中年よ、大志を抱け!

中年よ、大志を抱け!

お金の問題



今日は、あの時とはまた別の意味での、お金にまつわる話しです。お金が無かった事で切ない思いをした・・・お金のないことがその恋がうまくいかない本当の原因じゃないのに、そうだと思ってしまった、って事、ありませんか?今回は、そんなあたりのことをちょっと・・・


大学2年の時に好きになった人は、僕の一つ後輩の人でしたが、彼女は毎月仕送りが10万円もありました。

僕は0円でした。0って、無限の可能性を秘めてる数字だとか言いますが、何が無限か!ってなもんです。

それで、僕は二つ三つのアルバイトを常にしてたり、時々夜中にあちこちの学生寮に行っては、外に出ていた炭酸飲料のビンを集めて業者に売りにいったり、夜中に下宿近くの畑からキャベツとか大根なんかを無断でいただいたり、漁港が近かったんで、原付に乗って港まで行き、時々船の近くに落ちてたエビを拾ったりしてたんですが、彼女はそうではありませんでした。お嬢さんだったんです。

彼女と僕とは学部も違うし、学年も違うんですが、そんな僕でもちらっと知ってるほど、彼女は評判の人で、何人かの男達が彼女にアタックしました。しかし、幸か不幸か僕が彼女とお付き合いする事になったわけです。

理由は、彼女がお付き合いして下さいと言って来たんです。・・・ピアノ室でピアノを弾いてる僕の姿が素敵だったそうで。(いやいや、僕が言ったんじゃないですよ)・・というか、当時はピアノ室でピアノ弾いていた男と言えば僕だけでしたんで、単に珍しかったんでしょうね。僕、その頃はいつもジーパンに素足で下駄はいてましたし、弾いてたピアノも、短大生が弾くようなバイエルとかツェルニーとか童謡なんかと違って、ロックとかだし、アレンジの練習のためと思って、アニメソングや童謡をロック風に弾いたり、長調を短調に変えて弾いたりしてたんで、それまでにも、女子学生から動物園のおりの中の動物を見るような目で窓越しに見られたりした事もありましたが、僕は別にそうやって女性の気をひこうと思ったわけじゃなかったし、モテたいためにピアノをしていたわけじゃなかったんですが、そう言われたのはそりゃ嬉しかったですね。それまで「かっこいい」なんて言われた事全く無かったもんでしたから。高校時代、「なんかいつもニヤケてて気持ち悪い」と言われた事は多々ありましたけど・・・。それだけ大学の頃はピアノには真剣だったんでしょう。彼女、「人があんなに真剣になってる顔、はじめて見ました」、とか言ってましたもん。←ちょっと自慢ぽいこと書いてんなぁって?、、、御容赦御容赦・・・

しかし、お付き合いして下さいと言われると、ボ~っとなってしまって、そりゃ、しても良いけど、なんて言いながら、たちまち今度は僕の方が彼女の事を強烈に意識するようになってしまいました。

こうなってくると、恋愛力学上、僕が追っかける側になってしまったわけで、彼女をつなぎとめなければならないという事態に追い込まれる事になったわけです。可愛いいと評判の彼女が、僕と付き合ってくれる! それはもうそれだけで十分ステータスシンボルみたいなもんで、その関係を壊したらいかん、ってなもんでした。

しかし、お付き合い・・それって何? どうすればいいの?ってのが当時の僕の大きな疑問でした。だって、彼女を持った事なんてなかったし、当然、付き合った事なんてなかったんですから。高校時代、ごく少数の例外を除いて、ほとんど女生徒とは話さなかったし、第一まともに顔が見られなかったくらいでしたもんね。

だから、付き合って欲しいと言われても、嬉しかったけど、さっぱりどうしていいか分からなかった訳です。

今度どこに行ったらいいんやろう? 何食べたらいいんやろう? 何話したらいいんやろう?・・・常にそんなことばっかり思ってました。

たとえば、話題と言ったって、「君、卒業したら何したいの?」などと聞くと「まだ1年生だもん、決まってないの。学生時代に自分のしたい事を見つけたいと思ってるの」なんて言うわけです。「そうか、見つかるといいね・・・」くらいしか返事が出来ません。彼女は無口な方で、詩とか書いてましたが、少女のポエムって感じで、その、つまり、なんだかあんまり会話が弾まないんで、とりあえず音楽のことや、当時音楽以外に強い興味を持っていたギリシャ神話とかの世界中の神話のこと、子供の頃夢中だった昆虫のこと、イギリスじゃミステリーサークルってのがあるらしいぞ、ってなことをべらべら話すわけです。彼女は、面白いのか面白くないのか、よくわからんというような顔をしてました。何とか笑わせたい、とも思い、しょーもない事言っては小さな笑いを無理にしぼり出すってな事もしてみました。

その当時は、二人で行くところといえば、学校の近くの浜辺が中心でした。バイト前の夕日の沈む頃、ポチャンと、海のあちこちで魚がはねるのを二人で見るってわけです。僕らがいたところは、都会からずいぶん離れてたので、他にこれと言ってデートする場所なんてなかったわけです。下宿に連れてきたって、エレキピアノとギターと、小さな机があるだけで、テレビなんてのもありません。コーヒーだってごはんぢゃわんで飲んでたくらいでしたから、来てもらうのが申し訳ないと思ってました。女性の下宿には行けない、と当時思っていましたから、彼女の部屋には、誘われたんですが、入りませんでした。

どこか観光地とかに行きたい、と思っても、貧乏学生、そんなお金もありませんでした。彼女は、私が今度お金出すから、と言ってくれましたが、デートの費用は男が出すもん、と思っていたのでそれは絶対に嫌でした。

だからデートって言ったって、いつも行ってる浜辺でメロンパンと牛乳を飲むってな事ばっかりだったわけです。

そうこうしてるうちにネタ切れみたいになって来て、どうしたらいいのか分からない、かっこいいところを見せたい、好きだという思いを伝えたい、それらがごちゃごちゃになって、やがて、「お金があればなあ・・・」になったわけです。

今度バイトの給料入ったら、あそこの2500円の豪華定食を食べに行こう、というのが僕の口癖になりました。当時、そのへんじゃ豪華なレストランに行こう、というわけでした。・・・でも、現実にはなかなかその2500円×2=5000円というお金が出来なかったんです。

やがて彼女は、「先輩って、本当に私の事を好きなのかどうか分からない」、と、同級生に相談しはじめました。

相談された人が「本当に彼女の事好きなんですか?」と僕に聞いて来たのです。

「うん」、と答えましたが、死ぬほど好きか、と言われるとよくわからないと言うのが本音でした。

「じゃあ、彼女の気持ちをきちんと受けとめてあげてください」、とその人は言いました。

「どういう意味?」と聞くと、「それはよく考えたら分かると思います」というんです。・・・どんな宿題や、それ・・・

ほとんど毎日彼女と学校で会い、バイトが終わってから彼女を家まで送り、そして一人で自分の下宿に帰って来る、という毎日が続いてましたが、他に何を? と思った訳です。

カップルになってる奴らって、何してんのかな?って思いました。それとなく彼女を持ってる友達に聞いてみたんですが、遊園地行った、とか、どこどこ行ってきた、とか、言うわけです。部屋じゃどうしてるんや?と聞くと、ご飯食べたりテレビ見たりいろんな事話したりしてるって言うわけです。で、とにかく妊娠しないようには気をつけてる、なんて言うわけです。

僕だって恋人同士がどうしてるか、って事、知らないわけじゃありませんでした。僕の行ってた大学は、その地方では同棲率が高いという事で有名でしたしね。でも、好きだという気持ちと、肉体的な衝動とをごっちゃにしたくない、という気持ちがありました。学生が同棲してるのってよくないと思ってたし。それに、たとえそうしたとしても、いつもいっしょにいるにはお金が必要だしな、と思ってたんです。

やがて彼女は、「先輩は私のために無理してる」と言いました。そして「私、そういうの疲れる」と言いました。「先輩は、私の事を好きだとか愛してるとか、ただ思いこんでるだけ」とも。

「好き」、「愛する」・・・21歳にして初めて身近な問題としてつきつけられました。

僕がその答えを出せないうちに、彼女は去って行きました。というよりも、その答えを、僕はお金に求めてしまいました。もっとお金があったら、彼女に幸せな気持ちになってもらえる、と。・・・違ってたんですね、答えが。だって彼女が次に付き合った男性は、やっぱり貧乏学生だったんですから。彼女が求めていたのは、彼女の気持ちを共有する男性だったわけです。僕は、結局のところ彼女の気持ちを受け止めようとはしてなかったわけです。というか、僕の独り善がりの恋愛観に、彼女を縛っておこうとしていたわけですね。で、うまく行かないのをお金のせいにしてたわけです。

しかしその頃の僕は、何がこの恋の終わりの原因だったのか良く分からないままぼう然と失恋し、「女なんてめんどくせえや!」 と無理やり思いこもうとしました。

ええ、失敗でした。きっと彼女を傷つけてしまったと思います。僕は恋愛って事がさっぱりわかってなかったんですもん。まあ、縁が無かったといえばそれまでですけどね。

そして月日は流れ十何年。最初に言ったように、今でも僕は、恋愛にはお金なんて関係ないよ、って、言えません。

でも、お金なんてなくても恋愛は出来るし、もしも恋愛の成功が結婚だとしたら、お金がなくても恋愛結婚は出来る、と断言は出来ます。

なんたって、貯金が三万円しかなかったけど、僕はちゃんと恋愛して結婚してるんですから。

そこで今日の結論。恋愛によってはお金も重要な問題だけど、お金が無くても出来る恋愛もある。お金無い人は、お金がかからない恋愛をしなさいっ! です。って言うか、何が人間関係をつないでいるのかを見極めなさいって事かな?・・・っていうか、今日の話題って、いつも以上に詰めが甘いなあ…単なる失敗初恋談だったりして・・・

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