三国志読本 (文春文庫) [ 宮城谷 昌光 ]
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「戦雲は西からきた」、ずっとこの書き出しの一文を考えていました。
「情」が濃い小説にするのか、「知」が濃い小説にするのか、どういうレベルでその小説を書いていくかというのは、書き出しの一文でだいたい決まります。
演義こそが三国志だと思っている、熱心なファンたちを説得できるだけの筆力がなければ、「宮城谷の書く三国志は嘘だ」と最初から無視されてしまいます。
今の中国人の祖先は、たしかに古代の中国人です。しかし、二度外の民族に征服されたでしょう。
これは大きいと思う。古代の中国人のスピリットというのは、今の中国人には伝わっていないのかもしれない。
人間がたぶんいちばん驚くのは、知らないことを知ることより、自分が知っていることを引き出されたときです。
私が古代中国を舞台にした小説を書いているのも、自分が得た知識を、いまの日本に広めたい、と考えているわけではなくて、日本人は一体何なのか知りたいがために書いている。そういう気持ちが強いですね。