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オキナワの中年
*古波蔵信忠『三重城とボーカの間』
昨年末の第二十七回琉球新報短編小説賞は古波蔵信忠の『三重城とボーカの間』が受賞した。同賞は又吉栄喜、目取真俊をはじめ、近年では伊禮和子らを輩出しており、沖縄から九州へ、さらには全国レベルの表現者への出発点として、すっかり定着した感がある。日本文学全体の閉塞(へいそく)感の中で、既に本土でも批評家・研究者を中心に、関心が高まっている。
今回は、選考委員の全員が一致して『三重城とボーカの間』を推す形になった。選考評もかなり好意的なものである。作品は幼かった主人公「私」を捨てる形でアルゼンチンに渡った母と「私」とが、「世界の島ん人大会」を契機に、数十年ぶりに再会する様を描いたものである。「私」を母代わりに育てた祖母の「不義を働いて出ていった女は生涯二度と家の敷居をまたがせてはならない」という遺言に対するこだわりと、母への愛着という葛藤(かっとう)が、一つの焦点になっている。生き別れた母と子の出会いという、一歩間違えば、ありふれた作品になりかねない素材が、どのようにして高い評価を得たのか?
選考委員の一人辻原登は、多くの読者を持つ新聞というメディアにふさわしい作品であると評している。この評言はおそらく「小説」というジャンルの一面を鋭くとらえている。「小説」にはさまざまな魅力がある。だれも気付かぬ新奇なテーマ、思いがけない斬新(ざんしん)な表現、これらは大きな成果を生むことがある。しかし時として、全く独りよがりの自己満足や、読者を無視した不毛な実験に終わることがあるし、新人の作品では、むしろそういう場合の方が多いのだ。小説は何よりも享受されるものである。奇矯な表現を廃し、特別の知識が無い多数の共感を得ること、散文芸術の出発点は、そこにあった。この点で、『三重城とボーカの間』の抑制の利いた表現は、きわめて健全な散文精神の発露であると言えるだろう。例えば、「私」が母親と再会するというヤマ場においてすら、決して大仰な表現は使われない。「私」は簡単に名乗り、ただ「遠いところをようこそ」とだけ言うのである。どれほど言葉を尽くしても埋めきれない数十年の歳月が、この言葉によって埋められていく。語らぬ事で、多くを語っているのだ。これはこの作品を一貫して流れる姿勢である。母に触発された、少年時の回想は戦時中の疎開の経験をひっそりと織り込みながら、「私」の薄くなった髪と「俺ももう六十歳か」というたった一言に収れんしていくのである。
このように一方で表現を切りつめながら、細部の日常は逆にしっかりと書き込まれている。「私」にとっての重大事をよそに、家族の中には坦々(たんたん)とした時間が流れていく。息子のかすかな体温の残る座布団、テレビのスクリーンに映る「私」の影、それら細部の描写が、作品のリアリティーを支えている。ことに日野啓三の評価する、苦悩しつつも、妻に代わって豚肉のアク取りをする部分の丁寧な描写は、緻密(ちみつ)な心理描写よりはるかに饒舌(じょうぜつ)に「私」の内面を語っているのである。
この作品における散文精神は、相対的な方法において、また顕著である。母と子の別離と再会は、他にも数多くあるが、ある母とその子との再会は、あくまでも唯一である。その一方、当人にとっては極めて切実な出来事であっても、他人から見ればよそにもある話にすぎない。いわば小説の課題のひとつは、類型的な出来事を、読者に、いかにして一回的な出来事として感受せしめるのか、というところにある。作者はそのため、相対的な手法をとった。「私」の切実さは家族にとってすら、それ程強い関心を引く出来事ではない。ぜひとも家族と会わせたい、という「私」の気持ちは「そんな義理ないじゃない」という家族の言葉にあっさりと相対化されてしまうのだ。また、八十すぎの母を背負う六十の息子を全く無視して車は駆け抜けていく。その「私」自身が実は前半では、親子関係に悩む妻の友人の話に、それほど強い関心は持っていないのである。人間同士のある孤独が、ここで極めて暗示的な形で提示されている。母が言うように「みんなそれぞれ都合があるものなの」だ。この孤独を克服する可能性が文学にはある、ということを、おそらく作者は確信している。身内にすら届かない「私」の切実さは、しっかり読者には届いているのである。
この作品でやや不満に感じたのは、「私」はともかく母が、このような標準語で語るのだろうか、という点であった。というのは第二回世界のウチナーンチュ大会のニュースを見たとき、ウチナーグチで語る老女に新鮮な驚きを感じた記憶があるからである。確かに選考委員の一人、大城立裕は安易な方言の使用について、極めて批判的である。方言を使えば沖縄文学らしくなるという固定観念、あるいは極めて不正確な方言、しかし大城が批判するのはあくまで「安易」な方言使用であって、方言そのものではないと思われる。そして既に六十五歳のこの作者には、十分正確で、かつ、ウチナーグチ以外では表現しきれない微妙なニュアンスを表現しうる力量があると想像されるのである。作中、三重城という伝統的な空間で、「私」と母とが夢の交流を持つ、と言うエピソードにおいて沖縄の土俗性を出そうとしているが、やはり作品全体の坦々としたリアリティーの中で、この部分の感傷性には若干の違和感を感じた。会話の文体も含め、むしろどこまでも細部のリアルに徹することで、自然に土俗性がにじみ出すような仕方もあり得たのではないか、と思われる。
琉球新報短編小説賞は、終着点ではなく出発点である。次回作によせる期待は大きい。(敬称略)
『三重城とボーカの間』は本紙昨年十二月七日付朝刊に全文掲載。
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