのじゃ」

「会津に?」  速水小三郎が声を飲み込んでいる。

「父上は我等に朝敵となれと仰せにございますか?」

  茂吉が特徴のなで肩を見せ、父親の藤兵衛を見つめた。

「こんな世じゃ、誰かが犠牲にならねば藩は救えぬ」  藤兵衛が冷徹に言い放

った。  「判りました、徳川が敗けたら我等が腹を斬れば済むことじゃ」

  速水小三郎がこともなげに言い切った。

「遣ってくれるか、わしは江戸詰の藩士を主力としてことを成そうと思っておる。

人選は速水、そちと茂吉に任せる」  「岡本殿と山田はどうじゃ?」

「勿論、そのために江戸に参りました」  山田惣太郎が不敵に顔つきで答えた。

  岡本文造は無言で速水小三郎に肯いた。

「速水、倅を隊長にいたすが異存はないか?」

「御座らん。ただし藩存続のためなれば人数は絞りますぞ」  「何名じゃ?」

「四十七名といたす。赤穂浪士と同じく大義に殉ずる」

「流石は速水小三郎殿」  岡本文造が褒め上げた。

「よいか、これは殿には内密じゃ。ご帰国後に無断脱藩でやり遂げてくれ」

「ご家老、心配めされるな分ってござる」  「そちの浮かれようが心配じゃ」

「浮かれてなんぞおりませんぞ、これでも国学者の端くれにござる」

「済まぬ。ところでの坂田林左衛門じゃが、奴め、うるさくほざく」

「坂田さまがなにか?」  速水小三郎が不審顔をした。

「副長にいたせと迫りおる」 

「父上、わたしは賛成です。あの方は肝が据わておられます、副長なれば安心に

ございます」  それまで無言でいた茂吉が真っ先に賛意を示した。

「速水、そちはどうじゃ」 「拙者も同感にござる、それよりも準備が大変ですな」

  速水小三郎と岡田文造の二人が、顔を見合わせにやりとした。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  May 10, 2007 01:37:11 PM
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