売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2025.11.20
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長くファッションの世界で仕事してきたので私は政治家との接点はほとんどありませんでした。偉い人との面会は超苦手なので良かったんですが、前職官民投資ファンド社長時代は業務上どうしても政治家との面談が必要、たくさんの国会議員や大臣と面会しました。

クールジャパンを推進するために国会の承認を経て設立された会社ですから当時の与党自民党、公明党と法案を賛成した民主党の3党の関係議員にご挨拶や説明、党本部や議員会館にもよくお邪魔しました。国会議員の中には私たち民間人に対して優しい目線で接してくださる方もいれば、正直言って上から目線で高圧的な態度の方もいらっしゃいました。

優しい目線の政治家という点でいまも印象に残っている方は、当時自民党政調会長だった高市早苗さんと初代クールジャパン戦略担当大臣だった稲田朋美さんです。

クールジャパン機構発足時、私たちは伝統的な折り紙に新会社の概要を印刷、かわいい折り紙セットを皆さんに配りました。高市さんに折り紙セット数部差し上げたら「いただけるんですか」とまるで少女がご褒美もらったときのように目を輝かせて受け取ってくださいました。

稲田さんを大臣室に訪ねたときはソファ横のテーブルに雑誌装苑が置いてあったので「大臣は装苑をお読みなのですか」と尋ねたら、「(ファッション業界の)社長がいらっしゃるので読みました」。嬉しいじゃないですか。このとき稲田さんが身につけていたソマルタの網タイツは福井県鯖江市(稲田さんの選挙区)の工場が生産していると説明したら、とんでもなく大喜びでした。

お二人とも自民党の中では右寄り保守派と聞いていたので怖そうな女性政治家と覚悟して出かけましたが、面談ではそんな感じは微塵も感じさせませんでした。

高市さんは、私の息子が大変お世話になった目白デザイン専門学校(現在は目白ファッション&アートカレッジ)小嶋禮子校長が東京の母親代わり。どういう経緯でいつ頃からそうだったのかは存じませんが、人格者の小嶋先生があれこれお世話した方ですから上から目線のお偉いさん(結構こういう政治家多いです)ではないはず。娘のような高市さんが日本政治史上初めて女性総理大臣に就任されたのですから、小嶋先生はあの世できっと喜んでいらっしゃるでしょう。

先日の国会委員会での高市総理の台湾有事に関する「存立危機事態」発言、歴代総理大臣が決してストレートには発言してこなかったことをはっきり答弁されました。これに中国政府はすぐ態度を硬化させました。在大阪中国総領事のSNSでの発言に始まり、中国人の訪日旅行や留学自粛勧告、日本アニメ映画の中国内上映停止、日本産水産物の輸入禁止と連日緊張はエスカレートしています。



1年前現地で開催されたセミナー

そして、来週私が講師を務める予定だった江蘇省蘇州市でのセミナー、上海市でのミナペルホネン皆川明さん出版記念イベントも主催者の判断で中止になってしまいました。すでにセミナー投影資料を送り、中国語に翻訳してもらい、
残念です。

政治家の発言から重大な外交問題へと発展、中国人の訪日旅行や留学不可、アニメや映画など日本コンテンツ上映不可、日本産品輸入禁止が発令され、この先もさらに日中経済を揺るがす追加発令が出そうな空気があり、ここ数年中国ファッション業界人と親密に交流してきた私にはほんとに悔しいこと。

この事態に対してSNSでは一般日本人がヒートアップ、「中国人インバウンド客が減少するから静かになる」、「中国インバウンド消費は必要ない」、「日本産品の中国向け輸出はいらない」などといった書き込みが増えました。これらを目にするにつけ悲しい思いでいっぱいです。

私の渡航がキャンセルになったことはどうでもいいことですが、やっと輸出が再開されそうだった日本の漁業関係者、フライトや宿泊キャンセル多発の国内観光事業者、インバウンド需要でコロナ禍の負けを取り戻しつつあった全国の小売事業者、また現在中国駐在してビジネスしている日本人や現地の日本食レストランなど痛い目にあう人は相当な数でしょう。さらに為替軌道修正したかったところこの問題でますます円安になって物価上昇が止まらないかもしれません。

それを「ざまあみろ」論調でSNSに書き込む日本人が少なくないことが残念でなりません。中国にしろ韓国にしろ日本は隣国各国ともっと仲良く友好関係を保つべきでしょうし、世界の人々から「訪問したい国」として見てもらいたいと思うのですが....。


セミナー開催予定だった蘇州近郊陽澄湖

私が議長していたCFD東京ファッションデザイナー協議会は韓国ファッション業界に色々アドバイスし、韓国で「ソウル・ファッションウイーク」が始まりました。そのオープニングイベントで壇上に上がった私は韓国業界首脳を前にはっきり申し上げました。「日本と韓国は近くて遠い国、お互いの努力で距離を縮めませんか」と。スピーチから席に戻ったら業界大先輩に「太田くん、際どいこと言うね」と笑われました。

ファッションを通じて国際交流できればとCFDを立ち上げたのですから、私の役割はその遂行です。が、各国の関係者とは正直に話し合い距離を縮めるのが一番と信じてストレートに際どい挨拶をしました。

政治外交の専門家ではないので私にはよくわかりませんが、日中両国政府が1日も早く和解して正常な文化経済交流に戻ることを期待したいです。





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Last updated  2025.11.22 18:58:07


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