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Mar 6, 2015
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   (信玄、徳川領内を席巻す)

 一方の信長は三万の大軍を擁し、浅井家の本拠地、小谷城を包囲していたが、

大嶽に滞陣する、朝倉勢の存在が邪魔となって動けずにいる。

 信長の許にひんぴんと信玄の動きが伝わってくる、遂に甲斐の猛虎が牙を

剥き咆哮したのだ。

 信長は戦慄し、横山城の守将木下藤吉郎に小谷城包囲を命じ、直ちに軍団を

引き払い、岐阜に帰還した。

 これ以上、近江の地に止まっている訳にはいかない、信玄の上洛を阻止せね

ばならないのだ。

 岐阜城に帰還した信長は、自分の置かれた情況を改めて思い知らされた。

 織田勢は各地で足止めをくらっている。積年の敵である石山本願寺は摂津に、

近江には浅井、朝倉勢が滞陣し、更に足元の奥美濃にも敵がいたのだ。

 信長により追放された元美濃の国主、斉藤龍興(たつおき)の一党が反抗し、

それにも軍勢をさいていた。

 南近江では六角承禎の残党が蜂起し、福島野田には阿波から戻った三好一党が、

石山本願寺と協同で戦線を構築し織田勢に叛いている。

 まさに四面楚歌であり、一兵の増援も期待できない情況に陥っていたのだ。

 頼むは浜松の徳川家康のみ、併し、それも信玄が上洛の軍を起こせば真っ先に

餌食となる。

 家康がせいぜい集められる軍勢は九千余名と冷静に読みきっていた。

 強兵で聞こえる甲州勢と信玄の采配なれば、鎧袖一触で敗れるじゃろう。

 我が軍勢が集結するまでは捨て殺しじゃ。と、信長は非情な決断を下していた。

 流石の信長も打ち手を失い、苛立ちのなかで岐阜城に居座っている。

 元亀三年(一五七二年)の波乱にとんだ年が明けた。

 京の菊亭大納言の荒れ果てた庭の片隅に、信虎の棲家がある。

 落ちぶれたとはいえ、大納言の庭には樹齢何百年の松の大木が茂り、

信虎の部屋の丸窓の前の、大木の影に万両がひっそりと花をつけている。

 信玄から送られる金子のおかげで信虎は、悠々自適の生活を送っていた。

 貧乏公卿の大納言も信虎からの生活費で裕福に暮らしている。

 その信虎の棲家に三人の男が訪れてきた。

 真っ先に山本勘助と小十郎が姿を現した。

「勘助、久しく逢わぬ間にそちも老いたの」

 妖怪のように痩せ細った痩躯の信虎が、勘助の顔をみて揶揄した。

「大殿にはお変わりもなく祝着に存じます」  

 勘助が祝いを述べた。

「世辞はよい、わしも八十となった。いささか長生きをいたしたが、ようやく

念願が叶うかと思うと生きて参った甲斐がある」

 信虎が妖怪じみた顔でにたりと笑みを見せた、声だけは往年の気迫がある。

 お弓が酒肴の用意を整え姿をみせ、陰気な部屋がぱっと明るくなった。

「お弓殿は変わりませぬな」  

 勘助がお弓の姿を眩しそうに見つめた。

「勘殿、年の話はなしにございますぞ。小十郎も酒(ささ)を飲みなされ」

 小十郎の躯も一回りちぢんで見える。

「遅くなり申した」  

 野太い声と同時に、河野晋作が鍛えた躯を現した。

 五人は暫し久闊を祝し、黙したまま酒肴に舌鼓をうった。

 庭先から風の音が寒そうに聞こえてくる。  

「京は甲斐に劣らず寒い」

 信虎が厚い綿入れを着込み、しんみりとした口調で杯に視線を落とした。

「本日は何事にございます。こうして集まるのも久しゅうございますな」

 お弓の声に誘われるように勘助が、信虎の魁偉な容貌をみつめ口を開いた。

「大殿、いよいよ御屋形は上洛を決意なされましたぞ」

「甲斐を捨て三十一年となるが、信玄の奴、ようやった。矢張りわしでは

甲斐 一国が精々と最近になって悟った」  

 信虎が魁偉な眼を細め呟いた。

「だが、それがしには心配な事がございます」  

 河野晋作が低い声で応じ、彼の顔色が冴えない。

「いかがいたした?」  

 信虎が顔をもたげ河野に視線を向けて問いかけた。

「これは内密にござるが、御屋形さまは病んでおられるようです」

「河野、その話は真か?」  

 勘助が思わず鋭い声をあげた。

「忍び者の我等は御屋形さまの私生活を垣間見る時がござる。何となくそんな

感じに捉われます、心配にございます」  

 河野晋作の顔に心配そうな色が滲んでいる。

「お元気がないのか?」

 勘助が性急に訊ねた。

「いや、常とお変わりございませぬが、気にかかります」

「ならば心配ないは、上洛の軍を起こせば元気になる。のう勘助」

「御屋形に限っては心配ござらん。人一倍お身体に気を配っておられる」

 勘助は十数年前の信玄の面影を瞼の裏に思い描いていた。

「拙者の取りこし苦労ですかな」  

 河野晋作が笑い声で杯を干した。

「昨年の三河進攻なんぞを見ますと御屋形には、微塵も焦りがございませぬ」

「勘助もそう見たか。わしの見立ても同じだ、余裕を持って甲斐に引きあげたの」

 信虎の答えでほっとする空気が部屋に漂った。

「左様にございますな、あの家康が反撃できぬ素早い動きを成されました」

 勘助が嬉しそうな笑みを浮かべ、お弓の顔を見つめた。

 二人の眼と眼が合い、躰を許しあった和やかな雰囲気が漂った。

「して上洛の時期は決しておるのか?」  

 信虎が河野晋作に視線を向けた。

「御屋形さまからは未だご沙汰はありませぬが、最近は公方さまや越前、近江と

我等の出番が頻繁にございます」

「河野、そちは何処に行って参った」

 勘助がお弓から視線を移し訊ねた。

「越中、富山城からの帰りにございます」

「富山城は越中における一向門徒衆の巣窟じゃな、勘助」  

「左様に」  

 おうむ返しに勘助が答えた。

「信玄は秋に上洛の軍勢を起こすとみたが、どうじゃ?」  

 信虎が相貌を歪め、自信をこめて言い放った。  

「拙者も同感にございますな」

 勘助が隻眼を鋭く光らせ、頬に微かな笑みを浮かべた。

「武田の軍師と意見があえば間違いはあるまい」

 信虎の妖怪じみた顔に満足そうな笑みが刷かれた。

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Last updated  Mar 6, 2015 05:07:16 PM
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