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Dec 22, 2014
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      (義信幽閉と山本勘助)

「いかが為されます?」  

 山県三郎兵衛が心配顔で質問を発し、信玄は暫し瞑目していたが、

かっと眼(まなこ)を開き厳しい声で答えた。

「北曲輪の一室にて謹慎を申しつける」

「このご処置は厳し過ぎます。兄の死は犬死で御座いましたか?」

 猛将で鳴る山県三郎兵衛が吠えた。

「そうじゃ。余の命なく死する者は誰もが犬死ぞ、肝に命じよ」

 山県三郎兵衛の逞しい肩が震え拳を硬く握り締めている。

「余は父上を国主の座から引きおろし、甲斐から追放いたした」

「それは、御屋形さまの責任ではございませぬ」

「世間はそうは見ない。父親を追放した男が、またもや嫡男まで手にかけたと

申すであろう。余は構わぬ。生涯、悪名を背負って生き延び、父上と余の念願

の上洛を果たす」 

 仄暗い主殿で信玄の横顔が神秘的に見えた。

「そこまでお考えにございましたか」  

 山県三郎兵衛が信玄を仰ぎみた。

「余の心境は無念の想いで一杯じゃ、なぜ兵部は心のうちを打ち明けなんだ。

 なぜ余を置いて先に逝ったのじゃ」  

 信玄の巨眼から涙が滴った。

「御屋形さまのご心中も察せずに、勝手をいたし申し訳ございませぬ」

 山県三郎兵衛が血を吐くような叫び声を発した。

「三郎兵衛、余より先に死ぬことは許さぬ」  

 信玄の眸子に怒りと悲しみの色を見た、山県三郎兵衛が平伏した。

 初めて信玄の心情に気付いたのだ。

「馬場信春と相談し明朝に義信を捕らえ、北曲輪の一室に幽閉いたせ」    

「それだけは、お赦し下され」

「甘い、そちの兄、飯富兵部虎昌の冤罪を晴らすのじゃ」

 翌日、飯富兵部の切腹が公表され、直ちに太郎義信と股肱の家臣八十名が

捕縛され幽閉された。この処置により武田家の内紛は一瞬にして鎮まった。

 その夜、信玄は孤独で苦い酒を飲んでいた。

 太郎義信の背後に、自分の妻の三条殿が糸を引いておると看破していた。

「己の妻子を御することが出来ずに、何が上洛じゃ」

 信玄が小声で呟き自虐的な笑みを浮かべた。

 問題は義信の仕置きである。今は幽閉の身としているが、その内に明確な

処罰を命じなければならぬ。

 なんせ父である余に謀反を起こし、家を簒奪せんとした嫡男である。

 信玄は子沢山の武将であった。正室と側室の間に七男五女をもうけた。

 併し、肝心の男子は三条との間に三人の男子をもうけたが、次男の信親は

盲目で産まれ、三男の信之は十一歳で夭折した。

 もし義信に厳しい処罰を科したら、馬場信春の恐れたように側室の子、

四男の勝頼が武田家を継ぐことに成る。

 信玄はぐぴっと酒を飲み下した。

 親馬鹿と世間は云う。子の評価は親ほど甘くなるという意味である。

 武将としての資質は嫡男の義信が勝っている。そう信玄には思える。

 勝頼は勇猛ではあるが、言葉を代えれば猪武者に見えるのだ。

 又、義信は情に厚くそれに流される風潮があるが、川中島合戦では余の

為に、迫り来る越後勢の前面に手勢を率い見事に防いでみせた。

「武田家の為に義信とは腹を割って話しあわねばならぬな」

 そう決意し信玄は杯を伏せた。

 永禄八年(一五六五年)一月、武田の忍びの頭領河野晋作は信玄の許に

呼び出され、二人だけの密談が交されていた。

 座敷の障子戸から外の雪明りが差し込み、部屋全体を明るくしている。

「越後の動きはどうじゃ?」  

 信玄が火鉢を前にし綿入れの羽織り姿で訊ねた。

「越中で一向門徒と争ったと思えば、関東に乱入いたしておりまする」  

「そうか」  

 信玄が可笑しそうな笑い声を挙げた。

「奴は何が目的で年中出兵いたす?」

「判断がつきませぬ。合戦と酒が生甲斐かと勘考いたします」

 河野晋作が困った顔付で答えた。

「権勢欲も領土欲もない男じゃ、じゃが敵に回すと手強い男じゃ」

「左様にございますな」  

 河野晋作が信玄の言葉に肯いた。

「余は戦略転換を図る積りじゃ」  

 信玄の言葉に河野晋作の表情が引き締まった。

「まずは摂津の石山本願寺と軍事同盟を結ぶ、他には織田信長という男を

もっと詳しく知りたい」  

「どういたせと仰せにございます?」  

 河野晋作が興味津々とした顔つきで訊ねた。

 かって御屋形が織田信長の事に言及したことがなかったのだ。

 今日の御屋形は明確な意図をもって信長の動静を探れと申された。

「尾張と美濃に忍びを入れよ、信長の美濃攻めの詳細を知りたい」

 信玄が簡潔に命じた。   

「判りました、早速にも手配いたしまする」

「そちにも役目を与える」  

「請け賜ります」

 信玄が手文庫から書状を取り出し、紫の袱紗に丁寧に包みながら命じた。

「これを石山本願寺の顕如さまにお届けいたせ。我家から使者を派遣いたす

と、お知らせしてある」  

「畏まりました。これより出立いたします」

「ご苦労じゃが頼む、じゃが河野」  

「はっ、何か外にございますか?」

「途中である男が現われる筈じゃ、そちも存念の者と推測いたす。その男が

現れたら、使者の役目を譲るのじゃ」  

「よく飲み込めませぬ」

 信玄の含みのある言葉に河野晋作が不審そうな顔をしている。

「多分、そちは仰天いたすであろう」  

「御屋形さまはご存じにございますか?」

「余は推測と申したぞ」  

 信玄が面白そうに、河野晋作の様子を眺めている。

「ようするに、その人物に書状を託せば宜しいのですな?」

「左様じゃ。だがこの事は余とそちだけの秘密じゃ」

 なんとも合点のいかない心地で河野晋作は古府中を出立した。別に急ぐ

旅ではないが、忍び者の習性で周りの旅人が驚く早さで歩んで行く。

 彼は甲斐から美濃に抜け尾張領を通った、一目、尾張の様子が知りたかった。

 その足で伊勢に着いて小汚い旅籠に泊まった。

 その晩にその男が現われた。

「河野晋作、入るぞ」  

 廊下より声がした。聞き覚えのある声と感じた時には、その人物が部屋に

足を踏み入れていた。

「貴方さまは、・・・・-」  

 河野晋作が呆然として絶句した。

「久しいのう」  

 軽く足を引きずり、河野晋作の前に腰を据えた男は山本勘助であった。

 以前と違い、浪々の浪人風情の姿で身形もみすぼらしい。

「山本さま、・・・- 貴方さまは川中島で討死された筈」

「わしが仕組んだ策じゃ」  

 勘助が徳利に手を伸ばし酒を咽喉に流した。

「美味い」  

 手の甲であごの滴を拭い、

「もう、一本頼んでくれまいか」

 勘助が仰天している河野晋作を隻眼で眺め、酒の追加を頼んだ。

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Last updated  Dec 22, 2014 06:07:22 PM
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