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May 10, 2014
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 武田勢の鉄砲足軽が前衛の守りに入り、銃が火蓋をきり辺りが硝煙に

覆われた。それを合図に喚声が沸きあがり、板垣勢が突撃を始めた。

 先頭はつねの如く板垣信方が愛馬に跨り、愛用の大身槍を小脇に抱えて

いる。みるみる敵味方の距離が縮まった。

 どっと敵味方が激突し、そこかしこに猛烈な闘いが開始された。

「強いー」  

 山本勘助が唸った。

 村上勢はせいぜい百名か二百名の騎馬武者の一団であるが、板垣勢は

十倍はする軍勢を三段に構え、板垣信方を頂点として突き進んでいる。

 当たるや敵の騎馬武者が馬上から落馬した、併し、村上勢もしぶとい

蟻が群るように小集団となり、恐れもみせず果敢に反撃している。

 その様子を見た、二陣の甘利勢が仕掛けた。

 赤備えと黒備えの騎馬軍団が敵を突き崩し、怒涛の勢いで彼方の丘陵に

消えた。武者の喊声と怒号、騎馬の嘶きのみが聞こえるのみである。

 勘助に訝しい思いが湧いていた。今まで経験したことのない感覚である。

 この上田原の台地は大軍を動かす地形ではない、そう悟った。

 土地は広大であるが、所々に樹木が生え茂り、兵馬の前進を遮るような

丘陵が眼につく。矢張り物見をすべきであった、その後悔が奔り抜けた。

「お頭、敵の本隊が現れましたぞ」

 傍らに勘助の槍を持った平蔵の声がした。

 勘助の隻眼も新たな敵勢を捉えていた。

 前方に見た事もない騎馬武者の一団が現われ、本陣めがけ押し寄せてくる。

 刀槍の煌きがはっきりと見える。

「信方と虎泰はいかがいたした?」  

 晴信が不審そうな声をあげた。

 前方より母衣武者が、凄まじい勢いで駆け戻ってきた。

「板垣さま、甘利さまお討死ー」

 血塗れの騎馬武者が叫び声を挙げ同時に落馬した。 

「なんとー」  

 勘助が仁王立ちとなり晴信に視線を廻した。 

「二陣を固めよ」  

 床几に座った晴信がすかさず下知を下した。

 百足衆が指物を翻し、本陣より駆けだした、二陣の諸将も異変を察知したよう

だ。真っ先に飯富兵部の軍勢が動き出し、原虎胤も負けずと陣形を固める様子が

見える。左右に陣取っていた武田信繁と、小山田信茂の軍勢も鶴翼の陣刑を崩さ

ずに押し出した。こうした事態と成っても些かも動揺をみせない。

 流石は歴戦を重ねてきた武田勢だけはある。

 二陣は三段構えである。味方が態勢を整えた時、敵勢は目前に迫っていた。

 先頭に大兵の武将が大身槍を抱えている姿が映った。丸に上の字の旗印で

敵将の村上義清である事は顕かである。

 火のでるような猛烈な勢いでどっと飯富勢に突きかかった。兵の怒号と

悲鳴、さらに軍馬の嘶きが湧きあがった。

 彼方の敵勢も徐々に合流し、小さな一団から大きな軍団へと変化させ、

武田の本陣をめがけて迫って来る。

「敵ながら天晴れじゃ」  

 勘助が本陣から隻眼を光らせ、思わず呟いた。

 練りに練った戦術としれる、村上勢は脇目もふらず正面から飯富勢を

裂こうと猛烈果敢に襲いかかっている。

「勘助、勝てるか?」

 晴信が愛刀の和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)を抜き放っている。

「勝てまする。我等には後詰の兵が居ります、今に戦機が変わりましょう」  

「板垣勢、戻って参りますー」 

 本陣の百足衆が声をあげた。

 遥か彼方に赤備えの一団が現われ、怒涛の勢いで本陣を目掛け駆けてくる。

「あれは板垣さまの息子の弥次郎信憲(のぶのり)殿じゃな」

「甘利勢も戻って参ります」  

 百足衆に喜びの声が満ち溢れている。

「矢張り虎泰殿の倅、昌忠殿か」  

 勘助の隻眼にも黒備えの一団が見えた。

 あきらかに村上勢に焦りとほころびが見えはじめたが、飽くまでも頑強である。

 遮二無二味方の本陣を突こうとしている。飯富勢が堪えきれずに崩れ、雄叫び

をあげた、村上勢が本陣めがけ殺到してくる。

「御屋形さま、お引き下され」   

 勘助がすかさず晴信に本陣を移すように進言した。

「いいや、わたしはここで村上と一戦いたす」

 晴信が勘助の進言を言下に断った。宿老の両名を失い意地になっているのだ。

「何のための後詰にござるか」  

「勘助、山県勢を敵の横腹に喰らいつかせよ」

「はっ」  

 ことここに至っては戦うしかない、勘助が騎乗し山県勢に出陣の下知を与え、

「百足衆、敵が崩れを見せたら後詰の二隊に総攻撃に移るよう伝えよ」

 山県勢の五百騎が猛烈な勢いで村上勢の横腹を襲った。今一歩というところで

形勢が逆転した。あおりで村上義清が落馬した、どっと山県勢が殺到し遮二無二

に、義清を討たんと攻めかけたが、村上勢の旗本の一団が義清を馬上にすくいあ

げ、風のように戦場から引きあげて行った。

 武田晴信は初めて大敗を喫した、それも武田家の重鎮である二人の宿老を

失い、千名ちかくの犠牲者をだし、晴信自身も軽い手傷を負ったのだ。

 合戦は申(さる)ノ刻(午後四時)頃にすべて終った。

 板垣信方と甘利虎泰の最後の様子がもたらされた。板垣信方は先鋒として

先頭で敵を蹴散らしていたが、敵の挟撃を受け軍勢を分断された。

 村上勢の攻撃は蜂のように執拗であった。阿鼻叫喚の場面が展開された。

「父上、お引き下さい」  

 信憲が手勢を引きつれ、懸命に引くように進言したが、

「そちは軍勢をまとめ本陣に戻るのじゃ。わしは村上義清を捜す」

「無理にございます」  

 信憲の声を無視し、兜の眉庇より不敵な笑みをみせた信方が、黒雲のような

敵勢の中に躍り込み、三名の騎馬武者を槍先で突き落とした。

 流石は板垣信方である、凄まじい膂力(りょりょく)を見せ付けたのだ。

 その瞬間、敵の足軽が信方の騎馬の腹を槍で突き刺し、馬が暴れ体勢を崩した。

 見逃さず二本の槍が、深々と板垣信方の躯を突き抜けた。

 気力で槍の柄を斬り捨てたが、板垣信方の力はそこで尽きた。

 かっと何かを叫ぶような素振りをみせ、仰向けに地響きをあげ転がった。

 最後まで晴信の事を心配しての壮烈な最期であった。

 一方の甘利虎泰は先頭を駆けている最中に、銃弾を眉間にうけ最後を遂げた。

 武田の誇る両将は死を覚悟しての出陣であった、晴信の驕りを諫止するための

討死であった。武田勢は悄然と板垣信方、甘利虎泰の遺骸と共に諏訪に戻り、

盛大な供養を執り行い、上原城を板垣信憲に治めさせ躑躅ケ崎館に戻った。

 この合戦で武田家の威信が落ち、再び領地回復の為に小笠原長時が蠢きだす

のであった。

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Last updated  May 10, 2014 02:59:25 PM
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