2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
全2件 (2件中 1-2件目)
1
先日水曜日、ムハマド・ユヌスさんの講演をうかがいました。一番前の席に座り、ユヌスさんから1.5メートルの距離でかぶりついておりました。==【メモ】All the crisis is only coming from the role of human being; now we are only focusing on part of the role. Use full capacity of human being.「世界中で起こっているすべての問題は、人間の在り方を一面的にしかとらえずに作られたシステムに原因ある。現在のシステムは”人間は経済的利益を追求する生き物だ”という人間の一面にしか焦点をあてていない。しかし、人間はそうではない。人を幸せにするため、人の笑顔をみるためにも、私たちは動く。人間は多面的な生き物なのだ。我々は現在、我々の手によって構築したこの一面的なシステムのおかげで、ゆがんだ世の中を生みだし、貧困を含むあらゆる社会問題を生じさせている。しかし、その原因は、我々がシステムに踊らされ、人間として持っている能力のほんの一部しか使えていないからなのだ。だから人間として、人類として、我々のもっている能力のすべてを使って未来を切り拓いていこうではないか。」【メモ】Technology and creativity of human being is unlimited. All "impossible" will become "possible" if you can imagine. The distance between possible and impossible is shrinking and it is going to merge.「人間の創造力は無限だ。想像できる未来はすべて実現する。不可能だと言われていることも、もし、あなたの頭の中でそれを可能にするイメージが見えれば、それは実現可能だということである。我々がイメージできるものはすべて、現実のものとすることができるのだ。だから10年後どうなっている、20年後どうなっているという理想の未来を想像してみよう。可能と不可能の距離はどんどん縮まり、やがてそれは一つになるだろう。不可能なことなんて、この世には存在しないんだ。」==事前に著書を拝読し、思想は理解していたつもりでしたが、実際に目の前で熱弁(文字通り熱弁)を振るわれるユヌスさんは、想像以上に理想主義者でありながら、想像以上に現実主義者だとも感じました。ソーシャル・ビジネスの提唱者ではありますが、経済学者であり、グラミン創設前は、アメリカの大学で資本主義経済について教鞭を振るわれていました。それゆえか、経済的利益を求める人間を決して否定してはいません。ただ、それは人間の一面にすぎないとおっしゃっていました。「人が持つ、経済的利益を求める一面は、現行の資本主義の下、利益最大化ビジネスの一員として身を置き、そのシステムの中で今までどおり大いに働けばよい。ただ、人には別の側面、隣人を幸せにしたい、みんなで豊かになりたい、という欲求も持っている。それをソーシャルビジネスとして実現すればよい。現行ビジネスに加えてソーシャルビジネスをすればよいし、現行ビジネスの株式市場に加えて、ソーシャルビジネスの資本市場を作ればよい。」ソーシャルビジネスは、社会的な問題を解決することを目的としたビジネスの仕組みです。出資者に出資金以上の配当を返さない仕組みだけれど、出資者は社会問題を解決した、公共の利益となるビジネスに加担できたという「喜び」「満足」を配当として受け取ることになります。ユヌスさんは経済的利益を徹底的に追求する会社は否定しませんが、そんな会社がソーシャルビジネスを立ち上げるときには大いに応援し手を組むとおっしゃっていました。その場合は当然別会社として運営されることになりますが、ただし、現在の株式会社がおこなうCSRはまやかしだともおっしゃっていました。既存の仕組みの中に存在する以上、最終的には株主利潤を追求する方を選ばざるをえない。株主に出資金以上の配当金を支払っている(支払っていこうとする)以上、その会社は、社会問題を解決するための仕組みにはなりえないということです。これには納得感がありました。そんな中、私がさせていただいた質問は、「ソーシャルビジネスは出資者に出資金以上の配当は返さないものの、ソーシャルビジネスの経営者、従業員への待遇についてはどう考えるのか」という質問でした。事前に「雇用者は”良い”労働条件で給料を得ることができる」「経営者はそのビジネスの雇用者の最低報酬の7倍までの報酬しか受け取らない」とユヌスさんがおっしゃっていたことは知っていましたが、「良い条件」や「7倍」の背景にある思想やロジックをユヌスさんの言葉で直接お聞きしたくてさせていただいた質問でした。結果、「7倍」に関する直接的回答はお聞きすることができませんでしたが、「社会的問題を解決するのは重要な仕事だ。経営者が破格な報酬をとっては本来の意味をなさないが、市場価格より高い魅力ある報酬が必要だ。人は自分が幸せにならなければ、他の人を幸せにすることができない。ソーシャルビジネスだからこそ、きちんとした報酬が必要だ。」との回答をいただきました。「人は自分が幸せにならなければ、他の人を幸せにすることができない。」よく使われるフレーズではありますが、これを、バングラディッシュで本物の貧困と向き合いソーシャルビジネスという仕組みを30年以上育まれたユヌスさんご本人の口からお聞きできたことは私の胸に熱くしっかりと刻まれました。そして同時に、「人間の欲」に正面から向き合っている方だともますます感じました。実際、マイクロクレジットは、賛否はあるものの、そもそも5人組のグループチームに実施され人間の集団意識や羞恥心、向上心などを刺激したと言われています。また、一番の貧困層に起業家になることを後押ししたことなどを見ても人の向上心や自己実現、創造性の発揮を信じた仕組みです。多面的な人間の”欲”を全体としてとらえることで人類がゆがみなく進化・発展し、平和をもたらすことを可能にする。直接お目にかかって、理想主義者で現実主義者で、そして、肌つやがとってもよいユヌスさんを知りました。時間をオーバーしても伝えたいことが、ユヌスさんの表情から溢れていました。自分の可能性、みんなの可能性、人類の可能性に、今まで以上に大きく太い光が差し込んだ気がしました。
July 30, 2012
コメント(0)
久々に実家で夕食。父と母を見ているとコントのようにどうしようもない2人だけれど、いい夫婦だなぁ~と思う。2月の実家の引っ越し以来、親戚に囲まれて生活していた環境から、すっかり2人だけの老後に。認知症気味の母と、それを見守りながらも不自由な目が理由だけではないくらい元々なにもできない父。私:「最近パパとママは毎日なにをしているの?」父:「探し物。一日の大半が探し物でそれなりに忙しくしているよ。笑」母:(食卓を立って冷蔵庫へ)「…あら?ママは何を取りにきたのかしら?」私:「お漬物か何か?それともビールじゃない?」父:「もうビールってことにしとけ」父:「会社員時代に社内の賞の表彰式がわざわざ奥さん同伴で開催されたのに、どの受賞者のスピーチにも奥さんのことが一言もでてこない。俺は自分のスピーチのときに言ってやったさ。”○さんの奥さんはまるで女学生みたいに何を買うにも旦那さんに目を輝かせて聞く。×さんの奥さんは小学生みたいに無邪気だ。△さんの奥さんは頭が切れて◎◎さんはきっと心強いと思う。”みんなそんな賞を取れたのも奥さんの支えがあってこそ、2人でとったんだ。くだらないゴマのすり合いスピーチじゃなくて、どうしてそういうことをみんな言わないんだ。」3時間半の滞在で、父と母それぞれがそれぞれのメガネを探すこと2人で合計10分。大事な手紙を探すこと2人で合計10分。もう2年以上使っているはずのDVDレコーダーなのに、今さらドラマの録画の仕方に奮闘すること2人で15分。冷蔵庫にあったはずの海苔の佃煮を探すこと5分。父:「もうね、横に置いた領収証が瞬時に消える家だからね。油断ならないよ」父が探していた大事な手紙の1通は、15年程前に、父の会社の後輩の奥様からいただいたカードでした。そこには「奥様とのお二人の絶妙のコンビネーションには、お二人が前世からつなっていたのではないかと感じざるをえません」と書かれていました。そして、もう1通は、祖父が25年前に母の働き口のことで知人に宛てた手紙。そこには母のことが「次男の嫁というより娘です」と書かれていました。それらを私に見せたくて、大切にしまいすぎた上に目が不自由で探せなくなった父。祖父の手紙を読み返して、ぽろぽろと涙を流す母。親バカならぬ娘バカかもしれないけど、でも、いいのです。だって、父も祖父からの手紙を私に見せながら、「いやー、いい親父だった」と自慢してくれたから。
July 22, 2012
コメント(0)
全2件 (2件中 1-2件目)
1


