南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

(6)日曜パザール見学


半日ガイド体験記 (2004年6月の記録)

 ∬第6話 日曜パザール見学

グループが博物館から出てくる前に、運転手と簡単に打ち合わせをした。
珍しい双子の運転手で、交替で運転しているのだという。アンタルヤは本当に久し振りで、道が前とは随分変わってしまったとこぼした。
グループが出てくると、バスに乗り込んでもらい、パザールになるべく近い場所で降ろしてもらうことにした。
私は運転席の横の補助席に腰を下ろし、道案内をしながらマイクを握る。
バスを降りるまでの間に、紹介しておきたいことがいくつかあったのだ。

毎日異なる何箇所かの地区で、パザール(青空市)が開かれていること。
市民のほとんどはそのようなパザールで一週間分の野菜や果物をまとめ買いすること。
一度に2キロ3キロと買うので、総重量は大変なものになり、よってパザールでの買い物は男の仕事でもあること。
アンタルヤは野菜や果物の主産地で、トルコ全国に運ばれていること。
とりわけ、トマト、ピーマン、キュウリ、茄子などの夏野菜やオレンジが有名であること。

そして必ず必要な、身の回り品への注意も。
最近は、パザールで安いお土産が買えることを知った外国人観光客が、結構パザールを訪れるようになっていて、それに伴いスリが激増しているのだった。

5分も話さないうちに、あらかじめめどをつけておいた降車地点に到着した。バスはその場で待つことは出来ないので、回送となる。
道路を横断し、大通り沿いの銀行の脇でいったん集合時間を決めて解散とした。
狭い小路の奥には、もうパザールのテントが見えている。
私や横田さんも含めて総勢17人の日本人グループは、散り散りバラバラになりながら、奥へ進んでいった。

真っ赤な切り口を見せて並べられたスイカや、甘い芳香を放つメロン、がくを剥いて水に晒されているアーティチョークや桑の実など、ひとつひとつに目を留めながら、ゆっくりと歩みを進めていった。
案内する側としては、お客様の表情が常に気になる。ざっと見回すと、皆楽しそうでホッとした。
横田さんもお客様と一緒になって、新鮮な野菜に眼を凝らしている。実は、トマトを買って行ってピクニックの時に出そうかと考えていたのだった。
私は、トマトよりデザートのフルーツの方がいいのではと勧めたが、フルーツはホテルの朝食でさんざん食べているのだという。出はしりのスイカや、今を盛りのアメリカンチェリーなども勧めたが、気が乗らないようだった。

お客様の中には、サフランを頼まれたという方がいらした。
意外にも、トルコのお土産としてサフランを買っていかれる方が多いと聞く。トルコにおけるサフランの産地としてはサフランボルが有名だが、スペイン産ほど良質なのかどうか、私にはよく分からない。価格は100g、5ミリオン(約400円)である。
おそらく値段からいったら、随分安いのだろう。一人が買われると、何人かが釣られてサフランや粒コショウなどを買い求められた。

他にもイチゴを買われたり、サンダルを買われたりした方がいて、パザール体験はまずまず成功であった。
集合場所に皆が揃ったところでガイドのビルゲさんに運転手に電話してもらい、降車地点までバスに迎えに来てもらった。
バスに全員が乗り込むと、私はお客様の反応を聞いた。
「皆さ~ん、パザールは楽しかったですか~?」
「ハ~イ!」明るい声がバスの中に響いた。

次は、我が家へ向かう。
ここで私は、苦しい言い訳を試みた。
トルコの女性は常に家の中をピカピカに磨いていて、仕事を持つ女性であっても、その点にかけては手抜きはしない。主婦ともなれば、掃除や料理は趣味の範疇で、冷蔵庫の中といわず扉といわず、オーブンの中といわず扉といわず、戸棚の扉の取手ひとつまでピカピカに磨きたてているのが普通だということ。
しかし、生憎私は日本人で、おまけに掃除嫌いの整頓嫌いときている。今日は掃除する暇がなかったので、散らかっているが、眼をつぶってくださいと。

しかし、救いの神は必ず現れる。
目加田さんが泊まりに来てくれたお陰で、今頃彼女は洗いものや片づけを私の代わりに済ませてくれているに違いなかった。

 (つづく)

∬第7話 車内ガイディング


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