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Oct 16, 2007
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カテゴリ: 武田家二代の野望
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「弥五郎、控えの場にもどれ、余は舅殿といま少し話がある」

 義元が弥五郎に控えの場に下がるよう命じ、信虎を見つめた。

「この老人に何か相談がござるか?」  「岡崎の人質の事で知恵をお貸し下さ

れ」  「松平元康殿(竹千代)の事にござるか」

「左様、上洛の際には岡崎衆を先鋒といたしたい。その布石でござるが元康は

当年で十六才となる、元服をさせ我が一門の娘を嫁にと考えてござる」

「今川家のご一門にと申されますか」  義元はそれに答えず話を続けた。



「これは破格の仰せじゃ、婚儀整えば元康殿はご一門となられる訳ですな」

「舅殿は、余の考えをどう思われる」  義元の問いに信虎は暫し思案し一気に

己の考えを述べた。

「上洛の道筋を考えますと岡崎城から、知立(ちりゅう)城までは義元殿の領土。

しかし、桶狭間から西に向かうと織田の丸根砦、鷲津砦が控えておりますな。

そこを過ぎると北の鳴海(なるみ)城、南の大高城の二城は今川家の支配城」

「舅殿の仰せのとおりじゃ、一番の危険地帯を松平元康に任せようと考えおる」

「その為にも一門に取り込んでおくと言われますかな」  「左様」

「上洛までにはお子も産まれましょうな。妻子が駿府に居れば元康殿は裏切りも

出来ず、岡崎衆は随分と働きましょうな」  義元がにやりと おはぐろ を見せた。



「じゃがひとつ心配事がござる」  「・・-」  義元が不審顔をした。

「元康殿は織田信長と旧知の仲と聞いてござる。その為には先鋒と本陣との距

離をあける事が肝要かと心得る」  「どういう意味かな」

「先鋒には丸根砦と鷲津砦を攻略させます。砦とは申せ二、三百名の守備兵、

何ほどの事もござらん、そのふたつの砦を陥せば尾張領にござる。そこに取り付



な」  「何故に、そのような手緩い策がいり申す」

「万一、元康殿に織田の調略の手が伸びておっても大事ありませぬ」

「成程、岡崎衆の働きを見届けるまで本陣は動くなと仰せかな」  「左様に」

「余も海道一の弓取りと言われる男じゃ。戦機みる眼は持ってござる、舅殿の言

葉は肝に命じておきましょう」 「恐れおおい事を申しましたな」

「いやいや、大いに参考になりましたぞ」  義元が鷹揚に答え信虎が頭を下げ

た。半刻ほど雑談を交わし信虎は主殿を下がった。

(馬鹿め、軍と軍の間隔をあける陣構えなんぞ古今あった例(ためし)はないわ)

 信虎は胸裡で毒づいていた。我が策なった、これが信虎の心境であった。

 これで今川家は衰亡する。義元の嫡男の氏真(うじざね)は腺病質の男で、とて

も駿河、遠江、三河の三国を治める器量はない。義元の命さえなければ、たなぼ

た同様に駿河は晴信の手に入るだろう。調略するなら三河の岡崎衆と尾張の

織田信長であろう、そう考えが纏まった。


 信虎の書院で四人のささやかな宴席が催されていた。今宵の信虎は上機嫌で

ある、年賀の席で偽計を義元に囁いてきた。愚かにも義元は信虎の餌に喰らい

ついたのだ、それが信虎を上機嫌にさせていた。

「大殿、今宵は少し変ですよ」  お弓が心配顔で訊ねた。

「弥五郎の仕官が決まったのじゃ、これを喜ばずにおれようか」

「何処に決まりました?」  「岡崎城じゃ、そこでわしの為に働くのじゃ」

「大殿に皆さま方、長年に渡るご厚情この弥五郎決して忘れませぬ。この上は

大殿のお指図どおり働く所存にございます」  弥五郎が感極まっている。

「岡崎に着いたら、目立っ行動は控えるのじゃ。そちは甲斐を追放された者とし

て振舞うのじゃ、憎きは甲斐の武田晴信とな」

「弥五郎殿、妻子もご一緒と聞き安堵しましたぞ、いずれ、わたしも訪れる時が

ありましょう」  お弓の声も湿っている。この四人だけが甲斐を離れ、十五年余

も苦労を共にしてきたのだ。

「最後に申しておく、桶狭間の地形を己の物とせよ。あとはおって連絡いたす」

 こうして川田弥五郎は駿府から岡崎に発った。


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Last updated  Oct 16, 2007 01:58:01 PM コメント(11) | コメントを書く
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