売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2024.05.11
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1年に2回開催されるJFWプレミアムテキスタイルジャパン展がいつもの有楽町国際フォーラムで今週開催されました。エントランスを入ってすぐ元経済産業省繊維課長だったKさんと久しぶりに再会、しばし中国業界のことなどお話ししました。



Kさんはこれまで4回もパリ駐在を経験、役人人生の半分以上はパリという珍しいお役人、頭が柔らかい人です。私がクールジャパン政策を推進していたときはJETROパリ所長、投資先のファッションブランド45Rのパリショップ開店時に奥様ともども来てくださったことを思い出します。現在はJETRO本部の大幹部、その国際経験を活かして日本の優れもの、美味しいもの、カッコいいものをもっとたくさん世界各国に売り込んで欲しいですね。

会場でKさんや業界関係者に中国事情をお話ししたのは、日本素材はこれからいったい誰に売るのかをマーケティングし直す時期が来たのではないかと伝えるためでした。プレミアムテキスタイル展の回数を重ねるうちに業界事情は大きく変化、市場環境も変わりました。そろそろどういうバイヤーを戦略ターゲットに売り込む素材見本市にするべきなのか再検討する時期に来ていると思うからです。



長い間、ファッションデザインの世界ではパリコレや同時期開催の見本市参加がブランド側の大きな目標でした。テキスタイルの世界ではプルミエールヴィジョン展あるいはインターストッフ展への参加が世界への扉だったでしょう。こうした日本のヨーロッパ重視の構図はいまも変わらないのでしょうが、私たちは中国市場の規模の大きさやファッション事業化に目覚めた中国新興アパレルの成長力、そして彼らのものづくりにおける上昇志向つまりもっといいものを作って世界市場に攻めたいという思いを注視すべきではないでしょうか。

消費市場でも、ロンドン、パリ、ミラノ、ニューヨークのラグジュアリーブランド直営店やハイエンド百貨店で大量のブランド商品を購入しているのはアジア系ツーリスト、彼らの購買力は現地消費者以上にすごいものがあります。日本でもコロナ禍が終わって復活したインバウンド消費が国内景気に大いに貢献し、都心部の消費回復は彼らの存在が大きいと言えます。この数か月の動向を見るとアジア系はなにも中国本土からの旅行者のみならず、香港、台湾、韓国からの旅行者の消費パワーは大きい。でも、依然日本は欧米偏重のまま、アジアを低く見ていますよね。果たして今後もこれでいいのでしょうか。




(以上4枚、プレミアムテキスタイルジャパン展)

中国の業界事情も変わりつつあります。この数か月交流してきた中国アパレルメーカーの経営者たちの中には、もっと上質な素材を起用して付加価値性の高い商品を開発、将来的には欧米市場や日本にも販路を広げたいと考える経営者は少なくありません。また、私がセミナーでよく口にする「ブランドDNA」を真剣に受け止め、その糸口を見つけたいと何度も質問する経営者が何人もいます。彼らは安いものをたくさん作ってただ売上を狙うだけの経営者タイプではありません。

もっと魅力的な商品を開発して将来世界に打って出たいと考える中国アパレルの経営者たち、実は案外日本素材の素晴らしさをきちんと認知していません。もし彼らが日本国内の素材見本市に参加するテキスタイルやニットメーカーの製品に触れたら理解は早いでしょうし、どこに行けばそういうものを手にすることができるのか情報提供すれば喜ぶのではないでしょうか。昨年後半から再び中国業界首脳の訪日研修団が急増していますが、彼らに日本製素材の情報を伝えたら、訪日スケジュールを素材見本市に合わせて組むことだって可能でしょう。


(広州発祥の婦人服ブランドは海外進出を積極的に推進)

欧米のラグジュアリーブランドは日本製素材をたくさん使っています。ヨーロッパの素材見本市で依頼のあったサンプル生地をたくさん渡す(中にはサンプル収集だけで注文に至らない例はたくさんあるでしょうが)のも悪くはありませんが、ものづくりに前向きな中国アパレルの経営者や企画責任者を日本の素材展にどうしたら迎えることができるのか、具体的アクションを起こすべき時期が来ているのではと思います。

このところ中国人ビジネスマン相手に東京で、中国でセミナーを続け、彼らと意見交換する機会が増えたので、そろそろ日本は欧米偏重からアジア強化にシフトすべきタイミングでは、と考えるようになりました。人口多いからマーケット規模は相当大きく、経営者は結構真面目で研究熱心な人が多いんです。セミナーだって質問は量も質も日本企業の比ではありません。いかがでしょう、中国市場に日本素材を思い切り売り込んでは....。





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Last updated  2024.05.11 17:45:53
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