中年よ、大志を抱け!

中年よ、大志を抱け!

夢で泣く


気がつくと、すがすがしく静かな、和風とも洋風ともつかないかなり大きな建物の中にいた。よく磨かれた縁側から、庭の青々とした樹木や美しくかわいらしい花々、みずみずしいコケを眺め、鳥のさえずりを聞いていると、ふと人の気配がした。振り向くといつの間にか部屋の中に、薄桃色の無地の和服を着た一人の気高い雰囲気をたたえた女性が椅子に座っており、僕に軽く会釈をした。僕もお辞儀を返し彼女を見ると、彼女の目は涙でいっぱいであることに気がついた。僕は、少しおろおろしながら「どうしたんですか?」と尋ねた。彼女は、壁を指さした。

壁には1メートル四方くらいの大きさの映像モニターが組み込まれていた。僕がそのモニターを見ていると、やがてそこにどこかの戦争の様子が映し出された。しかし、その映像はテレビや映画で見る映像とは違っていた。そのモニターは、単に映像だけを映し出しているのではなく、そこにいる兵士や市民達の恐怖や怒りや悲しみなどといった感情をも、直接心に伝える事が出来るもののようで、僕はとても客観的に見ることなど出来なかった。やがて、両親や兄弟を目の前で殺された幼い子供が泣いている映像が映った。別の場面では、別の場所で強姦される女性が映り、強姦した男が女性の兄弟から仕返しに殺される場面も映った。また、殺されそうになっている家族や友人を助けようにも恐怖で助けることが出来ず逃げてしまった人たちも映し出された。また、極度の飢えのためにただ無気力に座っている人々が映し出された。彼らのためにいろいろな場所から食料が送られ、それをトラックに載せている場面も、そのトラックのうちのいくつかは彼らのところに行かずにどこかのマーケットに行き売られるところも映った。また、強盗が店の人を脅してお金を盗む場面や、学校でのいじめなど、他にも今実際に世界のあちこちで行われているさまざまな事件が次々と映し出され、登場している人々全ての心の有り様が直接僕の心に刺さってきた。

全ての登場人物の心が直接僕の心に入り、それぞれの人の心になりきってしまうので、映し出された出来事の被害者にも加害者にもなった僕は、ずっと人間の業の深さに泣いていた。やがてモニターから映像が消えたので、僕は彼女の顔を見た。彼女は、美しいけれども深い悲しみに満ちた瞳でじっと僕の目を見つめたあと、静かに僕に言った。

「お願いです。もう私は泣きたくないのです。」


・・・で、目が覚めたわけです。あんまりリアルだったんで書き残そうと思って書いてみました。しかし夢の中の彼女、俺に何をしろっちゅうのか?・・・・


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