中年よ、大志を抱け!

中年よ、大志を抱け!

イマジン



ビートルズのコピーバンドもずっとしてましたし、名古屋の方はもしかしたらご存知かも知れませんが、今もあるのかどうかわかりませんが、かつて「ツイストアンドシャウトを1時間歌う会」というのがあって、それにも何回か参加したこともありました。

ただ、イマジンはしたことがありませんでした。したら?と言われたこともありましたが、そのたびに「う~ん、また今度ね」と答えてました。

曲自体は、それほどむずかしものではありません。ただし、それは構成とか演奏の外見という意味であって、本当にきちんと演奏して心をこめて歌おうと思おうとすれば、バラード調でしかもメッセージ色の強いこういった曲はすごくむずかしんですけどね。・・・ということは、歌詞に共感してなければ出来ないということなのです。

僕がこの歌をしなかったのは、実は長い間歌詞に疑問を持っていたからでした。僕は英語の歌を歌う場合、ある程度歌詞の内容を知るべきだと思っているので、一応自分で訳してみたり、訳を見たりしてからするかどうか決めてたんですが、歌詞に疑問とか何かある場合はメロディーがよくてもしなかったわけで、イマジンが、そうだったわけです。

なぜって、最初の「Imagine there’s no heaven」(天国がないことを想像してごらん)という歌詞に引っかかったからでした。

僕はキリスト教徒じゃないので、キリスト教で言う天国があるかどうかは分かりませんが、神社やお寺が結構好きな僕にとっては天国はともかく、極楽とか神々やこの世を去った人達が行く世界はあるだろうと素朴に思っていたので、それを否定するかのように見えたこの歌詞が引っかかったのです。

それ以外の「there’s no countries」(国がないこと)も、「no posessions」(何も”保持”しないこと)も「Imagine」(想像する事)は出来ましたが、最初の歌詞はどうしても想像することが出来ませんでした。

それで、この歌は嫌いじゃなかったけども敬遠してたんです。

ところが、湾岸戦争がおこり、イギリスではこの歌が禁止されたということを聞いて、意識してこの歌を聴くようになりました。

すると、なんとなくジョンの言いたかったことが僕なりに分かってきたような気がしてきました。

もちろん、あくまでも僕の理解ですから、ジョンの言いたいこととは違っているかもしれませんが。

僕は、彼の言う「天国がないことを想像してごらん」を、最初は、彼が神とか天国とかをを否定しているのだと思っていましたが、彼が否定したいのは、天国に行くためにもっていなければならないとされるもの、つまり、特定の教義によって作られたある社会にしか通用しないような価値観ではないかと思ったのです。

そしてそれは、ややもすると独善的なものになりがちなものだと思うのです。イスラム教徒のテロリストが神を称えながら自爆するというのは、そういう部分があるからだと思うんです。

自分や、自分の社会のあり方こそが正しのだという独善的な心がいったいどれほどの争いを生み出してきたことでしょう。きっとジョンは、その事を言いたかったのだと僕は思ったのです。

「”国”がないことを想像してごらん」・・・国とはなんなのでしょうか? 彼の生きた時代は、世界的に戦前のような国家観は無くなりつつあった時でしたが、各国の産業はまだ自国を中心に行われていましたし、ヴェトナム戦争はありましたし、冷戦構造は存在してましたし・・・つまり、先進国と呼ばれる地域でも国家を強く意識せざるを得ませんでした。もちろんヒッピーがいましたし、彼等を中心にしたニューエイジムーブメントが起きてましたが、まだまだ多くの人が実感として国が無いことを想像するのは、難しかったでしょう。

しかし、現在では産業も情報もグローバル化が進んでおり、政府の力が国民に重くのしかかってるような国はともかく、そうでない先進国のような国では、国家というものを肌で感じることが、確実に昔に比べて少なくなって来ていますから、以前に比べれば想像しやすいかもしれません。

きっといつかは、明治維新の時に藩がなくなり日本が一つの国になったように、世界中が一つの国になっていくのだと思うんですが、そうなったら、もちろん国家間の戦争は無くなるでしょうね。

しかし、きっとそういう状態が来るためには、世界中の人々が「何も”保持”しないこと」を当然のあり方として受け入れる必要があるのかもしれません。所有欲こそが争いを生み出すもとですから。

しかしこの場合は、共産主義で言われるような「私有財産の否定」とは違うような気がします。きっと大切な物は各自が持っても良いのだと思うんです。だって、同士として他人と付き合うのではなく、兄弟愛をもって世界を分かち合おうって言ってるんですから。兄弟は、それぞれの大切にしてる物までくれとは言いませんもんね。それに、想像してごらん・・という心にウエイトを置く考え方は、共産主義の唯物論とは違う物だと思うわけです。

それはともかく、「いつか君もそう思ってくれればいい」とジョンは歌います。世界を構成する人々みんながそう思うなら、きっと世界はそうなるはず、ということを言いたいのだと思うんです。その時代に生きてるということは、その時代を作っているのだということだと思うんです。

彼は、それまでの宗教観、国家観、経済観が、大は戦争の、小は泥棒や殺人など犯罪の原因なんだと言ってるんだと思います。

そして、その不幸な状態を変えるには、今までとは違うものの見方をしてごらんと語ってると思うんです。具体的にはまず「想像する」という手段を使って。

彼は、想像することの出来る人の心に希望を託したのだと思うのです。

自分なりにこじ付けかもしれませんがイマジンについて整理が出来てからは、しょっちゅう聞くようになり、また、歌うようにもなりました。

この歌で語られていることに疑問を持つことも否定することも自由ですが、放送禁止にするというのはどういうことなのでしょう? まだまだ争いを必要としている人がいるということなんだろうと思ってしまいます。

   人はただ僕が夢をみてるだけだっていうかもしれない、
   でも僕一人だけじゃないはず、
   そしていつか君もそう思ってくれればいい、
   そして世界が一つになってくれれば。

僕も今はまだ単なる「dreamer」ですが、想像し、創造する人になりたいとささやかながら思うわけです。

最後に、翻訳してくださったフルーティーさん、とても詞的な(あたりまえかもしれませんが)日本語に訳して頂いて、ありがとうございました。


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