長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

除菌アルコールとブ… New! Pearunさん

Mちゃんママから長… New! flamenco22さん

^-^◆ 学びの宝庫・… New! 和活喜さん

Wリーグトヨタ紡織チ… クラッチハニーさん

風に向かって クリス… 千菊丸2151さん

Comments

人間辛抱 @ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Calendar

Nov 8, 2011
XML
カテゴリ: 伊庭求馬活殺剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ



坂下門の番屋で天野監物と若山豊後が気落ちした素振りで語らっていた。

「奴等は昨夜、あの古寺から逃走したぜ、もはや手の打ちようがねえ。豊後、

おめえならどうする?」

 天野監物が癖の髭面を擦っている。

「天野さん、黒幕と覚しき男は神田橋付近の武家屋敷に潜んでおりますよ。

あの悪天候にわざわざ遠くから、船宿を訪れようとは考えられませからね」

「そうよな、おいらも同感だぜ。だがなその武家屋敷が分かんねえ」

 天野監物が渋茶を啜り放心したように呟いた。

「あの武士が今回の本当の黒幕ですかね?」

 若山豊後が思案顔で訊ねた。

「分かんねえが、その男の命令で奴等が逃亡したことは事実だぜ」

「奴等の事です、直ぐに事件を起こしますよ。その時が勝負ですね」

 珍しく豊後が鋭い眼差しをみせている。彼の脳裡に五郎蔵の無残な顔が

よぎっていた。

「ああ、嫌だ嫌だ、おいら達も引き上げようぜ」

 刻限はとうにお勤めの時刻を越えていた。

「天野に若山、今日はご苦労じやった。帰りに一杯ひっかけて行きな」

 お頭の河野権一郎が顔をみせ、労いの言葉をかけ紙包みを手渡した。

「お頭、遠慮なく頂いておきます」

 天野監物が懐中にしまった。

「この寒空だが明日から、また西の丸の警護だ。今夜は一杯やって英気を

養うんだな」

 河野権一郎が粋な計らいをみせ番屋の奥に去った。

「豊後、帰るぜ。折角のお頭の心遣いだ」

 二人は首巻をして坂下門から麹町へと向かった。

「冷えるな」

「いくら包んであります」

「へっ、いやに弾んだもんだ。二朱もあるぜ」

 紙包みを解き監物が驚きの声をあげた。

「アンコウ鍋で一杯やりましょう」

「良かろう、最近、評判の鍋七でもゆくか」

「いいですね、麹町七丁目ですよね」

 二人は凍てついた道を辿って帰路についた。

      (十一章)

一月十一日、この日は江戸城では具足祝いが行われた。千代田城に登城

した全員に、具足に供えた餅や酒などが下賜されるお祝いの日である。

 その日の夜の五つ半(午後九時)頃、寛永寺と不忍池の通りから、御徒町

を横目とし湯島一丁目の通りを、十五名の男が昌平橋を目指していた。

 いずれの男も寒空のなか墨衣に網代笠(あじろかさ)を被った僧の一団で

あった。手には錫杖たずさえ荷物を担いでいる。

 歩を進める度に錫杖の音が、ヂャラヂャラと響き、一糸乱れずに昌平橋

を渡りきった。

 一行はそのまま北に進み内濠に達した。濠の向こう側には一橋家の広壮

な屋敷の屋根が雪をかぶって見える、そこに向かう一つ橋御門の西に四番

空き地がひっそりとひらけていた。そこに一行は辿り着いた。

「よいか、ここで着替えをする。すんだ者から二人一組となって西の丸に

向かうのじゃ」

 低い忍び声が闇夜に流れた。

「今夜の獲物は老中首座の警護の士じゃ、力の限り倒せ。引き上げの合図

は、江戸家老の遠藤又左衛門が現れた時じゃ。隠れ家は分かっておるな」

 その声の主は甲戌のものであった。その間にも彼等は身支度を整えてい

る。墨衣から黒装束に姿を変えて一組、二組と闇に溶け込んでゆく。

「甲辰(きのえたつ)、そちはわしに同行いたせ」

「畏まりました」

 甲戌が空き地に視線を走らせた、既に二人を残し全員が消えていた。

(分からぬ、何故に定信を殺せと命じたり、殺してはならぬと言われるのか)

 甲戌の疑問は頭領の下知にあった。が、命令は絶対である。

「甲辰、行くぞ」

 長身の甲戌が足音を消し風のように疾走し、その後を甲辰が追っていった。

 二人が一つ橋を渡りきると、全員が西の丸の松平定信の屋敷の土塀に

張り付くように待機していた。

「警備の様子はどうじゃ?」

「表門には火付盗賊改方が十五名、裏門と庭には白河藩士が二十名ほど

警戒しております」

「わしと甲辰は表門から侵入する、残りは裏門から庭に忍び込め。悪戯に

騒ぎたてるな、確実に一人一殺を心がけよ」

「畏まりました」

 土塀を乗り越え全員が二人を残し、屋敷内に忍び込んで行った。

「甲辰、行くぞ」

 甲戌と甲辰が土塀の軒下を獣のように駆け表門へと向かった。


影の刺客(1)へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Nov 8, 2011 11:17:22 AM
コメント(36) | コメントを書く
[伊庭求馬活殺剣] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: