今回読んだ作品は、重松清さん著『ナイフ』
テーマは「いじめ」、4作からなる短編集。
この作品に出てくる主人公たちは皆、
こっちがつい目をそらしたくなる程 とはいっても本だが(笑
酷い「いじめ」を受ける。
加えて、その全てのいじめの内容が実際にあるような陰湿でジメジメとした物で描かれ、
一人の高校生として、呼んでいて胸が痛くなるシーンが多々あった。
4作とも、キャラの心情がとてもリアルに描かれていて、重松さんらしいものだった。
一応俺は高校生。もちろん小学校、中学校と卒業してきた普通の学生。
幸運にも、小学時にいじめを見る事はなかったけれども、さすがに中学で無かったとは決して言えない。
カッコいいのか悪いのか、俺はマンガみたく「いじめ」の現場で止めに入ったことが何回かある
いうまでも無く、俺はそんな事をしてもおかしくないようなクラスでは明るい(変な?)バカ役を担当する生徒だった。
よくあるのが、ここで止めに入った子が次の標的になるというもの。
だけど、実際そんなことはない。
いじめられる子には必ず理由がある。それも必ず修復可能な。
いじめっ子は例えの話だけども、障害者の子を酷くいじめるような事はしない。
それはその子の悲しいけれど「運命」であって、決して途中で曲げられるような事じゃないからだ。
では、誰をいじめる?
例えば、誰に対しても生意気でいつも強がっている子
例えば、よく嘘をつく子
例えば、いつもモジモジしている子
こんなのは本人の頑張りでいくらでも治せる。それを直さないからいじめられてしまう。
確かに性格なんかは急に直したところで、周りにからかわれることも最初はたくさんある。
でもそんなのは最初だけ。収まったころには何もないはず。なんてったって、いじめる原因がない。
「性格は変えられない」なんて頼むから言うな。
その人が頑張れば、少なくとも変えたいと願えば、いくらでも性格は変えられる。
変えた本人が言うんだから信じてほしい。
最近の子は意外と大人で というかカッコつけばっかで
、正当な理由が見つからないようなことはしない。
さらに、相手に正論を並べられると、意外と素直だったりする。少なくとも俺らの時代はそうだった。
だから、つねに自分を磨こうとすること。それだけで、いじめは案外すぐに無くなったりするのだ
。
この本に出てくる主人公たちには何かが足りない。
それは「勇気」だったり、「親友」だったり、「我慢」だったり、「関心」だったり・・・
誰もが「自分に何が足らないか」を考えるときがあると思う。
その時、ちゃんと不足部分に気づける事が、それを直そうと努力することが、周りに慕われる「いい人」になる何よりの条件。
どうか、その自分探しの最初の一歩に読書を選んでくれると嬉しい。
本だって慣れてみると、意外と可愛い物である(笑
タイトルにもなっている短編「ナイフ」で父親が露店でナイフを購入する際の会話
『「これで、人、殺せるかな」
男は少し考えてから「タブンネ」と言って、黄ばんだ前歯を剥き出しにして笑った。』
ここは父親の気持ちがこの一言ですごくわかる。
小さかった時、人なんて殺せるわけが無いのに、エアガンを買ったときに感じた高揚感と優越感。
あの不思議な感覚。友達のした凄い事を友人に自慢してるときの感覚に近い。
その感覚を予感させるこの一会話を描けるのは、やはり重松さんの特徴と言えるかもしれない。
「the sky crawlers」シリーズ Jun 1, 2007 コメント(4)