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三人寄れば文殊の知恵
本格的な遍路として(11番~17番)
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さあ、十番から先が四国遍路の本番です。
ここまでは、いわば四国を廻るための
準備段階のようなものです。
心も体も少し整ったところで、まず四国三郎と呼ばれる吉野川へ
向かって歩いていきます。
対岸へ渡るにはかつては渡し舟を使っていたといわれて
いますが、現在ではいくつもの橋が架けられています。
かつて、明治の終わり頃までは、お金がないまま四国へ
渡ってきたお遍路さんが一番札所から歩いてきて、
食べるものもなく、寝るところもなく、十番までお参りして、
吉野川へ向かい、河原で力尽き行き倒れになっていたと
聞いたことがあります。
私が歩いている時に不思議なことがありました。
ある台風で増水した時のことです。
十番から下って吉野川を中洲に渡り、さらに対岸に進もうと
するとなんと増水のため、対岸へ渡る
潜水橋
(増水すると
水の下に入る橋)が水没していたのです。
途方に暮れました。
何しろ民家はありませんし、普段から
ほとんど通行はない場所です。
何キロも遠回りして別の橋を渡るかと思うとどっと
疲れてしまいました。
とぼとぼ戻ろうとした時、一台の車が走ってきて「乗ってくか」
と声を掛けてくれ、対岸まで送ってくれました。
その先の山麓に11番札所の藤井寺があります。
11番札所の藤井寺は臨済宗(禅宗)のお寺です。
四国霊場には真言宗でない札所がいくつかあります。
ここはもともと真言宗の寺院が荒廃していたのを禅宗の僧が
復興したと考えられています。
本堂の右から12番札所焼山寺への遍路道が続いています。
かつては遍路ころがしと呼ばれた難所でありました。
現在では、ハイキング道としても整備されており、
昔の面影はありません。
前回お話ししましたように、鳴門から食べること、寝ることに
苦しんだお遍路さんにとっては、地獄のように苦しい道のり
だったに違いありません。
藤井寺の本堂から少し歩いただけでも雰囲気を味わえますので、
少しでも足を伸ばしてください。
焼山寺までの約13キロ弱の間に3つの番外霊場があります。
まず長戸庵ここには10年ぐらい前まで、人が住んでいました。
現在はその面影がなくなっています。(と思う)
次の柳水庵まで水がありませんので水は必需品です。
柳水庵は弘法大師の加持の水が湧き出ているところです。
かつては、この柳水庵で一泊して焼山寺を目指す歩き遍路も
多かったのですが、現在では宿泊できなくなっているため、
歩きの遍路は、11番から12番を打ち抜けその麓まで
下りなければならないため、別の意味で難所と
なっているような気がします。
最近体験された方のお話をお伺いしたいところです。
焼山寺から下って13番札所大日寺までは
約30キロほどあります。
これまでの最長区間で、足にマメを作るのもこの頃です。
まず少し下ったところに杖杉庵があります。
ここは遍路の元祖といわれる衛門三郎の最後の地であります。
衛門三郎の伝説については
こちら
をご覧ください。
さらに下ると上一ノ宮大粟神社があります。
ここは13番札所の隣の一宮神社の旧社といわれています
ので、お参りしたほうがいいでしょう。
途中で私は不思議な体験をしています。
以前
ブログ
に書きましたので興味のある方はどうぞ。
また、さらに下って徳島市に入ります。
右の山手に少し登ると13番奥の院といわれる建治寺があります。
ここは弘法大師の修行場と言われ滝行場があります。
いかにもそれらしい雰囲気を漂わせています。
また江戸期のミニ八十八カ所がありますので、
興味のある方には外せない場所です。
建治寺から下りてくると13番札所大日寺です。
お泊りの宿は親切な
かどや
でどうぞ。
13番札所大日寺は大日寺というのに、本尊が十一面観音と
いうのは不思議です(本来は大日如来のはず)。
江戸時代は一宮が本札所でありこの十一面観音は隣の神社の
本尊といわれています。
ですから、隣の神社もお参りします。
ここから、17番札所の井戸寺までは札所がつながっている
(札所間の距離はせいぜい1~2キロ程度)ので徳島ではかつて
5ヶ所参りというものがあり、13番から17番までを一日で
お参りする習慣があったといいます。
16番札所辺りから徳島の町らしくなってきます。
遍路に出るときあれもこれもと荷物をたくさん持っていく
人がいますが、むしろ手ぶらでやってきて、必要なものは
現地で購入するというやり方のほうがいいようです。
不必要なものを送り返すお遍路さんの多いこと。
頭で考えるほど必要なものはありません。
この辺りまで歩いて来て、
必要と思ったものは徳島市内で買えます。
ある人から遍路の白装束でえらい街中を歩いたので
恥ずかしかったという話を聞いたことがあります。
その町は多分徳島です。
四国の県庁所在地の中で最も中心部を歩くのが徳島でしょう。
他の3都市は中心を避けるようにして
端を沿うように歩いていきます。
都市は野宿をする人にとっても危険な場所です。
野宿は避けて宿に泊まりましょう。
最近では弘法大師の道を歩くというような企画もあり、
遍路道に対する関心が高まっています。
先日も道に迷ってあらぬ方向へ歩いていたお遍路さんを車で
わかりやすい場所まで送っていったことがあります。
そのときもその人が「お大師さんの歩いた道を歩くんです」
といっていました。
しかし残念ながら弘法大師の歩いた道は
ほとんど分かりません。
何故ならば、記録がないからです。
江戸時代初めの「四国遍路道指南」の遍路道が記録に
出てくる最初のものです。
現在の遍路道といわれているところとかなりかけ離れている
ことがよく分かります。
では現在の遍路道といわれるところはいつできたか?
せいぜい昭和初期遡っても明治くらいでしょう。
何故そんなことが言えるのか?
そもそも遍路道とは何か?
現在は遍路道と呼んでいますが、もともとは生活道路です。
江戸時代初めから社会が安定するのにつれて
道路が整備されていきました。
「道指南」より34年前の「澄禅の遍路日記」と比べても
道が違っていることがわかります。
さらに、明治に入り、徒歩ではなく荷駄などが通れるよう
道が整備され、大正から昭和にかけて車が通れる道へと
変わっていきます。
最近は特に自動車が大量に通行できる道路へと転換しつつ
ありますので、歩いて巡拝する方にはきびしい状況に
なりつつあります。
全長2キロという歩くにはあまりにも恐ろしい長さの
トンネルもあります。
また、山肌を削っているため、真夏などは日差しと照り返しの
2重苦に悩まされます。
一方山道を通る場合にも問題があります。
本来使わなくなった道路は自然に帰すのが本筋です。
地球は人間のためだけのものではありません。
現在遍路道の復興と称して新たな遍路道を切り開いたり
整備していますがこれが新たな自然破壊に
つながり問題になっています。
全部を歩くのではなく公共交通機関を併用しながら
お参りするのがベストと私は考えますが
いかがでしょうか?
昨日
マスクM
さんより、四国遍路が土佐(高知)を外して
三角参りをしていたという話がありましたので、
それについてお話します。
江戸時代になって諸国の道路が整備され、また
真念法師
に
よって四国遍路が紹介されることにより、当時としては
爆発的な高まりを見せました。
ところが土佐は藩の財政が苦しく農民には質素勤勉をしいて、
年貢も重かったといわれています。
そのため、他国の風習や情報を知らせたくない状況に
あった様です。そのため藩は遍路に厳しい規制をしました。
1、遍路は各霊場をつなぐ指定の道以外のわき道に
入ってはいけない。
2、通常の往来手形以外に土佐の「添え手形」が必要。
3、滞留の制限
4、霊場以外に参拝を認めない。
5、宿は指定場所のみ許可。
土佐では川留め(大雨により川が渡れない)になっても
いちいち許可を取らねばならず、病気になっても宿も自由に
借りられないのでした。
「土佐は鬼国、宿がない」と言われ、いつしか土佐16カ寺を
除いて廻る3カ国参り、あるいは伊予南部の4カ寺と
土佐16カ寺を除いた3カ国参りが行われるように
なったといわれています。
ちなみに現在は土佐もお遍路さん大歓迎です。 素光
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