あたしはあたしの道をいく

2008.02.21
XML
カテゴリ: 本@浅田次郎

王妃の館(上)
王妃の館(下)

浅田次郎の本。

『蒼穹の昴』みたいに硬くなく、大衆娯楽小説、って感じ。

笑いをちりばめられ、泣きをちりばめられ、歴史をちりばめられ、

浅田次郎の面目躍如、って感じ。



フランスに、シャトー・ド・ラ・レーヌ、というホテルがある。

ブルボン王朝太陽王ルイ14世の愛人がヴェルサイユを去った後に住んだ館を、

ホテルとして使っているものだ。

非常に格式の高いホテルらしく、一般客はまず、宿泊できない。





……のはずなのだが、ホテルの経営難と、旅行会社の経営難、

という二つの経営難の利害が一致して、日本のツアー客が泊まることが出来た。

しかも、奇想天外、一部屋に二組の二重売り。



ありえ~ん!

て感じに始まる、かなり笑える小説。

途中、何度も「プッ!!!」と噴出してしまった。

登場人物たちが何とも、個性的なのよね。



人気作家とその担当編集者。

さらに、それを追う別の編集者。

厄当たり不動産王と、その愛人。

カード詐欺を生業とする、やたら暗い夫婦。



ゼロ戦乗りから教員になり、定年退職した男性とその妻。

出世頭との社内不倫清算の挙句、リストラされた女性。

元警察官と、オカマ。

ああああ、書いてても「ありえ~ん!」って笑えるくらい、濃いメンバーだわ。

しかもこの濃いメンバーを引率するガイドが、元夫婦のデコボココンビ。







それにしても。

プリズン・ホテルを読んだときにも思ったけど、

浅田次郎、小説家を自虐的に書くのが好きなのねえ。

北白川右京って名前の人気作家、もしかして過去のPNなのかしらって思う。

とっても自虐的に描かれていて、悪いけど笑っちゃう。

道化みたいなのよね、なんだか。

道化の悲哀みたいなのが、笑いの中に混ぜられててね。

かなしいけど、笑っちゃう。



プッって噴出して、笑いながら泣いちゃいそうな場面もあるのに、

これぞ浅田次郎、みたいな泣きもちゃんと用意されてる。

あたし、久しぶりに通勤列車で泣きそうになっちゃったわよ。

浅田次郎ってば、なんだってこんなに「泣き」のツボを抑えてるのかしら。



そして、大団円。

どーよ、この計算しつくされたハッピーエンド!

これぞ浅田次郎の本領発揮って感じじゃない?

くっそー、泣かされてやるのがムカツクったら!



そうそう。

ツアーのアクの強い悲喜こもごもに紛れてしまうけど、

ルイ14世と妃、プティ・ルイの話も、泣ける。

小うるさいエチケットの成立、ルイ14世の苦悩。

プティ・ルイと妃の選んだもの。



悲劇の主人公になるはずのルイ15世については語られない。

そうだ、現れない登場人物、もたくさん居る。

登場人物の会話や回顧に現れ、存在を感じさせられるけれども、登場しない登場人物たち。

リストラ女の不倫相手。

ツアコンの不倫相手。

厄アタリ不動産王の過去の妻。

ルイ14世の正妻のスペイン女。

そういう人たちは確実に登場人物に大きな影響を与えているにも関わらず、

どこか遠い世界のひとのように、物語の中に登場しない。

違和感があるような無いような、不思議な感じ。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.02.21 12:34:14
コメントを書く
[本@浅田次郎] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: