学びの泉 ~五目スパゲティ定食~

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2006.10.09
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カテゴリ: カテゴリ未分類
…2004.3.02 心の…12章第16号」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回でO君は小論文を完成します。
完成するまでに3つの苦しみを味わいます。そしてついに…


一通の小論文を完成することでO君の心の中の何がかわったのか!
そして、その変化を補助する添削者の役割とは?



 第5章■■N高校2年生後半。理系頭のO君が突然文転告白
      現国いつも10点前後、どうするんだ?!   ■■



       「文を読む」という意味がわかったぞ!”  

           -その2-


==新たな大変!!==

4通目。O君は困った顔で出しました。今度は原稿用紙5枚を越えていま
した。

O:「先生、困った。おばあちゃんのインタビューを足したら、制限字数
  を越えちゃったんだ。おばあちゃんが『今までで一番おいしかったお
  茶は、おじいちゃんが亡くなる前に、家の縁側でおじいちゃんに入れ
  てあげていっしょに飲んだお茶だった』って言うんだよ。オレ、ほろ
  りときちゃって、書いて、どうしてもそれは削りたくなかったんだ。
  そうしたら字数オーバーしちゃうんだよ」


私は機が熟したと思いました。すべてここまで狙いどおり。

私:「そうか、困ったな。字数制限なんてなければいいのにな! でもど
  れかを削らなくちゃならんぞ。よし、それじゃOが一番残したいのは
  どれだ?」

O:「おばあちゃんのこと」



O:「お茶の入れ方とうつわ」

私:「それじゃ削れないぞ。それなら削るのじゃなくて、一部カット、つ
  まり短くできるものは?」

O:「お茶の入れ方。温度とか時間までは書かなくても…」

私:「うん。それからまだ1つ問題点が残っているんだよ。この小論文は
  お茶の入れ方の解説書じゃない。コーヒーはマスターがいれてくれた
  もの。テーマのコーヒーをお茶に置き換えたとして、『お茶一杯がも
  たらす朝のくつろぎ』とした場合、『朝』はなんとかすりかえられる
  が、『くつろぎ』が一番重要な点だ」

  「おばあちゃんはなぜおじいちゃんと飲んだお茶が一番おいしいかっ
  たのか、それはおじいちゃんとお茶を飲むことによっておばあちゃん
  自身がくつろいだだけじゃなく、おばあちゃんが入れたお茶でおじい
  ちゃんがくつろいでくれた。そのおじいちゃんを感じて、おばあちゃ
  んは幸せな安心感、くつろぎをいっそう強めたんだよな!」

  「だから、おばあちゃんが『おじいちゃんと飲んだお茶が一番おいし
  いかった』と言っていたと書いてもまだだめなんだよ。するとこちら
  で字数はまだふやさなくてはいけなくなるぜ」

O:「困った。1200字で書くってのは難しいことなんですね」

私:「おいおい、最初1行しか書けなくて泣いていたヤツが何を言うんだ
  い? とにかく次回は『くつろぎ』の部分を充実させ、カットできる
  部分は思い切りよくカットして1200字以内にしてこい。」


==完成==

その後3回の書き直しがありました。O君は『削る苦しみ』を味わいまし
た。「削りたくない!」という苦しみを…

そして出した結論は、わかってもらいたいことをしぼって少なくすること
でした。また、表現する言葉づかいにも何度も手が加えられました。ぴっ
たりした表現を求めて…

書き直し7回、8通目でようやく私はOKと、合格点を与えました。その時
のO君のうれしそうな顔…



==O君が悟ったこと==

小論文に限らず、文を書くには「書く内容」を持ち合わせていなければな
りません。O君の最初の苦しみはこの苦しみでした。

持ち合わせがないときは、『取材』からです。O君の場合はお母さんとお
ばあちゃんに数回インタビューしています。インタビューするときは「何
をテーマに」を自分の中ではっきりさせておく必要があります。そして、
インタビューの内容が充実すると、今度は書く材料が多くなりすぎて、集
めたものすべてを書くわけにはいかなくなります。ここで味わうのが第2
の「削る苦しみ」です。

テーマをよく考え、字数を意識して、効果的なものから残す。不要なもの
はないのに「より効果的でない」という理由で何かを削らなければならな
い。ここで自分が一番主張したいことと、材料との結びつきの強固さを何
度も判断しなければなりません。

そして、思い切り削ったあとに第3の苦しみが待っています。それは削っ
て少なくしてしまった材料の範囲でいかにすべてを「表現するか=言葉選
びの苦しみ」です。


これらを乗り越えた作品ができたからこそ、私はO君にOKを出しました。

結局コーヒーかお茶かはたいしたことではなかったのです。おばあちゃん
が初めて孫に披露してくれた亡きおじいちゃんとのエピソード、きっと心
に秘めていたことを孫だから話してくれたんでしょうね。

お茶がきっかけでも、『くつろぎ』とはお茶やコーヒーそのものだけで得
られるものではなく、まわりの人々との意識しなくてもすむ安定したかか
わり、目の前の落ちつける光景、そしてそれらの中心に名人が入れてくれ
たおいしいコーヒーなりお茶なりがあって、それらすべての象徴がそこか
ら立ちのぼる一筋の白い湯気だったのです。テストの随筆の光景はまさに
それを描写したものでした。

そして、「行間(ぎょうかん)を読む」とは、筆者が泣く泣く削ったこと、
そして削ったからこそ削った内容を匂わす表現をしている言葉に目をやり
筆者の心を読み取って、その書けなかったものを自分の想像力で再現する
こと。



==私がO君に言ったこと==

一通の小論文でO君は3つの苦しみを味わいました。

?書くことがない苦しみ
?書くことが多すぎて削る苦しみ
?そこから生じる『表現』の苦しみ

それを克服したO君に私は言いました。

「司馬遼太郎(私が好きな作家。氏の作品はたくさん読みました)は、1つ
の小説を書くために徹底して取材し、何十冊ものノートになるだけの資料
を集めるんだ。
そして一冊の本にあらわせるのは、その取材した事柄の何百分の一だろう。
作家はみんなそうさ。

O君は小論文を完成するのに3つの苦しみを味わったろう。これで一つの
文芸作品を読むにもその背景にあった作家の苦しみがよくわかったよな。
その苦しみの上に1つの作品ができあがる。今回の自分の体験を忘れず、
著者と心を通わせて読めば、君は『著者の心』が読めるようになるだろ
う。」



==その後==

その後数回、問題集を使って1対1で『その作品を読む』をしました。問
題としてきかれていることにはそれほどこだわらず、1行1行、作者が背
景で言いたいこと・訴えたいことは何かを2人で討論していくのです。私
が「ここはこうだ」と教えてしまってはなにもなりません。O君はとても
文学的感覚が鋭敏になっていきました。感じ始めて、1つの言葉もおろそ
かにしなくなった。作者の『表現の苦しみ』がわかるからです。無駄な言
葉があるはずがない。

1行1行の討論が完了してから、そこにある問いを見ると、みなあまりに
あっけなくわかるものばかりではありませんか!

私との討論を通し、O君は『わかる幅』を広げました。もうたいていの文
章に対応できます。

その後現代国語の点は平均点+20を維持するようになりました。トップ高
の平均点+20というと、もうかなり上位です。『文転』に成算を持ったよ
うでした。



==みなさまに==

「国語力を上げる」というのは本当に時間と手間がかかるやっかいなこと
です。基礎の感覚が欠けている場合には、テクニックでなんとかなるもの
ではありません。『読むテクニック』というのは「基礎の感覚」がその子
にある場合にのみ与えて効果があるものです。

「基礎の感覚」が欠けている子にどうしたらよいか? O君に対しては、
私は一通の小論文を書かせることで3つの苦しみを味わわせ、感覚を鋭敏
にさせました。しかし、O君はトップ高ではまったく国語力がないという
ことであって、まがりなりにもトップ高に合格するだけの最低の国語感覚
は備えていたということを忘れてはなりません。

その最低の国語感覚すらないときはこうも短期に国語力を上げることはで
きません。第2章で紹介したような、地道なふだんからの努力は絶対必要
です。

そして、最低限度の国語感覚がある場合には、『小論文を書く』というこ
とで、「書く苦しみ」をとおして、どれほど多くのものを獲得させること
ができるか、言うまでもないことです。

しかし、それには『書いた小論文をどのように添削してもらうか!』とい
う大きな問題があります。添削してもらったほうが圧倒的に大きな成果が
得られるからです。

ところが、私が今まで目にしてきた多くの添削例というのは、ほとんどが
1回限りの、それも表面的な言葉づかい・表現を改めるようなものばかり
でした。1つの文には『命』が宿っています。宿っていないなら『命』を
吹き込まなければなりません。それが表面的なことだけいじるようなこと
で『添削』と言えるのでしょうか? 私はO君に対してそんな枝葉末節な
添削はしませんでした。


そこで、次回は第5章の最終回として『命を吹き込む添削』というものを
考えていきたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~(引用終わり)~~~~~~~~~~~~~


今回のテーマに直接関係するのはここまで。

この 次の号 では会が主催する「文章博士講座」に関係することが多いので、ご関心がある方のみお読みください。


尚、次の号をご紹介するのを躊躇するのは、会のHPトップにありますとおり、講座は現在受講者が満員状態で、お申し込みを受けられない状況だからです。すみません。


作文・小論文指導を通した国語力アップには、ぜすと艦長が強調されるとおり、指導者と生徒との「呼吸」が何よりも大切。そのふだんから構築された『信頼感』が、とてもモノを言います。

指導者が「その作文・小論文指導を通して、その子をどのような方向に持っていきたいのか!」その深い狙いを持っていなければ、表面をいじっただけの、たいして意味もなかったものに堕してしまうことでしょう。


私には、艦長のおっしゃりたいことが、心にビンビン響いてきました。


長文おつき合い、ありがとうございました。








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Last updated  2006.10.09 16:43:29


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