たばちゃん♪の いいもん見っけ!

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おでんの卵 ~新・白ずきんちゃん~


ひとりで おでんやさんのカウンターに 座りました。


カッコいいおやじさんの仕切っている このおでんやさんは、
女の子たちの間で とても人気があり、白ずきんちゃんも
数年前から 通っているお店でした。

が、いつも お友達と 一緒でしたし、
ランチタイムには ひとりで来たことがあるものの、
夜、カウンター席に ひとりで 座るのは、初めてのことでした。


白ずきんちゃんが どきどきしながら 座っていると、
おやじさんは、いろいろなお話をしながら、
白ずきんちゃんの好きなものを たくさん 食べさせてくれました。



ココに ひとりで来るなんて、ムリ!

ずっと そう思っていたのに、実際に やってみたら、
意外にも どうってことない感覚で座っている自分に びっくりした
白ずきんちゃんでした。



おなかも だいぶ いっぱいになりかけたところで、
おやじさんは 言いました。


白ずきんちゃん。
次は、卵だよ。



白ずきんちゃんは、わなわなと 首をふりました。

わたし、卵は いいです。


なんで?


卵は、おでんの花形です。

おやじさんは、不思議に思ったようでした。



わたしが、た、たまごだなんて・・・

白ずきんちゃんの目が、泳いでいます。



おやじさんは にやりと 笑いました。

白ずきんちゃんは、
卵を、どんなものだと思っているの?



白ずきんちゃんは、ちょっと 考えました。


卵って・・・

あのぉ、白身と黄身と、2つの顔があって。
ひとつの食べ物のくせに、わけわかんないでしょ?
どっちかにしろ、って感じじゃないですか。

わたし、卵は、いいです。


白ずきんちゃんが 卵を嫌う理由こそ、
わけわかんないものでした。

それでも 白ずきんちゃんは、わなわなと 首を ふり続けました。



おやじさんは、にっこり笑って、言いました。


卵っていうのはね・・・

白身には 白身の味わいがあり、黄身には 黄身の味わいがある。
白身の ぷるぷる加減に、黄身の しっとりとした この儚さ。

僕は、両方 好きだなぁ。
別々に食べてもよし、一緒に食べてもよし・・・


おやじさんは、卵の魅力に関する おやじさんの持論を、
とくとくと 語ってくれました。





白身には白身の味わいがあり、
黄身には黄身の味わいがある・・・

白ずきんちゃんは、つぶやきました。



実は、白ずきんちゃんは、卵を 食べたことがなかったのです。


なぜなら、
こんな平凡なわたしが、卵なんか 食べてはいけない! と、信じていたから。

白ずきんちゃんは、わけもなく
わたしは 卵に ふさわしくない! と、思い込んでいたのでした。





白身のぷるぷると、黄身のしっとり・・・

白ずきんちゃんは、おやじさんの言葉を繰り返すと、
そのまま 宙を見つめて 黙ってしまいました。




そんな白ずきんちゃんを見て、
おやじさんは、ふたたび にやりと 笑いました。


特定のネタを食べることに抵抗を覚えるお客さんは、
実は 少なくないのです。

長いこと この商売をやっている おやじさんには、
その仕組みが よく わかっていました。



白ずきんちゃん。
卵、食べていいんだよ?



ひ、ひぇぇぇ!

白ずきんちゃんは 目をむきました。



ほんとは 卵、食べてみたいんでしょ?



ぶるんぶるん 頭をふる 白ずきんちゃんのほっぺたは、
真っ赤になっていました。


い、いいです。
この次までに、考えときます。

ご、ご、ごちそうさまでした!


白ずきんちゃんは、ぶるぶると首をふりながら、
カウンター席の高い椅子から 飛び降りると・・・・

うまく着地できずに、コケました。



こんなところで コケてるようじゃ、わたしに 卵を食べる資格なんて。。。

白ずきんちゃんは、ますます悲しくなりましたが、おやじさんは、
白ずきんちゃんがコケたところは スルーしてくれたようです。



卵、美味しいのになぁ

おやじさんは、お鍋の中をのぞきこみながら、
ひっそりと つぶやいていました。






たまご、たまご、たまご・・・


白ずきんちゃんは、外に出ると、
真っ赤な顔に 白ずきんを深くかぶり直し、
ぶつぶつ つぶやきながら 歩き出しました。





その白ずきんが、
卵の殻と同じ役割を果たしていることに・・・


白ずきんちゃんは、まだ 気づいていませんでした。







2009.01.21 おでんの卵 ~新・白ずきんちゃん~


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