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Jul 9, 2011
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カテゴリ: 伊庭求馬無情剣

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「騒乱江戸湊(79) 明日はお休みします。

 塩屋茂兵衛の足音が消えると地獄の龍が口を開いた。

「五十嵐さあ、御前は何をしようとお考えでごわしよぅな?」

「橋口、御前は老中首座の阿部正弘にお怒りじゃ」

 五十嵐次郎兵が柔和な口調で地獄の龍に語りかけた。

「腕のたつ浪人を集めるのは、江戸を火の海になされるつもりにごわんな」

「わしもそう思う、御前は地下蔵の武器を使うと決意されたのじゃ。いずれ御前

が戻られたら分かろうな」

「左様にごあすな」  地獄の龍が眼を光らせた。

「それまでは軽挙妄動はならぬ」

 五十嵐次郎兵が床の間の紐を引いた。奥で鈴の音が聞こえた。

「御用にございますか?」

 五十年配の貧相な顔つきの奉公人が姿をみせた。

「早いが酒肴の用意をいたせ、奥の八名の者にもな」

 奉公人が肯き足音を忍ばせ戻っていった。

「橋口、気を鎮めるには酒が一番じゃ」

「おいを心配することはなかとです。我慢は出来もそう」

「そうじゃ、今の我等にはただ我慢のみじゃ」


 塩屋茂兵衛が二人の浪人を連れ、小門から忍び出ていった。

 三人とも菅笠で顔を隠し、名も知れぬ小さな町道場を訪れ勧誘を

はじめた。報酬は五両、これを聴き腕のたつ浪人が数十名集まった。

 塩屋茂兵衛が、それらの浪人の名前と道場を記帳している。

 こうした小さな道場には幕臣は居らず、荒んだ浪人が集まっていたのだ。

「おって連絡をいたす」

 塩屋は記帳した浪人に口止めをし、岡場所へと向かった。

 数日後、この噂が江戸の町を賑わしはじめた。噂とはえてしてこうしたもの

だ。火付盗賊改方の天野監物も若山豊後もこの噂を耳にした。

「天野さん、この不景気な世の中に本当の話ですかね」

「おいらに分かる筈がねえよ、本当なら鞍替えしたいぜ」

 天野監物が苛立った口調で唾を吐いた。

 一方の猪の吉も焦りのなかにいた。場所が朧に分かっているのに隠れ家を

見つけたとの連絡が一向にこないのだ。

 猪の吉は意を決して日本橋へと向かっていた。こうなれば伊庭の旦那に

相談するしかない、そんな思いに取り衝かれ足を急がせていた。

 お蘭師匠の小奇麗な家が見えてきた、あたり一帯から蝉時雨がかしましく

初夏の西日が猪の吉の背中を焦がしている。

「猪さん」  後ろからお蘭の声が聞こえ足を止めた。

 振り向くとお蘭が色っぽい姿で佇んでいる。手に買い物の荷をかかえていた。

「あれっ師匠、買い物の帰りですかえ」

「あれっもないものだよ。何を急いでいるのさ、声をかけても知らんふり、闇公方

の隠れ家でも分かったのかえ」

 お蘭が鉄火女らしい伝法な口調で訊ねた。

「面目ねえ話さね、三日も探してもまるで雲を掴むようだ」

「まっ、お出でな。旦那も退屈そうにしていなさるよ、今晩はご馳走だよ。

江戸川名物の穴ジャコが手に入ったのさ」

「夕べしたのが、今朝まで痛い、二度とするまい、箱枕」

 きわどい文句の都々逸を低い声で唄い、お蘭が猪の吉の脇をすりぬけた。

 化粧の匂いと色っぽい尻の動きが、猪の眼を刺激した。

「精の付く物、作ってやるわ、だから今夜も、泣かせてね」

 猪の吉がまけずとお返しした。

「馬鹿、なにを唄ってんのさ恥ずかしいじゃないか」

 お蘭が顔を染め猪の吉を睨んだ、ぞくっとするほど色っぽい。

「どうもいけねえや」  猪の吉がぼやいた。

 奥の座敷には求馬が何時ものように、大川の光景を眺めていた。

 珍しく大川には屋形船や、葦簀(よしず)張りの屋根船が遡っている。

両国の花見見物の船である。

 この部屋からも枝垂れ柳や大桜の花火が見えるのだ。

 猪の吉が神田川周辺の探索の状況を語っていた。

 求馬は薄闇に変化を見せる、鈍色(にびいろ)の空を眺め口火をきった。

「お主が地獄の龍と遣りあった場所なら、神田川周辺は間違いなかろう。

少し探索の範囲を広げてみてはどうじゃ」

「解りやした、早速、明日からそういたしやす」

 猪の吉の顔が弾けた。

「ところで明日、お主に頼みがある」

「なんですかえ、改まって」

 求馬が高い鼻梁をみせ言葉を継いだ。

「お主の用が済んだら奥山に向かいたい。刻限は四つ(午前十時)、観音堂と

決めておきたい。天野さんと若山さんにも繋ぎを頼む」

「いよいよ闇公方の秘密を探りに行かれやすか?」

 求馬はそれに答えず大川に視線を這わせている。

「分かりやした、あっしは浅草橋で上田屋の秀と打ち合わせをして駈けつけ

やす。十分に時間までに観音堂に着きやす」


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Last updated  Jul 9, 2011 11:27:31 AM
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