≪ 夏の海 ≫


       夏の海は

      人が去った夕方

 落ち着きを取り戻そうと体制をととのえ

徐々に静かになっていくさまを見るのが好きです





       ゆうなぎ・・・

     昼と夜のすき間の海

         一日でいちばん好きな海



          人の命の終わりにも似ている・・・


                               2004・7・24






















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                   ≪ 秋の海 ≫


                      秋の海には ファド が似合う




                      今にも泣き出しそうな空

                      空の想いを感じているかのように ざわめく海




                                   想い人を港に残し

                                   海へ出てゆく船乗りたちの

                                   ニ度と戻れないかもしれない哀しき運命( さだめ )を

                                   切々と歌い上げる歌

                                         ファド・・・




                              しゃがれた歌声とギターラの音色が

                              波の音とともに 暗い海の向こうに

                                    消えてゆく




                                      哀愁と郷愁が交叉する海



                                              2006・1・18



























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    ≪ 冬の海 ≫



             雪の降る海を見ていたい

             真っ白い砂浜と灰色の空にはさまれた

             チャコールグレーの揺れる空間




             降っても 降っても

             雪は一瞬にして波に包み込まれてゆく




                       海は地球の心

                       強きもの 弱きもの 儚きもの

                       すべてのものを漂わせ

                       いつもそこにある




                       なにも言わない

                       なにも語らないけれど

                       波のざわめきが いつの間にか

                       僕の心のざわめきになる 




              潮騒・・・地球の心のざわめき




              潮騒・・・僕の心のざわめき




              冬の潮騒・・・

              海の底から湧き上がる

              深き心の想い




                        行きどころのない

                            僕の

                               深い

                                 想い



                     2006・1・17





























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     ≪ 春の海 ≫



        女がひとり 浜辺を歩いている

        何かに引かれるように

           まっすぐ一点を見つめながら・・・




        視線の先には ひとりの男が

        砂浜に腰を下ろしていた




        女が男のそばへ行くと

        男は目を合わせ

        黙ったまま立ち上がった




        ふたり並んで ゆっくり砂浜を歩き始めた

           何も言わず・・・




        待ち合わせていたわけではないが

        男には女が来ることを感じていた




        ふたりは離れた場所から互いの顔を見て知っていたが

        そばへ寄ったことも 話をしたこともなかった

        それでも並んで歩く姿はとても自然だった




               浜辺に打ち寄せる波の音だけが聞こえていた




        小高い砂山に腰を下ろしたふたりは

        膝を抱えて 黙って海を見つめていた




        初めて近く向き合い 歩いたのに

        言葉はいらなかった

        波の音が互いの心を伝えてくれた




               ふたり並んでいることが当たり前のようだった




        どれくらい座っていたのだろう

        いつの間にか 波のざわめきが静かになっていた




        女の方を向いた男の目が 淋しそうに笑った

        女がうつむき加減に微笑んで まばたきをすると

        男の姿がふっと消えた




        女はしばらく ひとりで海を見つめていたが

        やがてその姿もふっと消えた




        あたりには再び静かな波の音だけが聞こえていた




            春まだ浅い

               蜃気楼のような夢・・・・



                              2006・1・21

















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