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2026.09.27
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カテゴリ: その他
大学生の頃、「キリスト教研究会」なるサークルがあった。

何を目的に、どんな活動をするサークルだったのかはよくわからない。
ただ、大学一年の春、新歓の学生で溢れるキャンパスで。いかにも大学生っぽいニヒルな煽り文と、なんとも言えないクオリティのニーチェのイラストが添えられた、A5サイズくらいのビラを貰ったことを覚えている。活動内容は一切書かれておらず、ビラを配っていた学生も勧誘らしい勧誘は全くしてこなかった。ただ手にあるものを、他のサークルの学生達に混じってのんびりと配っている、という感じであった。

私はそのサークルに、無性に興味を惹かれていた。
キリスト教に縁もゆかりもなければ、研究したいことがあるわけでもない。仮に私にそれらがあったとしても、本当に何かを研究しているのかどうかも定かではない。勇み足で入ったとして、実になる活動ができるとはおよそ思えない……今にしても失礼な感想ではあるが、少なくとも貰ったビラを見た限りでは、「キリスト教研究会」とはそんな印象のサークルだった。
しかし、大学生になりたての私にとって、「何をやっているのか全くわからない謎のサークル」というものは、なかなかどうして魅力的に思えたのだ。ようは「謎のサークルに所属し、よくわからないけど何か大学生っぽいことをする私」に憧れていたのだろう。

まぁ動機はどうあれ、そこまで興味があったならば入る一択で良かったはずなのだが、私は結局、キリスト教研究会に入ることはなかった。
理由は色々あるが、一言で言えば「よくわからない場所に飛び込んでいくだけの度胸がなかった」のだ。我ながらなんともつまらないことである。

全く別の、やや硬派なサークルに入り二年ほど続けたものの、そこでの活動や人間関係に疲れて、途中で辞めてしまった。


とある休講日の昼間、部室にはおそらく後輩と思われる女子学生が一人だけだった。容姿などはもうすっかり忘れてしまったが、かつて新歓でビラを配っていたような、のんびりとした雰囲気の学生だったように思う。
彼女は突然現れた、それも明らかに新入生ではない私にしばらく胡乱な目を向けていたが、私が入部を検討していることをしどろもどろに伝えると、それなりに歓迎してくれた。

私は、入学当初からずっと抱いていた疑問を彼女にぶつけてみることにした。
すなわち、「キリスト教研究会とは何を目的として、どのような活動をするサークルなのか」ということである。
活動内容もよくわかっていないくせに、おかしな時期に入部希望だと訪ねてくる三年生 という存在は、彼女からするとさぞかし奇怪な存在に映ったことだろう。
はたして彼女は答えてくれた、「なんか、よくわからないですね」と。

なんと、「何をやっているのかよくわからない」と思っていたキリスト教研究会は、当の本人達にとっても「よくわからない」サークルだったのである。これはカルチャーショックだった。

彼女は「入部希望ならいつでもどうぞ」と言ってくれたが、私は猛烈な気まずさを覚え、曖昧に言葉を濁して部室を後にした。上手く表現できないが、とにかくショックだったのだ。自分がこのサークルに所属して楽しくやっていけるビジョンが全く見えなかった。

多分、わたしは「よくわからない」ものに憧れを抱きながらも、内実はそうでないものを期待していたのだろう。「よくわからないと思っていたけど、勇気を出して飛び込んでみたら、なんてことはなかった」……そんなありふれたストーリーを自分の中で勝手に作っていたのだ。

部室にいた彼女は、「よくわからない」をそのまま受け入れ、ただのんびりとそこに座っていた。
思うに、あの部室には「よくわからない」の世界がすっかりと構築され、完成していた。その完成された世界に足を踏み入れることが、三年生になってしまった私には最早できなかったのだ。




人生のたらればを考えたところで何が変わるわけでもないし、私という人間の凡庸さを省みれば、たとえどんな選択をしたところで大した違いはないであろうことは想像に難くない。
それでも時々ふと、「謎のサークルに所属し、よくわからないけど何か大学生っぽいことをする私」を夢想することがある。もし、三年生のあのときではなく、一年生のときにあの部室を訪ねていたならば。私も部室にいた彼女のように、「よくわからない」の世界の住人になれていたのだろうか。まぁ私のことなので、結局馴染めず、同じ未来を辿ったかもしれないけれど。

後悔と呼ぶには軽すぎるが、全くどうでもいいと言えるほど消化できてはいない、そんな思い出だ。









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最終更新日  2026.09.27 01:41:00
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