emeraldsea

ジャン・リュック・ゴダール


「まったく最低だ、からスタートする人生だってある   2008.06.11日記









「俺は馬鹿だ」
これはフランスの古い白黒映画『勝手にしやがれ』の冒頭で主人公である若いチンピラが呟くセリフ。
映画が始まってしばらくセリフらしきセリフがないまま画面が流れてゆくのだが、そんな中で物語の最初に唐突に主人公が口にするセリフが上の言葉である。
記憶違いでなければこの映画を初めて観たのが18歳の頃だった。
新聞配達を行う店に下宿しながら生計を立てていた当時に何気に目に止まった映画館で観た映画、これは巨匠ゴダールの初監督作品である。
この古い白黒映画の中で今でも鮮明に覚えている幾つかのシーンがある。
おおよそ三つに絞ることが出来る。
まず出だしで主人公が「俺は馬鹿だ」と呟くシーン、
それから、主人公が好きになった謎の美女とのベッドの上での味気ない会話のシーン。不確かな記憶だが、主人公がフェム・フェタールに煙草をふかしながら質問する場面が強く記憶に残っている。「俺はお前にとって一体何人目の男だ?」、女は両指をかざしながら無言で男に微笑む。
そして最も強烈なシーンが映画のラスト・シーン。
警官から銃で撃たれた後に主人公は自分で自分の瞼を閉じながら静かに呟く。
誰に向かって呟くというわけでもなく、ただ、一言の言葉を発するのだ。
「まったく、最低に汚ねえ」


繰り返すが、これはゴダールの初監督作品である。
「まったく、最低に汚ねえ」
このような言葉を吐き捨てることからゴダールの映画史はスタートしているのである。
これは同時に僕の人生とて似たようなものであるといえる。
まったく最低な人生なのだから。


















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