『真理子』(10)
まず両親の話を聞いてから兄ちゃんの事を話そうと
食卓のテイブルに父と母が座り、真正面に真理子が座った
「真理子」と」母が話始めた 「実は真理子に内緒にしていた
事があるの」 「武の事だけど、真理子が受験で頑張ってい
たから気が散ると思って話さないでいたの、真理子も、もう
知っていると思うけど武は高校をだいぶ前に自主退学したのょ」
「私達と武とで何度も、実は話し合いは、したんだけど」
「武の気持ちは変わらなかつたから」
「そう、そしてね武は夏までに家を出て行く事になつたの」
「鎌田の精密機械の部品を作る会子の社長さんの所に行くことに」
真理子には初耳「ええ。。何で兄ちゃんが家を出て行くの」
母は、即答を避けて 「うん、そう 今お茶を入れようね」
と立ち上がった そして父親に視線を送った
父親は真理子の顔に視線を移して、「実はね、」と
少し口ごもりながら 「鎌田に行くのは、結婚を前提にして
同棲する事」になつたんだよ」
「鎌田の社長さんのお嬢さんと、」「妊娠しているんだよ」
「一つ年上の娘(こ)なんだけど」
真理子は少し驚いた、武の部屋に度々遊びに来ていた
バイト先のK子と呼ばれていた女性でない事に
k子なら、そのような事になるのは 合点がいくのだが
真理子に取って、別に女性がいて そして妊娠までする
関係になつているなんて
真理子は思う、「そうか」そこまで決まっているのなら
武の事は話さないで済む、と 真理子が知ってしまつた事は
今更話す必要も無い
「父さんも母さんも、あちら様と話合いをして」
あちら様は「吹けば飛ぶような、町工場だけれど本人が(武)
が真面目に仕事に取り組むのであれば息子として受け入れ
たい」と、」「そうあちら様は一人娘さんで。高校を卒業
されたばかりなので、子どもが生まれたら結婚式も考えようと」「言つてくれているんだ」
真理子が受験に取り組んでいる間に、少なからず
家族に異変が起き、それも急速に物事が展開されていたなんて。
とても4人しかいない家族にとつては。重大事だつたはず
改めて両親が真理子に対する気使いの深さを、素直に受け止められるのだつた
でも、少しだけ自分が除け者にされた感じは残った
勿論真理子には、なにもする事など出来ない事なのだが
兄ちゃんは嫌いではないけど 兄ちゃんの言動を
知る真理子にとつて 好き勝手をするのは良いが
結局は大人が、両親が息子の尻拭いをしたような、そして嫌な思い
をさせ、兄ちゃんが口癖のように言つていた
「親に迷惑なんかかけないよ」と言つていた武の姿が
情けないものに移った
母がテイブルにケーキと紅茶を置いて
溜息をつきながら、呟くように言う「父さんも仕事頑張っ
てきた」「私ももう18年もお店を頑張った、学費と家を建てる為に」
「父さんも私も 自分の為でなく 武や真
理子の為にと」家族全部の為になると。。。」
母は胸を詰まらせるように、目から涙が溢れ出していた
真理子は母の顔から視線を落として
ケーキにホークを入れ、もてあそんだ 口に含むケーキの
味は 今までのケーキの美味しさは感じられなかった
父は無言で椅子から立ち上がり冷蔵庫から缶ビールのプルトツプを開けると
母の前にコップを置くとビールを注いだ
母は黙ったまま、目で「ありがとう」と言つているようだつた
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