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Nimrod1215

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Aug 22, 2011
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2011年サイトウ・キネン・フェスティバル松本

【演目】

J.S.バッハ 『アリア』
(管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068 より)

バレエ『中国の不思議な役人』
 〔全1幕〕

歌劇『青ひげ公の城』
 〔全1幕 原語(ハンガリー語)上演 字幕付き〕

作曲:バルトーク・ベーラ


【出演】
青ひげ公:マティアス・ゲルネ(青ひげ公の城)
ユディット:エレーナ・ツィトコーワ(青ひげ公の城)

吟遊詩人(朗読):アンドラーシュ・パレルディ(青ひげ公の城)

Noism1 
井関佐和子、宮河愛一郎、藤井泉、櫛田祥光、中川賢、青木枝美、
真下恵、藤澤拓也、計見葵、宮原由紀夫、亀井彩加、角田レオナルド仁
Noism2 

合唱:SKF松本合唱団(中国の不思議な役人)
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:沼尻竜典(中国の不思議な役人)、小澤征爾(青ひげ公の城)


空間:田根剛、 リナ・ゴットメ、ダン・ドレル(DGT)
衣裳:中嶋佑一(artburt)
照明:伊藤雅一(株式会社 流)/ 金森穣

3年ぶりに松本のサイトウ・キネン・フェスティバルへ行ってきました。初回開催から今回で二十周年になるとのこと。前回はヤナーチェクのオペラでしたが、今回はバルトークのバレエとオペラの組み合わせです。高齢で体調も安定しない小澤氏の健康に配慮してか、前半のバレエは沼尻氏、後半のオペラは小澤氏と、2人で振り分ける形になりました。

先ず、バレエ『中国の不思議な役人』から始まる予定だったのですが、入場してきたのは小澤氏。数日前に沼尻氏が脚の怪我から東フィルのコンサートをキャンセルしていたため、『役人』も小澤氏が代わって指揮するのか?と一瞬思ったのですが、東日本大震災の犠牲者追悼のため「アリア」を演奏するので、演奏終了後は拍手をせずに黙祷して欲しいとのアナウンスが有りました。SKFオケの弦は、濃厚な感じではなく清冽な美しさでこの曲を奏でていたと思います。


舞台の中央には四角いテーブルがあり、これはお立ち台になったり、ベッドになったり、衝立になったり、壁や塀になったりと様々な使い方がされます。
幕が開くと大勢の黒子たちがとぐろを巻くように重なり合い蠢いています。やがてゴロツキの親子が登場し、いけにえに捧げられるようにしてミミも登場します。3人の客のうち最初の2人はプロンプターBOXあたりに作られたマンホール状のハッチから登場し、そこから退場します。3人目の役人は最初同じ場所から登場しようとしますが、押し止められた後、舞台奥の高い位置にある穴から手前に駆け下りてきます。役人の背後には黒子が居て、いわゆる“人形振り”で演じられます。演出で最も印象的だったのは役人が天井から吊り下げられ(黒子の人も一緒に上がっていました!)た後、それまで束ねられていた幾つもの照明具がパッと拡散するシーンで、これは暗がりで見る流し灯篭のように幻想的な美しさがありました。
オーケストラは要所(特にブラス)には欧米からの助っ人を配置し万全の布陣。パワフルで驚くほど巧いです。今回は演奏会ではなく踊りの伴奏のため、・積極的・個性的な表現が見られなかったのは仕方が無いでしょう。怪我の影響が心配された沼尻氏は予定通り指揮してくれました。ただ、歩行がかなり困難なため、カーテンコールにはピットから対応していました。

後半はお目当ての『青ひげ公の城』です。演奏会形式の公演は聴いた事があったものの、オペラの本公演では初めてです。
ユディット役のツィトコーワはこの役を得意としているらしく、ゲルギエフ/LSOとも録音を行っています。声量も十分あって安定しており、熱っぽい演技と美しい容姿はこの役によく合っていたと思います(力士のような体型では興醒めです)。一方、青ひげ役のゲルネはユディットの反応を冷静に受け止めているといった風情で、歌唱面、演技面で物足りなさを感じました(演出の問題もあるでしょう)。青ひげ役の初演はバリトン歌手が担当したらしいのですが、現状ではより暗く、重い声質のバスバリトンやバス歌手によって歌われることが多く、そちらの方が合っているように思われます。その辺りの問題もあるのかも知れません。
小澤征爾指揮のSKFオケは『役人』の時以上に雄弁で、強力なブラスは勿論の事、弦楽の豊麗な美しさが印象的でした。この作品が「こんなにも美しい音楽だったのか!」と認識を新たにした次第です。
この作品の演出も舞踊家・振付師の金森氏が担当したのですが、演出ノートによれば、歌手が外(表層)のユディットと青ひげを、舞踊家が彼らの内(内面)を表現していると言う事なのですが、あまり必然性が感じられなかったと言うのが正直なところ・・・。舞踊家が各部屋の状況を影絵や舞踊で表現し、場面転換、舞台進行のツールとして機能していたのは私にも分かりますが、演技を伴った歌唱があり、バルトークの音楽自体が雄弁に人間感情について物語っているため、さらに舞踊家によって内面の表現を付け加えると言うのは少々蛇足のように感じられました。

※このところ不安定な小澤氏の健康状態から判断して、一番キャンセルされる可能性が低いだろう初日のチケットを取ったのですが、2公演目、3公演目は体調不良で降板し、最終日の27日は再び小澤氏が振ったとのこと。21日に見た時はお元気そうな様子だったので、降板のニュースには驚きました。

(8/21 まつもと市民芸術館)





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Last updated  Aug 29, 2011 10:06:09 PM
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うらやますぃー。  
小澤さんの「青ひげ公」、生で楽しまれたのですね。
うらやますぃー。(チケット確保も大変なのに)
小澤さんにはまだまだ元気で頑張ってほしいです。
(私が最近小澤さんを生で聴いたのは、2006年夏の小澤塾オケ、マーラー「復活」かな。SKOのブラ1も良かった。)    ほうとう (Aug 29, 2011 09:58:15 PM)

Re:うらやますぃー。(08/22)  
Nimrod1215  さん
>ほうとうさん
個人的には小澤氏の場合、古典よりも近代以降の作品の方が好きです。そういう意味でも有り難いプログラムでした。
高齢で病み上がりですから、若い時のような仕事の仕方では倒れてしまうでしょう。ブーレーズやスクロヴァチェフスキのように80代になっても元気で活躍して頂きたいものです。 (Aug 29, 2011 10:26:18 PM)

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Nimrod1215 @ Re:あの字は(11/10) >ほうとうさん >大植さんの字でしたか…
ほうとう、りゅうび @ あの字は 大植さんの字でしたか。(ちょっと納得。…
Nimrod1215 @ Re:うらやますぃー。(08/22) >ほうとうさん 個人的には小澤氏の場…
ほうとう、りゅうび @ うらやますぃー。 小澤さんの「青ひげ公」、生で楽しまれた…
Nimrod1215 @ Re:なかなかの・・・(07/17) >ほうとうさん はい、素晴らしい演奏…

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