中年よ、大志を抱け!

中年よ、大志を抱け!

童貞



さあ、恋愛についてです。
しかし、いいですねぇ、この語感。恋愛・・・。なんか、はなやかな、そして密やかな、ちょっと照れるような、そんな気がします

さて、ここでは、恋愛はこうあるべきだ、なんて事を書こうというわけじゃありません。恋愛論など僕には出来ませんからね。

じゃあ何を書くかっていうと、「恋愛」そのものじゃなくって、恋愛する以前や最中、以後にあった、いろいろな恋愛にまつわる物事や気持ちの変化など、つまり、タイトル通り「恋愛の周辺」について書いて行こうと思っているわけです。

というわけで、最初からいきなりですが、タイトルは「童貞」です。

10年くらい前のある日、床屋に置いてあった週刊誌を読んでたら、「30歳になっても童貞だなんて、気持ち悪~い」という女子大生だかOLだかの意見が載っていました。

僕はその時29歳。「ええ?童貞だと気持ち悪いんか?」と驚きました。僕も「童貞」でしたから。

その頃僕は土木関係の仕事をしていて、女ッ気なんて全然ありませんでした。

学生時代は、特定の女性と付き合うという事はありませんでしたが、僕の部屋は友人達の溜まり場みたいになってたんで、女ッ気は結構あって、男女入り混じって何人かで友人達が泊まりに来たり、時々はみんなで遊びに行ったり、たまには一対一でデートに行ったりしてましたが、女性と深い関係になるということはありませんでした。結構古いかもしれませんが、当時の僕は、親に養ってもらってるうちは、そういうことはしたくない、と思っていたからです。

もしかしたら彼女達は、僕が絶対に手出しはしない、という態度だったし、そのため人間関係の複雑さもありませんでしたから、気軽に遊びに来たりデートに行ったりすることができたのかもしれません。

まあ、そんな訳で、軽いキスくらいした人はいましたが、最後の一線を越えるってことはありませんでした。

そうこうしてるうちに卒業、就職、転職、と月日は進み、気がついてみたらすでに29歳。工事現場で女ッ気の全く無い仕事にいそしむ日々だったわけです。

適度に周りに女性がいるとあまり感じ無いのですが、ああ女ッ気がないと、そして、友人達が次々に結婚し出すと、「彼女くらい欲しいな」などと思ってしまうもんです。

そういう時にその週刊誌を見たわけです。

う~~~ん・・・考えましたね。このまま土木作業員としてずっと過ごし、女性との出会いもなく、恋人も出来ず、結婚もしないまま歳とって行くのか・・・って。

せめて「経験者」くらいにはなっておいた方がいいんじゃないか・・・なんて思ったりしましたね。僕も健康な男ですから、女性に興味が無いわけなんてわけありませんでしたから。Hな本やビデオなんかも見てましたしね。

しかし、「経験者」になるということは、相手があってのことですから、そうそう簡単にいくってもんじゃありません。

学生の頃よく会ってた女性は、ほとんどが結婚してましたし、結婚してない人とそんなことしたら、即結婚ですからね。

そんな時、仕事先で知り合ったおっちゃんが、「兄ちゃん、今度わしら忘年会でお風呂行くんやけど行かへんか?」と言ってきました。そのおっちゃんの言うお風呂って、いわゆるメンズバスのことです。僕の街からちょっと行くと、その世界では超有名な「K園」というメンズバス街があって、そこに行かないか?という事だったわけです。

僕は、「ああ、そうですか。俺も一度くらいは行っとこうかな」と雰囲気に押されて言ってしまいました。

その日が近づいてくるとなんとなくソワソワして来ました。この歳になってやっと童貞とおさらばか、とか、ええんかな、こんなんで、とか、そりゃ興味がない訳ないんで、行っとこうと思う気持6割、でもやめとこかな、と言う気持ち4割と言う感じで、いろいろ思ってた訳です。

しかし、幸か不幸か、約束の日の3日前に会社の現場監督から、「すまん、すまん、明日からお前○○の現場に行ってくれないか?」と言われました。○○は遠い所で、泊りがけで1週間ほど行ってこなければなりませんでした。

僕は、誘ってくれたおっちゃんに、「すいません、急に○○行かなきゃいけなくなっちゃって、お風呂はやめときます。残念ですけど」と断りましたが、内心は「これでいい、これでいい」と、実はほっとしてました。

やっぱり「愛」がある相手とそういうことをしないと、後で大変な虚しさを感じるかもしれないと思ったし、僕みたいな人間は、一度「おんな遊び」をしちゃうと、ダダ―ッて行ってしまうかもしれないと思ったし、そういう目で女性の友人を見てしまうかもしれないと思ったし・・・あと、ちょっと気恥ずかしいですけど、自分では自分に対して一応の理想像を持ってたので、それには女遊びは似合わんなぁ、と思ってたってこともありました。

とはいえ、他人に僕の価値観を押し付けるつもりはないわけです。だからそういう所に行く男性を「ろくでもない奴」だとかとは思いませんでしたね。現場のおっちゃん達、結構好きでしたしね。でも、雑誌をはじめマスコミでは、いい歳をしてそういう経験を一つもしてないのはちょっとね、ってな感じで取り上げてるような雰囲気があるように思ったので、それに対しては、どうかな、とは思ったわけです。実際、「30歳で童貞じゃ気持ち悪い」と言われちゃうと、話半分としてもちょっと動揺してしまったですしね。僕、その頃は結構マスコミに流されやすかったんです。

今は性に関する情報が手軽に手に入る時代です。コンビニで買える少年雑誌や少女雑誌にだって、その手の話題をおりこんだマンガが載ってますよね。インターネットもそうですし。しかし、「やりたい盛り」の青年に、おおっぴらに見せるべきじゃない情報が多すぎるように思いますし、そういう情報が、いつまでも童貞だと、いかにも「普通じゃない」ように感じてしまう雰囲気をかもし出しているように思うのですが、それは大きな問題だと思うわけです。

僕は決して性を商品化してはいけないなどと言ってるわけじゃありませんが、むやみに商品としての性情報を誰彼構わず提供するのは問題だと思うのです。生殖本能は強烈な本能ですからね。特に青少年層には、性に関する温かみに満ちた、科学的な、そして深い精神性に基づいた情報が、もっと必要だと思うわけです。「30歳になってもまだ童貞だなんて、気持ち悪~い」と言うような情報の提供のしかたは、大げさに言えば、人間の尊厳に関わるような問題だと思うのです。

そういえば、昔読んだ坂本竜馬の伝記小説に、彼が「志を立てるまでは女体に触れない」と決心した、と書いてありましたが、そういう気持ちも大事なことだと思います。一部のお坊さんや修道士や修道女などの人達は、一時期、または一生、そういう経験をしないと誓ってるわけですが、彼らや彼女達は、別に気持ち悪いわけじゃないですよね?・・・その決意の内容がどうこうっていうんじゃなくて、そういう人達もいるって事が言いたいわけなんです。つまり、いろんな人がいるってわけです。

・・いいですよね? いろんな人がいて・・・だから、マスコミに対して、そうあおるなって言いたいわけです。

まあそういったわけで、結婚するまで僕は童貞のままでした。そして、だからこそ、だと思うんですが、初めて経験した時、単に経験したというだけじゃなくって、さまざまな面ですご~~く感激したわけです。

もしあなたが現在30歳にして童貞だったとしても、断言しますが、別に気持ち悪くはありませんよ。そんな事言う奴はほっといたらいいんです。あの手の雑誌に書いてあることは、話半分未満で受け取っても多すぎるくらいですからね。

では。



© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: