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Apr 18, 2014
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心が通いあった時が父子の別れであった。

「おうー。あれは」

 信虎が野太い声を発した。

 新緑に覆われた白鳥山の稜線に、騎馬武者の軍勢が現われた。

 まるで一行を見送るように、二筋の流れとなって疾走している。武者の

武田菱の指物が風を受け弓なりにしなり、甲冑、兜の前立てが太陽を浴び、

きらきらと煌めき、壮観、精強な騎馬軍団の光景である。

「おう、板垣信方か、原虎胤も居るの。左手は甘利虎泰じゃな見事じゃ」

 信虎が馬脚をゆるめ、眼を細め一人、一人の名を呟き眺め入っている。 

「晴信、甲斐は騎馬武者を主力にいたせ」

「畏まりました」

 父子は無言で進んだ。騎馬武者の先頭に三騎が進みで片手を天に突き上げた。

三人の重臣達の信虎への訣別の合図であろう。

「馬鹿者め、感傷に浸っておるようでは将来に禍根を残すことになるぞ」

 口汚く罵(ののし)る信虎の顔に、一抹の憂愁の色が浮かんだ。

「晴信、今生の別れじゃ。二度と会えぬじゃろうが健吾に過ごせ」

「父上も」

 甲駿(こうすん)国境から軍勢が現れ、一騎の騎馬武者が駆け寄ってきた。

「そこにおわすは武田晴信さまのご一行とお見うけいたす、拙者は今川家の

家臣、大井美濃守にござる。お出迎えに罷りこしましてござる」

「余が武田晴信じゃ。出迎えご苦労、父信虎さまをお引渡しいたす」

「晴信、さらばじゃ」  

 信虎が馬腹を蹴った。数名の家臣がその跡を慕って追いすがっている。

「甲斐は父上に代わり、晴信が治めまする」  

 晴信が声を張り上げた。

「これが己の父に対する仕打ちか、親不孝者め。わしは一生そなたを憎み許さぬ」

 信虎の野太い声が切れぎれに聞こえてくる。父上は最後まで今川を欺(あざむ)

かれるのか、晴信は父信虎が国境の山並みに消え去るまで見送った。

 馬首を返すと板垣信方、甘利虎泰、原虎胤の三将が草叢に平伏していた。

 ここに甲斐源氏武田家十七代国主が誕生したのだ。

 武田大膳太夫晴信二十一才の時であった。

 信虎は己を慕ってきた家臣を甲斐にもどした。最早、扶持(ふち)する力も失せ

彼等の将来を案じての事であった。だが三名の者だけは信虎の傍らを離れる事

はなかった、近従の小林兵左衛門、小姓の川田弥五郎に信虎の腰元お弓であ

った。このお弓は信虎が信頼する女忍び、いわゆる くノ一 であったが、時には

信虎の閨の相手もした。

 くノ一の活躍は晴信が信玄と改名した後から、本格的に動きだすことになる。

 史実に登場するくノ一で有名なのは、武田信玄に仕えた歩き巫女の集団である。

 その頭領は望月千代女と名乗っていた。戦国時代には孤児や捨て子、迷子が大量

に発生した。その中から心身ともに優れた少女を集めて歩き巫女に仕立て、隠密と

して各地に放ったのがくノ一である。信玄がくノ一の養成を命じたのは信州佐久郡

の豪族望月氏当主、望月盛時の若き未亡人望月千代女であった。

 実は千代女は甲賀流忍法の流れを汲む名家、望月家の血族であり、望月氏には

信玄の甥が入り婿になっていたため、信玄は望月千代女を巫女頭領に任じ、信州

小県郡祢津村の古御館に修練道場を開いた。

 反面、信玄は家臣の謀反を恐れ、屋敷に僧、巫女等を泊める事を禁じた。

 甲駿国境は新緑の臭いに包まれ、蒼天には雲一つ浮かんでいない。

 信虎一行は駿河の山岳地帯をぬけ一路、駿河湾を見下ろす駿府城を目差した。

           (女忍びと山本勘助)

 駿府城では義元と太原崇孚が膝を交え語りあっていた。崇孚は雪斎と号し、

今は義元の軍師を務めているが。彼は河東第一の伽藍とうたわれた禅宗寺の

善得寺で修行をし、のちに京に上り建仁寺で禅の修業を行い剃髪した。

二十七才の時に乞われて今川氏親の四男義元の養育係りとなり、義元が家督

を継ぐと軍師として仕えるようになった。太原なしでは今川家は成り立たないと

言われた逸材である。彼はこの年四十五才となり義元は二十二才となっていた。

「雪斎、明日には甲斐の古狸がこの城に到着するであろうな」

 烏帽子、直垂姿の義元は歯をおはぐろに染め、胴長、短足が特徴であった。

「御屋形、なんと申しても舅にござるぞ言葉を慎みなされ。併し、晴信殿を頼む

と言われた時は驚きましたな」

「そうじゃの、晴信殿は若い。古狸が甲斐に居座っては当家にとって何事も油断

がならぬ、そういう意味では僥倖(ぎょうこう)であったかの?」

「左様、なれど信虎殿は歴戦の猛者、この駿府で何を画策されるか判りませぬ、

ご用心のほど」  

 雪斎の柔和な顔が桜色に輝いているが、眼だけは笑いを忘れ底光りしている。

「余は東海一の弓取りじゃ。古狸の使い方は考えておる」  

「いかが成されます」  

 雪斎の顔に興味の色が浮かんだ。

「すでに城内に隠居所をしつらえてある。酒と女子を与え様子をみる。いざと

なれば、一手の将として今川勢の先鋒として遣こうてやる積りじゃ」

「それも良きかな、剛勇で鳴らしたお方で御座いますからな」

「それにしても武田晴信、なかなかの男じゃの。古狸の子飼いの武将連を全て手

のうちに入れたと聞く」  

「中心で動いた武将は板垣信方、飯富兵部等と聞き及びます。これも信虎殿の悪逆

非道のなせる所為、今後は諏訪殿の動きが微妙になると思うております」

「諏訪頼重、先年に古狸の三女を嫁にもろうたと聞いておる。果たして動くかの」

 義元が雪斎に問いかけ、雪斎が微妙な顔つきを見せた。

「すでに手は打ってございます。近々には武田家に叛(そ)きましょうな」

「流石は余の軍師殿じゃ、晴信殿の器量が計れるな」

「だが余り甲斐を混乱に巻き込みますと、我が今川家の三河攻略に差し障りが

ございます。その時には援軍を差し向けます」

「うむ、甲駿同盟を強固にせずば成らぬからの」

「北条勢が動けば、三河攻略も元も子もなくなります」  

 二人は心底から信虎を信じてはいなかったのだ。二人の密談はまだ続いている。

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Last updated  Apr 20, 2014 03:22:15 PM
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