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Jul 4, 2011
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カテゴリ: 伊庭求馬無情剣

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「騒乱江戸湊(74)

 それを目の当たりにした、火付盗賊改方の猛者がどっと後退した。

「それでよか」

 地獄の龍が左眼を細め威嚇した。

 万八亭から客の男が一斉に逃げ散ってゆく。

「逃してはならぬ」

 その声に二人の捕吏が、猛然と指股と突棒を抱え追いすがった。

 地獄の龍が長身を躍らせ、同田貫が捕吏に向かい煌めいた。

 一人は胴を両断され、残りの捕吏の首が刎ね斬られ宙に舞った。

まるで白昼夢を観るような凄腕を発揮し、地獄の龍が吠えた。

「今のうちにごあんど、逃げてたもっせ」

 客が逃げ去ってと行くが、火付盗賊改方の面々は呆然と見送っている。

 戦慄すべき地獄の龍の凄腕に翻弄されたのだ。

「お主等は何をしておった」

 山部美濃守が無念の形相で怒声をあげている。総力をあげた手入れの

成果は、娼婦、奉公人、客を含め百三十名を数える戦果であったが、彼は

不満足であった。肝心の由蔵は殺され挙句に万八亭では四人の配下を失った、

それもすべては地獄の龍の所為であった。

「組頭、奴と対等に勝負の出来る者はおりませぬ」

 河野権一郎が弁明に努めているが、山部美濃守の怒りは収まらない。

「河野、水茶屋と賭場の打ち壊しを明日からやれ」

「畏まりました。ところで賭場で徴発した金子は大金にございましたぞ」

 老練な河野権一郎が話題をそらした。

「いくら徴発いたした」  山部美濃守の眸に興味の色が浮かんだ。

「全部で二千五百両はあるかと存じます」

「ほう、大金じゃの」

 はじめて山部美濃守の顔がゆるんだ。

 翌朝、奥山に二人の武士が周囲を見回っている。天野監物と若山豊後の

二人であった。

「豊後、なにも発見できねえな」

 天野監物が首筋の汗を拭っている、眩しい陽光を浴びての探索は疲れる。

「おめえ、水筒をもっているかえ?」

「ありますよ、どうぞ」

 竹筒の生暖かい水でも咽喉の渇きには役立つ、二人は木立をぬって奥へと

向った。名も知らぬ野鳥がけたたましく囀(さいず)っている。

 天野監物が袴を脱ぎ捨て背中に担ぎ裾を端折っている。

「天野さん、その姿は止して下さいよ。我々は火盗改方ですよ」

 豊後が不精髭を生やした天野に注意を与えている。

「おめえはうるせえんだよ、暑くてたまんねえだ」

 二人は暑さに茹だりながら、注意深く周囲を探索していた。

「豊後、あれはなんだ」

 天野監物が木陰を指指した。

「祠ですよ」   「そうじゃねえ、祠の地面を見なよ」

 二人は慎重に周囲を見廻し祠に近づいた。

「天野さん、これは大八車の車輪の跡です」

「これは一台ではねえな」

 二人は祠の周囲の地面に視線を落とした。深緑の葉をつけた雑木が繁り、

左手には小高い丘が鬱蒼とした樹木に覆われている。

「なんで大八車がこんな場所を通ったのでしょうかね」

「おめえ馬鹿か、荷物を運ぶためだろうが」

「そうですよね、だがこんな山奥に何を運んだんでしょうかね」

「解んねえよ」  天野の言葉に豊後が不審そうにしている。

「矢張り、由蔵がからんでおりますね」

「遅いぜ、奴は昨夜の手入れで用心棒に殺られちまった」

「あれは口封じですよね」

「豊後、おめえの言う通りだ、ここにも闇公方の意志が動いているんだ。

そうでねえなら由蔵を使い賭場や水茶屋なんぞ作らねえ、それにな伊庭さん

の言葉が気になるな」

 二人は風通しのよい草叢に腰をおろし、辺りを眺めやったが別に変った点は

見当たらない。

「伊庭さんはここに何か秘密があると言われましたよね。天野さん、ここの探索

は二人では無理です、戻ってお頭に相談しましょうよ」

「おめえの言う通りだ、昨夜に今日だ疲れがひどい、四谷に戻り一杯やろう」

 二人は四谷の河野権一郎の役宅を訪れ、探索の様子を報告した。

「大八車の車輪跡を見つけたと申すか」

 河野権一郎が不審顔をした。

「あそこは伊庭さまが言われてように、何か秘密がありそうですが、二人では

無理です」   天野監物が不精髭を撫で報告を終えた。

「二人ともご苦労じやった。わしも考えてみるが、今日は戻って休め」


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Last updated  Jul 4, 2011 11:04:36 AM
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