トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2006/09/21
XML
カテゴリ: 音楽
pet sounds
02. You still believe in me
03. That's not me
04. Don't talk
05. I'm waiting for the day
06. Let's go away for a while
07. Sloop John B
08. God only knows
09. I know there's an answer

11. I just wasn't made for these times
12. Pet sounds
13. Caroline no

■たとえばビートルズのアルバムジャケットを見て、一番右がジョンで、次がリンゴ、そして裸足で歩いているのがポールで、最後がジョージよ、みたいにロックミュージックが好きな人なら老若男女ほとんどが言い当てることができるだろう。

■それに対してこのペットサウンズというロックアルバムらしからぬ何やらへんてこなアルバムジャケットを見て、どの人がブライアン・ウィルソンなのかを言い当てることができる人はとても少ないと思う。

■認知度ということに関してはこのアルバムの傑作加減は他の如何なるロック名盤と肩を並べるどころか、埋もれてしまったり、見過ごされてしまいがちな位置に甘んじているように思えてならない。それはこの音楽があまりにも内向的で負の要素に覆われてしまっているように見えるところに原因があるのかもしれない。

■そもそもビーチボーイズのアイデンティティは風俗音楽にあった。サーフィンUSA、サーファーガール、グッドヴァイブレーション、そんな鮮やかなコーラスワークとストライプのシャツ、サーフボードという取り合わせが彼らのセールスポイントだったし、聞き手の彼らに対するパブリックイメージだった。

■でもさ、ブライアン・ウィルソンは本当は海なんか嫌いで、カナヅチだったんだ。だから彼はあんな音楽を演奏することがおそらくとっても恥ずかしいと思っていたんだ。もうやってられないと、自分の好きな音楽やっていいですかと、そしてスタジオに籠もったんだ。

■そしてできた音楽には彼らのセールスポイントの欠片もなくて、ビーチで寝ころびながらカセットから流すものとはほど遠く、どちらかと言えば家で夜寝る前にひとりで味わう種類の音楽になっていた。メンバーのひとりはそれを聴いて激怒したという。そんなもん、犬に聞かせろ!だからPet Sounds。

■一聴して美しい音楽であるとは思わなかった。1曲1曲が3分そこそこでアルバム全体でも40分に満たない。どれもこれも盛り上がる寸前でそれをやめてしまう強烈な意志が働いているかのように尻つぼみに聞こえた。とってつけたようなかつてのコーラスワークが少し悲しく聞こえた。

■それでも一周聞いてそれでおしまいというアルバムにならないのは、この作品のサブストーリーの膨大さにある。ブライアンの悲劇、当時の社会の流れ、バンドの崩壊、ビートルズとの対比。そんなこのアルバムを巡る周辺情報が増えるたび、色んなものや音を確かめるために聞き返さずにはいられない作品である。



■M8を聞いてフリッパーズ・ギターの世界塔の冒頭の曲だ、なんて感想を持ってしまう私にはまだまだこのアルバムの本当の良さはわからないのかもしれない。でも通して聞いたGod Only Knows はしばらく頭の中を回っている。M1もM2もM11もM13も・・・。

■日本盤CDのライナーは山下達郎。この愛情溢れる解説はとても読み応えあり、そして村上春樹の「意味がなければスイングはない」でもブライアンについてのヒリヒリした文章が読める。あ、そうそう、ジャケットの話に戻れば、左から2番目のPコート着て山羊に餌をやっているのが彼。このアルバムは君のために書いたんだよ、ってその動物に向かって言っているかどうかは判読できない。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/09/21 08:30:22 PM コメント(4) | コメントを書く
[音楽] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: