長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

除菌アルコールとブ… New! Pearunさん

Mちゃんママから長… New! flamenco22さん

^-^◆ 学びの宝庫・… New! 和活喜さん

Wリーグトヨタ紡織チ… クラッチハニーさん

風に向かって クリス… 千菊丸2151さん

Comments

人間辛抱 @ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Calendar

Oct 24, 2007
XML
カテゴリ: 武田家二代の野望
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ しょんぼり

 傍らに付き添う柴田勝家が驚き顔をして、信長の横顔を見つめた。兜を跳ね

上げた信長が端正な相貌をみせ、何度も同じ歌を繰り返している。

 五月の烈日が容赦なく降り注ぐ。  「暑い」  人馬は汗だくとなり行軍して

いる、暑気が織田勢を襲っている。  

「殿ー」  「猿か」  木下藤吉郎が信長の騎馬の横を駆けていた。

「武田信虎さまより、今川の本陣の位置を知らせるとの連絡が参っております」

「猿っ、それを信じよと申すか?」  信長が木で鼻をくくったような顔をした。

「はい、武田も駿河が欲しゆうございましょう、そのうちに吉報が届きます」



家は駿河が手に入る、悪い取引ではない。

「猿っ、物見を桶狭間に放て」  信長は下知をくだし一心に騎馬を急がせた。

「殿っ、雨になりますな」  髭面の柴田勝家が指をさした。

 三河方面の空に真っ黒な黒雲が湧き、急速な広がりを見せはじめている。

 雨ならば助かる、信長は胸裡で念じた。兵等の疲労も癒され敵勢からも発見さ

れる恐れもない。  「吉兆ぞ、皆ども急げ」  信長が甲高い声をあげた。


 その頃、今川義元は上機嫌で塗輿に乗っていた。すでに丸根砦と鷲津砦は

先鋒隊の攻撃で陥落し、守将の佐久間盛重、織田壱岐守、飯尾近江守の首級

が届けられていた。さらに鳴海方面からの敵勢三百名の殲滅の知らせと首が

もたらされていたのだ。沿道には今川勢の勝ち戦を祝って近くの禰宜(ねぎ)、

僧侶が酒肴を運んで祝いの言葉を述べに来ていた。



「折角のご馳走じゃ、早いがお昼の弁当をつかう。本陣の場所を定めよ」

「御屋形さま、丁度良き場所がございます」  「涼しいところが良いぞ」

「この先に田楽狭間の地が御座います、松林に囲まれた絶好の地」

「敵勢の備えに不足はないか?」  義元が首筋の汗を拭っている。

「何も心配はございませぬ。前方には先鋒隊が進んでおりますし、本陣の後ろ



「よし、輿をその地に入れよ。余も腰が疲れた」

 巳ノ刻前、今川義元の本陣が運命の地、田楽狭間に足を踏み入れた。

 松林に囲まれた涼しい場所に、急ごしらいの休憩場が作られ幔幕が巡らされ

た。  「なかなかと風流な場所じゃな」  義元が肥満した躯を輿より降ろし、

満足そうに定めの場に足を運んだ。

「かかった」 百姓姿に身をやつした小十郎が、松の大木の翳から見つめてい

た。幔幕の内から義元の声が聞こえてくる、小十郎の小柄な躯が西に向け

疾走した。 なるほど桶狭間の地に盆地があるとはな、川田さまは良く調べ

られたものじゃ。低い丘陵を伝い確認しておいた古寺に音を忍ばせ近づいた。

「猿」 中から低い声がした。 「虎じゃ」  小十郎が素早く寺に身を入れた。

内に貧相な小男がうずくまっていた。  「梁田四郎兵衛殿の乱波か?」

「そうじゃ、勝蔵という」 まるで双子じゃ、二人は暫し相手の顔を見つめあった。

それほど二人は似ていたのだ。

「義元が田楽狭間の盆地に入り、昼弁当をつこうておる」  「勢力は?」

「護衛の旗本が五百名ほどじゃ」  「なんとそのような小勢でか?」

「織田勢が攻め寄せるとは考えておらぬのよ」  ぴかっと稲光が奔った。

「降ってきそうじゃ」  勝蔵が低く呟いた、何となく風も強まって感じられる。

「ここなれば勝てる」  勝蔵の顔がはじめて緩んだ。

「ところで、われの名前を聞こう」  「小十郎じゃ」  「小十郎、礼を申す」

「礼なぞいらぬ、直ぐに知らせるのじゃ」

「いずれ会うこともあろう」  声を残し勝蔵が木立の翳に姿を消した。

「勝蔵、われの生まれは何処じゃ」  「判らぬ、天涯孤独じゃ」

 風の音に混じり切れ切れに聞こえてきた。小十郎は不思議な感覚に陥ったが、

貧相な姿を樹木のなかに隠した。

 梁田四郎左衛門は二人の配下を連れて物見として先行していた。ここは己の

領地である。  「殿、天候荒れますな」  「うむー」

 彼は騎馬で注意深く桶狭間の丘陵を進んでいた。

「梁田さま」  突然に馬前に小柄な男が転がり出た。

「なんじゃ、勝蔵か。このような場所でなにをいたしておる」

「今川義元、旗本衆五百騎と田楽狭間で弁当をつこうてござる」  「まことか?」

「武田の忍びの知らせにございます」  梁田四郎左衛門の眼光が鋭く瞬いた。

「織田の殿も、この地に近づいておられる。勝蔵共をいたせ」

 梁田が馬首を返し、勝蔵も負けずと駆けた。  「流石は乱波じゃ」

 勝蔵の小柄な躯が一気に騎馬を抜き木立に消えて行った。

「まるで化け物じゃ」  梁田四郎左衛門が眼を剥き馬足を早めた。

 知らせが信長にもたらされた。  「間違いないな」 信長が天を仰いだ。

 突然、雷鳴が駆け抜け強風が松の大木を揺るがした。

にほんブログ村 小説ブログ
武田家二代の野望(1)へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 24, 2007 11:36:48 AM コメント(10) | コメントを書く
[武田家二代の野望] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: