長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

除菌アルコールとブ… New! Pearunさん

Mちゃんママから長… New! flamenco22さん

^-^◆ 学びの宝庫・… New! 和活喜さん

Wリーグトヨタ紡織チ… クラッチハニーさん

風に向かって クリス… 千菊丸2151さん

Comments

人間辛抱 @ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Calendar

Nov 1, 2011
XML
カテゴリ: 伊庭求馬活殺剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ



「闘ってはなりませぬのか?」

 甲戌が不満そうな顔をした。

「ならぬ、闘えば犠牲者が増えよう」

「仲間が殺られると申されますか?」

「犠牲者の出ることはやむを得ぬが、無用な犠牲者はならぬ」

 山岡頭巾の武士が否とは言わせぬ声で命じた。

「分かり申した」

 甲戌が低く答え、次なる質問を発した。

「これより板橋宿に向かいますが、西の丸を襲った後の隠れ家は

何処にいたします」

「甲戌、奴等はこの辺りを探索の標的といたしておる。ならば我等は、

奴等に一泡ふかせてやる。前に使っておった六間堀の古寺を使うの

じゃ。当座の食糧や酒は既に運び込んでおる」

「面白うござるな」

 武士が驚くことを述べ、甲戌が眼を細めた。

「品川宿の二の舞いはならぬ、二、三名に別れ分宿いたせ」

「畏まりました」

 二人の会話に聞き耳をたてていた男等は、既に出立の足拵えを終え、

甲戌の下知を待っている。

「さらば去ります、三日後には深川六間堀の古寺にてお会いいたす」

 頭の甲戌が風のように粉雪の舞う闇夜に消え、一同も足音もたてずに

跡を追って消え去った。

 板橋宿は江戸四宿のひとつとして知られ、中山道の第一の宿場町で

あった。南の神明門前町とは正反対の場所に位置している。

 この凍りつく寒夜では彼等の強靭な肉体でなければ、到底、行きつける

場所ではなかった。

 閑散とした庫裏の内部まで容赦なく粉雪が吹き込んできた。

 武士はゆっくりと立ち上がり焚火を消した。あとは漆黒の闇が広がり、

江戸湾から吹きつのる風が古寺の中を吹きぬけた。

 武士は暫く闇の中に佇み周囲を眺め、ゆっくりと粉雪の舞う道に姿を

消した。品川沖に停泊する檜垣廻船の灯りが揺れてみえる。


 夜半に雪が止んだ。雪雲がきれ蒼々とした冬空に鎌のような半月が

浮かび、煌々と千代田のお城の屋根を照らし出している。

 火付盗賊改方の面々は、寝もやらずに雪の止むのを待っていたのだ。

 天野監物や若山豊後のような同心の勤務時間は、朝の五つ(午前八時)

から、夕の七つ(午後四時)と決められていたが、一刻前には全員が番屋

に集合を終えていた。

「雪が止んだが、凍りつくような天気だぜ」

 天野監物が合羽を羽織、暖をとるための焚火の前で足踏みをしている。

 青空が広がりをみせ、雪化粧の江戸の町がまばゃく輝いて見える。

「久しぶりに上天気になりましたね」

 若山豊後も厳重な防寒対策をして姿をみせた。

「者共、今日こそ曲者の隠れ家を見つけだすのじゃ」

 組頭の山部美濃守が全員に叱咤激励の言葉をかけた。

 頭の河野権一郎からは細かな下知が伝えられた。

「豊後、我等は神明門前町の探索だ」

「天野さん、町奉行の協力で泉岳寺方面は、目黒の鉄蔵親分が加わる

そうですよ」

「有難いことじゃ」

 そう言った天野監物が大きなくしゃみをした。

 五つを待って全員が番屋を後にした。深々と積もった雪を踏みしめ、

半蔵門から東の虎の門へと向かった。

 鬱蒼と繁る樹木が雪に覆われ、真っ白く輝いている。赤坂溜池は厚い

氷が張りつめていた。各門は外様大名や譜代大名の家臣等が雪掻きに

余念がない。一行は愛宕神社から二手に分かれた。一隊は下谷町から

増上寺の東方面が、探索区域である。

 天野監物と若山豊後の一隊は、江戸湾寄りの三島町へと向かった。

 一行の前には増上寺が雪化粧につつまれ白く輝いている。

「この辺りの寺の多さには参るな」

 天野監物が愚痴をこぼしている。

 天野監物の言うとおり、増上寺の周囲は別所や方丈、寮なぞが軒を

並べ、神明門前町から東の片門前町へと寺が密集していた。

 その合い間に廃寺となった古寺が数限りなくある、慎重な探索が続いた。


影の刺客(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Nov 1, 2011 10:34:11 AM
コメント(41) | コメントを書く
[伊庭求馬活殺剣] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: