中年よ、大志を抱け!

中年よ、大志を抱け!

インキン



今回取り上げる内容は、インキンなどという下卑たことで、恋愛の大事な場面を左右されてしまったと言う間抜けな男…って、僕ですけど…の話しです。でも、インキンに限らずこういった生理的と言うか、肉体的なことって、恋愛に大きな影響を与えませんか? 「わきが」なんてのもそういうものだと思いますし、いつもお腹の具合が良くないってのも当人にとっては非常に重大な問題なんです。昔、「傘がない」なんて井上揚水さんが歌ってましたけど、傘くらいならまじめな歌の題材になるかもしれませんが、インキンごときはアホ話以上にもなれないと言う感じです。でも、繰り返しますが、当人にとっては重大なわけです。

というわけで・・・

インキン・・・「いんきんたむし」とも言いますが、もう、とにかく、すごく、とっても、気が狂うかと思うくらい痒いんです、これが。

中学の時、僕は剣道部だったんですが、「気をつけないとなるぞ」と先輩に言われてました。もちろん気をつけていたんですが、3年生の夏、ついになっちゃったわけです。

汗をかいたら、あとで股がムレたりしないようちゃんとシャワーを浴びるなり風呂に入るなりするようにしてたんですが、ある時強烈に股に痒みを感じ、見てみるとなんだか股の付け根がかさかさっとして白っぽくなってるじゃありませんか。

「どうしたんや?これ!」、、、最初はびっくりしましたね。蚊にさされたところを掻き過ぎたのかと思いました。

それで、ムヒをつけたんですが、、、治りません。キンカンをつけるとヒリヒリするばっかりです。

これはきっとインキンっちゅうやつや、と思いましたが、恥ずかしくて両親には言えません。

それで一人でこっそりと薬局に行きました。

それが、ですよ。狭い田舎の町でしたから、薬局のおじさんは同級生の女生徒のお父ちゃんなわけです。それで、僕がインキンである事がばれるんじゃないかと思って、店の中まで入ったものの、「インキンにきく薬下さい」とは、よう言えませんでした。

しかたなく、いかにも親に頼まれたかのようなふりをして、「父が水虫なんだそうですが、水虫の薬ってどれでしょうか?」なんて言ってしまいました。

薬局に行く前に、家にあった辞典でインキンを調べたところ、水虫と同様ハクセン菌によって起こるものだと言う事を知っていたからでした。

すると薬局のおじさんは、「水虫?ジュクジュクなの?それともカサカサなの?」と聞いてきたので、「あのう、かさかさで、ちょっと白っぽくなってるみたいです。」と、僕は自分のインキンの状態を答えました。

おじさんは、「それならこれがいいよ」と、塗り薬をくれました。

家に帰り早速毎日塗りつけ、汗で蒸れないように風通しを良くして・・・つまり、パンツのすそを持ち上げて扇風機でフーフーした訳ですが、・・・その甲斐あってか、秋になる頃にはなんとか治ってくれました。

これが、第一回目のインキン体験です。この時には恋愛の「れ」の字もありませんでしたが、この十数年後、恋愛に関係大有りの事態になっちゃったわけです。

それは8年ほど前の事でした。どうした訳かまたインノウと股の付け根が痒くなってきました。これには弱りましたね。もういい大人なのに、こんなとこ痒くなって、と。

とにかく人と話をしていても強烈に痒いわけで、「ちょっと失礼します」とか言ってトイレには入り、ガシガシ掻くっていう事もありました。車の中でも運転しながらガシガシです。夜も布団に入ってしばらくは痒さで眠れませんでした。

前回の経験から、水虫の薬が良いはずだと思っていたので、薬局に行き、適当なものを買ってきました。

家に帰ってから効能書きを読んでみると、「インノウ」にはつけないように、と書いてありました。インノウって、つまり、袋の部分の事です。

しかし僕は、それほど強烈なんだから良く効いて、すぐに治るはずだ、と塗ってみました。ペースト状のじゃなくて、液体状の奴です。

「グゥワーッ!!!!」でしたわ。痛いの痛くないのって、もうめちゃめちゃ痛いんです。焼けるような痛さでした。それに、もしも使い物にならなくなったらどうしよう?ってなことも思わせられました。

しかし、その強烈な痛さの中で、僕は、コンだけすごいんだから、絶対にこの薬がハクセン菌を殺してくれてるはずだ、と悲鳴に近い期待を寄せて喜びを感じていました。

やがて痛みは治まりました・・・が、次の日、また痒いじゃないですか。痒いだけじゃなくってちょっと痛みもありました。

しかし僕は、ハクセン菌は生命力が強いと聞いていましたので、これでもかっ、と薬を塗りました。また「グゥワーッ!!!!」です。

そんなことを何度か繰り返すうちに、すごい事になって来ちゃいました。インノウがただれてきて、一部分は出血まで起こしてしまったのです。

こりゃやばいなと思いましたね。さすがに。

当時愛知県に住んでいた僕は、青森の女性と文通をしていて、その人に会いに行く直前でした。約40通の文通のやり取りの末、僕達はお互いに、場合によっては結婚を考えてもいいという雰囲気だったんです。

遠いところをわざわざ会いに行くのですから、さまざまな場面を、やっぱり想像していました。

ところが、このインノウ事件です。どんな場合になっても、スッポンポンになるという事態だけは避けないといけません。「なにこれ?病気?」なんて事になったら大変ですからね。第一、痛いし。それに、結婚するまでは、そういう事しない方がいい、と、古いかもしれませんがそういう思いもありましたし。・・・でもそっちの方は、遠距離恋愛という状態でしたから、それなりにそういうことも重要な場面だとは思っていましたけどもね。・・・とにかく、いろんな思いが錯綜したわけです。

恋愛って、もちろん精神的な問題なんですけど、肉体的な問題も現実としてはあるわけで、特に恋愛がうまく行くかどうか分からないような不安な時には、時として肉体的な問題がとても大きな問題に思えてしまうものだと思うんです。

・・・本当はそんなこと全然大きな問題じゃないんですけど、それは今になって言える事で、その時はそうじゃなかったわけです。

で、結局、ただれたインノウをぶら下げたまま彼女に会いに行きました。

僕達は今時?って思われるかもしれませんが、お互いあんまりお金が無かったんです。

なんたって愛知から青森までは遠いですからね。旅費だって結構な出費なわけです。僕はもちろん就職していて給料をもらっていましたが、それほどお金に余裕が無く、友人に借りて行きました。彼女の方はアルバイトをしてましたが、やはり僕の所に来るとなるとかなり大変なことなので、まさに、すごく重要な対面だったわけです。

彼女のご両親やご兄弟も交えて食事をした後、彼女は僕の泊まってるビジネスホテルに話がしたいとやって来ました。

いろいろと話をしてるうちになんだか「そういう雰囲気」になってきたのですが、その間にも痒さと痛さは無常にも襲って来てました。

甘い雰囲気とは裏腹に、早く一人になってガシガシ掻きたい、と強烈に思ったり、雰囲気に身をゆだねたら秘密を知られる!と思ったり、ビジネスホテルに女性を連れ込んだとホテルの人に思われたら嫌だなあ、などという思いもチラッとよぎり、結局僕はその雰囲気を拒絶するように、「明日またね。」と別れを告げました。

彼女はその後2ヶ月ほどして縁談があり、いろいろありましたが再び会う事無く僕達は別れました。でも、もしあの時あの雰囲気に身を任せていたら、今は違った人生を歩んでいたかもしれません。

そう思うと、結局はお互いの(と言うか、僕の)心の問題だった、とは思うものの、「インノウめ!」とも思うわけです。

ね? 結構インキンも恋愛に関係アリアリでしょう?

え? インキンのその後ですか?・・・さすがにこの薬じゃあかんなと思い、医者に行こうかとも思ったんですが、その前にもう一回薬局に行こうと思って、薬局で別の薬を探してるうちに、インノウ湿疹というのがある事を知りました。それには、水虫の薬は効かないそうなんです。俺って、もしかしたらインキンじゃなくてインノウ湿疹かもしれないと思い、その薬を買ってきて塗って見たら、、、すぐ治っちゃいました。

嗚呼! アホやった!

皆さん、無知って運命を変えてしまうかもしれません。だから何でも知っておいた方がいいですよ。「知は力なり」って、ほんとですわ。

・・・でも、考えてみると彼女と結婚出来なかったからこそ、今の家内と結婚出来たんですから、実はインノウ湿疹サマサマだったのかも。・・・アハッいいように捻じ曲げてるかな? 

何しろ、インキン、いんのう湿疹はちゃんと治しときましょう。恋愛に関する大事な心得の一つですよ。

では。

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