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Nov 21, 2011
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カテゴリ: 伊庭求馬活殺剣
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「奴等は危なくなると宿場町に逃げ込みやす。そこで考えたんですが、

また深川に戻っちゃいねいかと思いやしてね。あっしの考えは間違って

おりゃすかね」

 猪の吉の顔つきが真剣にみえる。

「面白い、明日にでも捜ってくれるか?」

 犯行を重ねた者は、一度、逃げた場所にまた舞い戻る。こうして習性をもつ

事を、求馬も熟知していたのだ。

 求馬が返答し、それを聞いた猪の吉の顔付きが変わった。

「また見当違いかもしれゃせんが、どうもそんな気がいたしゃす」

「お主の勘じゃ、間違いはあるまい」

「合点で」

 途端に猪の吉の顔が生き生きとした。

「お主の勘が当たっておれば、事件は一挙に解決するじゃろう。だが功名

に逸ってはならぬぞ。ただ痕を追跡するのじゃ」

「あっし一人では手におえる奴等ではありやせんよ、分かっておりゃす」

「飛礫の猪の吉の腕前を見せてもらおうか」

 求馬が煽るようにけしかけた。

      (十三章)

 江戸の町は天神祭を迎えると、すぐに二月となる。早咲きの梅の蕾が

ふくらみを見せはじめている。

 夜の帳の落ちるのを待って、厳重な足拵えの猪の吉が菅笠に合羽を

羽織、神田明神下の棟割長屋から両国橋に向かった。

 相変わらず筑波おろしが吹きつのる晩である。視線を南に転ずると、

神田橋御門から一つ橋御門にあたる夜空が赤く染まっている。

(天野の旦那も、若山さんも大変だね) そう思いながら足を急がせた。

 この晩の一橋家の屋敷は、厳重な警戒下にあった。

 大篝火が各所に炊かれ、警備の手練者が屋敷内と外回りに別れ

巡回している。強盗提灯の灯りが庭園のなかから洩れている。

 内濠警備の火付盗賊改方が、いち早く屋敷の変化に気づいた。

「豊後、一橋家も曲者の襲撃に備えたようだな」

「伊庭さまでしょう、きっと昨夜でも連絡をとられたのでしょうね」

「てっきり治済さまが黒幕と思っていたのに、世話がねえことだ」

 天野監物と若山豊後が、篝火のそばから屋敷を見守っている。

 一橋家の異常な変化が、大目付の嘉納主水にも知らされた。彼は

同朋町の十手持ち、繁三親分の番屋に騎馬で駆けつけてきた。

「ご苦労に存じます」

 繁三が恐るおそる熱い茶を差し出した。

「有難い、茶は温もる」

 主水が濃い髭跡をみせ茶を啜り、大火鉢の前に陣どった。

「済まぬが火付盗賊改方の、山部美濃守殿をお呼びしてはくれまいか」

「へい、早速、ご連絡をいたしに参ります」

 繁三が番屋から駆けだしていった、四半刻ほどし山部美濃守が現れた。

「この寒気の中に大目付殿も参られておられましたか」

 山部美濃守も大火鉢の傍に腰を据えた。

「あのような警護では、奴等が襲って來る心配はござらんが、万一という

こともあります。山部殿も番屋でお付き合い願いたい」

「しかし、分からぬものですな。突然、一橋家があのような厳戒態勢を

とるとは、曲者からの挑発でもありましたかな」

 山部美濃守が、特徴のある高い鼻梁をみせ呟いた。

「なんの、伊庭殿が治済さまに注意を促したのでしょうな」

 主水が確信ある口調で答え、茶を啜った。

「成程、拙者は幕閣の権力争いがもとで、今回の事件が起こったと思ってお

りました。そうした意味で黒幕は、てっきり一橋さまと推測しておりましたが、

面倒な事件となりましたな」

「山部殿、ご貴殿の申されるよう、黒幕の正体がまったく分からなくなりました」

 主水の肉太い頬が、微かに赤みをおびてきた。

「曲者が襲ってまいった時の、打ち合わせをしておきましょう」

 その言葉に、山部美濃守の眼が鋭くなった。

「我等は西の丸のお屋敷には踏み込めません、それ故に一橋家の警護の士

に曲者は任せるほかござらん。我等に出来ることは一つ橋御門と神田橋御門

の警備のみ、決して御門から逃してはなりません」

 主水が同田貫と異名をとる正国の、大刀を肩にあて下知した。

「悔しいことですな。西の丸に入れぬとは、だが万一の場合でも、二つの橋を

抑えた我等の勝ちです」

 山部美濃守が満々たる自信をみせ、嘯いたことであった。


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Last updated  Nov 21, 2011 12:29:50 PM
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