とちめんぼう

航空機


 言わずと知れた零戦の撃墜王、坂井三郎氏の著作。
「大空のサムライ」には似たような題名のものがいくつかあって、
今回読了したのは「正・続」の「正」の方。
 坂井氏がパイロットを志してから硫黄島を脱出するまでの物語である。
硫黄島ほぼ最後の便で脱出しなければこの著作もないわけだ。
まことに修羅場をくぐってきた人物の貴重な記録である。

『液冷戦闘機「飛燕」』渡辺洋二 朝日ソノラマ
 生頼範義描くところの勇ましい表紙イラストを見て
どんな奮戦が描かれるのだろうと思ってしまうが、
実は非常に重い内容の本だった。
 悲劇の戦闘機「飛燕」は川崎航空機製。
日本では珍しく液冷式(空気で冷やす空冷式に対し、水で冷やす)で、
開発・試作・実験段階だったにもかかわらず、
太平洋戦争の戦況が悪化する時期に無理やり実戦配備された。
そのため故障が頻発して、本領発揮できない場面が多い。
増槽が足りないのにトラック島からラバウル島へ向かう無理な作戦で
故障したり燃料が切れたりして次々と水没し、パイロットも機も、さぞ無念だったろうと読んでいる方がつらくなる。 
 本書後半、本土の防空に使われたときも、米軍機との力の差はいかんともしがたく、
B-29を体当たり攻撃で落とそうという無茶な戦法だ。表紙の描かれたB-29との乱戦は、実はこの体当たり攻撃の場面であった。
 いわゆる特攻機とは違い、パイロットは落下傘で脱出することもあるのだが、生還してまた特攻に出撃、という凄惨きわまる働かされぶりで、次々とパイロットが、機が失われていく。 早く8月15日が来てくれと祈るような気持ちで読み進めた。
 「飛燕」の悲劇はアメリカとの技術力の差はあったのだろうが、何といっても無理な戦争を始め、無理に無理を重ねて継続したのが悲劇の最大の原因と感じられた。
 読後感の重い本であった。(2006.8.4)


『零戦燃ゆ』柳田邦男の渾身のノンフィクション。零戦哀れ、パイロット哀れ。

『機長のかばん』太平洋戦争の戦闘機のパイロットから始まり民間旅客機の機長を長年つとめた方の本。読了したのでとりあえずメモ。

『機長の7000日』田口美貴夫著
ジャンボ機のパイロット田口氏のエッセイ(になるのかな?)
離陸着陸の難しさとか、
機種・路線によっていちいち免許があるとか、
興味深い内容でした。
続編が『機長の一万日』ただいま読みかけ。

小川一水『ファイナル・シーカー』
自衛隊の救難隊を描いた連作小説。
ヤングアダルトのくくりですが
自衛隊の微妙な立場にも眼が行き届いていて
深みのあるつくりになっています。
主人公に影のように寄り添う少女「灯(ともり」)」の存在が
唐突な感じがしたのですが
ちゃんとストーリーに不可欠な存在でありました。
それから、不穏当な感想かもしれないが
小川一水は登場人物の殺し方がうまい。
一番泣けるところで死なせるんですなあこれが。
一読の価値ありです。
『空中衝突』服部省吾 光人社文庫
戦闘機パイロットというのは空に上がったら
自分で自分の面倒をみるしかないから「特殊戦」ならずとも
一匹狼なのですねえ。
空中衝突して墜ちていくパイロットの心理が克明に描かれていて迫力です。
これを読んで眼からウロコが落ちたこと
・雪風OVA2巻でダクトの時、雪風をロックオンした無人機が
「パシャ」とシャッター音をさせていたのは
ガンカメラというものなんですね。訓練の時は撃つ代わりにガンカメラで照準したことを撮影するみたいです。
・トルコとギリシャのF-16が空中衝突したニュースを聞いて、
「なぜよけられなかったのか?」と素朴に思いましたが、
戦闘機同士あい対した時はよけることはありえないのですね。
(よけたら撃たれるしかないから)

『零式戦闘機』柳田邦男
 零戦の開発を克明に追ったノンフィクション。
 以前NHK・ETV特集で「零戦ニ欠陥アリ」という番組を放送していたが
この本を読んでから録画を見直すとまことによく理解できた。
 並行して松本零士の『ザ・コクピット』も再読しているのだが
『ザ・コクピット』に登場する航空機の名称もよくわかって面白い。
 驚いたのは零戦を作った工場から試験飛行する飛行場まで
牛車で運んだ(!!)というエピソード。振動が少なく(馬車と違い)暴走しないからというが、想像するとユーモラスだ。
私事ですが岳父は当時、試験飛行する工場の近くに住んでいて、
航空機を運ぶ牛車を見たそうである。
「見たら『見るな』と叱られた。飛行機の翼の端がちょっと見えた」そうな。

坂井三郎『戦話・大空のサムライ』光人社NF文庫
「大空のサムライ」シリーズは何冊も出ていて、
本書は文庫で一番新しいもの。
これより前の著書は手に入りにくくて未読。
(実は子供の頃読んだ小学館の児童文学全集に「零戦の勇者」として載っていた



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