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オキナワの中年
又吉栄喜『陸蟹(おかがに)たちの行進』
ここ数年、政治的な状況以外の沖縄を描き続けてきた又吉栄喜であるが、最新作「陸蟹(おかがに)たちの行進」(『新潮』三月号)において、独自の仕方で現在的な状況としての沖縄を描いている。舞台は一九九七年、沖縄北部「K村」の「奥浜」という小さな集落である。九七年といえば現実世界においては辺野古沖海上基地受け入れをめぐって、名護が、また沖縄全体が大きく揺れ動いた年であった。作品はそのような過酷な現実と一部重なり合いながら、もう一つの別の世界を描いている。
平穏な集落に唐突に持ち上がった海岸埋め立て計画。若い「自治会長」とその父親は賛成・反対に別れて対立する。この埋め立てはどの地域でも嫌がられる火葬場建築のためであり、その見返りとして、老人ホームや診療所も建設するという。地域おこしを自らの使命と考える自治会長は、賛成派にまわるが、火葬場というのは口実で、実は米軍基地が来るのだ、と考える父親は頑強に反対する。この米軍基地の隠れ蓑(みの)という見方は、必ずしも父親の妄想とは言えず、あるいはそうかもしれない、と思わせるような状況証拠がちらほら存在し、自治会長を悩ませる。この対立の中で、自治会長の過去、少年時代や、無き母親の記憶がよみがえっていく。
琉球処分、沖縄戦、基地闘争という沖縄の個別の歴史の根底には、一貫して、近代物質文明と伝統的な共同体との対立がある、ということを指摘したのは岡本恵徳であるが、その対立は一見解決不可能な矛盾として、この作品にもあらわれている。豊かになるためには、伝統的な人間関係、あるいは自然といった、何らかの代償を支払わねばならない。これは必ずしも沖縄だけの問題ではなく、近代物質文明を受け入れた近代人すべてにとって普遍的な課題である。しかしその対立が常にぎりぎりの二者択一を迫ってくるのが、ここ沖縄の近代であった。殊に一定の物質的豊かさと危険とを同時にもたらす軍事基地は、この種の二者択一の極限的な存在であろう。
漁業を唯一の生業とする「奥浜」集落であるが、競争力の低下によりじり貧状態である。自治会長はこれまでも、観光客目当てのさまざまな地域おこしを画策したが、どれもうまくいかない。海岸埋め立ては起死回生のほとんど最後の打開策となっている。作品前半において自治会長は、近代的な現実主義者であり、その視点から反対派の人々は父親をもふくめ、何か迷信深いこっけいなアナクロニズムとして映っている。一方の賛成派もかなりあくどい画策をするのだが、経済振興という大義名分により、支持を広げていく。環境か、経済か?あるいは伝統か、振興か?そしてその背後には、何度も苦汁を飲まされてきた、権力の姿がちらついている。これは沖縄でこれまで何度も反復され、かつ何度も語られてきたモチーフであるが、この作品ではその対立が、人間的憎悪まで先鋭化せずに、和解へと向かうという、又吉文学ならではの独特の世界において展開していく。
作品中かなりの割合が父子の議論によって占められており、合理的に読むならば自治会長の言い分の方がほぼまっとうである。しかし人間としての存在感は父親のユーモラスな語り口と行為に、よりはっきりと現れている。これは作中の表記法にも象徴的に現れている。「正隆」という名をもつ自治会長が作中ほぼ一貫して「自治会長」と表記されるのに対して、父は「勲」と名で表記されている。いわば「自治会長」という、他の「会計」「書記」等と同等な、機能的な存在者が、父子の対立を通して、いかに「正隆」自身を再発見するか、というのがこの作品のもう一つのモチーフであるといってよい。そしてそのきっかけをもたらすのが、「海」と「母」である。
ここ数年の又吉文学において、女性の重要性が指摘されてきた。一見すると主要な人物としては女性が登場しないこの作品においても、その重要性はいささかも低下していない。この父子が、親子というより、何か対等な友情のような関係で結ばれているのも、同じ欠如をかかえる同志といった面を持つからであろう。父と子の対立が最も深刻になった時想起されるのが、母の思い出である。そして母の思い出は常に海の情景と重なり合っている。さらに母(妻)の死後、父子はあたかも示し合わせたように海に魅入られている。「陸蟹たちの行進」という題名自体が、無き母を媒介としなければ成立しないのだ。
この重なり合う母と海との記憶の中で、自治会長の中で、大卒というプライド、あるいは立身出世という近代的な努力目標が、真に自分のものであったのか、という懐疑が生まれていく。やがて自らが埋め立てようとしていた海で、父との和解が実現する。海と母については、実は女子小学生の作文という先取りとして作中に明記されている。「海は、母なる海ともいわれています。」実際には女教師の書いたこの紋切り型のフレーズは、現実主義的な合理性の前では、たやすく一蹴(しゅう)されてしまうであろう。それを単なるキャッチフレーズではなく実感として把握させるために小説というジャンルが選ばれたのであり、また二百五十枚を超える分量が必要とされたのである。
作家自身が語るようにこれは「消えゆくユートピア」の物語である(本紙三月六日付け文化面)。しかもユートピアの本義は「どこにもない場所」である。現実の北部は、三年後の今日、基地受け入れを事実上の結論として推移している。この作品を甘いと読む向きもあろう。しかし経済学や政治学など社会科学が、九九人のためにあるとするなら、文学作品は残された一人の為に存在するのである。この一人がどれだけの広がりと深みとを持ちうるか、今日ほど文学がその存在意義が問われる時期は無いであろう。
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