トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2007/05/21
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カテゴリ: 読書
genjitsu
あなたと暮らしていきたい
<生活>という うすのろ がいなければ

佐野元春 「情けない週末」

■随所に挿入されるこの有名な歌詞に心から共感する度合いでいけば、わたしと穂村弘は良い勝負なんじゃないかと思う。

■恋人同士には2種類あって、それは「似ているふたり」と「似てないふたり」なんだそうだ。似ているふたりは趣味も似ていて、同じ映画を見ても、同じ音楽を聴いても、説明なんか要らない程度に好みを共有することができる。夜の喫茶店で向かいあってコーヒーを飲む時だって、イントロもあらすじも無しで、いきなり核心の話ができて気持ちもよい。

■でもさ、似ているふたりはきっと苦手なことも似ているわけだ。もしも、ふたりとも生活というものが苦手だったとしたら、どちらが晩ご飯の仕度をし、どちらがゴミの分別をし、どちらが切れた電球を買いに行くか、そんなことを考えているうちに、ああ、これからお互い、こういう事で減点をしあうことになるんだな、って途方に暮れたりするわけだ。



■いや、わかる。わかるんですけれど、やらずに済ませてしまったあれやこれやがうずたかく積もり積もって齢42才ともなれば、初めて相対する現実問題のあれもこれも、なんの気負いもなく入っていけるCDショップや古本屋みたいなわけにはいかないのですよ。

■この本はそんなパラサイト歌人、穂村弘が編集者(女性)と一緒に今までやらずに済ませてきてしまった数々のオトナ的なモノゴトを体験してみるという企画で成り立っている。献血、合コン、占い、競馬、健康ランド、大相撲見学、そして不動産屋巡り、モデルルーム見学、擬似育児体験、結婚式場巡り・・・などなど。

■”うすのろ”を”うすのろ”と感じず、ごく自然に生きていけば、誰でも10年20年単位で経験できる様々な事態をある一時期に凝縮して体験させてみせる手法はこの書の狙い通り、可笑しみなり、悲哀なり、同情なり、滑稽さなりを描写して見事。でも穂村君の興がのってくるにつれて、これはノンフィクションに似せた壮大なフィクションなのではないのかと勘ぐりたくなってくる。全ては自身のゴールインのための大いなる言い訳なんじゃないかと。

■伏線の張り方、構成の巧みさ、ラストのサプライズ。こういう感じはどこかで味わったと思ったら、これは三谷幸喜のドラマに似ている。彼の幾分反り返った顔つきがちょっと鼻につく感じに似ている。でも三谷幸喜も穂村弘もファンだからわたしは許せる。

もう他人同士じゃないぜ
あなたと暮らしていきたい
<生活>という うすのろ を乗り越えて





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Last updated  2007/05/21 09:44:16 PM コメントを書く


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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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