イルカの話 3





イルカの話 その3





また別の日、海洋生物学者のスタッフの友人の女性が遊びに来ていました。

彼女が海に入ると、3頭のイルカが交替で、彼女に寄り添うように泳ぎました。

周りには他の人も泳いでいたのですが、3頭のうち1頭が必ず彼女に寄り添って、

他のイルカは周りと適当に遊んでは、順番に彼女のところに戻って行くのです。

それはまるで、何かの儀式のようでした。

彼女はただ海に浮いて、順番にやってくるイルカたちと無言で見つめあっていました。

周りの人もそれに気づいて泳ぐのを止め、イルカたちが繰り返す動作を眺めていました。

一瞬、彼女を中心として時間が止まったような空間ができあがりました。

残念ながら、次の瞬間には、一人の男性が「イエーイ!」というノリで割って入ってきて、

イルカたちは散っていってしまい、私たちは現実に戻されました。

場の雰囲気が読めない人は、どこにでもいるものです。



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(写真: Denis Richard)




彼女が海から上がると、海洋生物学者(ラッセル)が、黙って彼女をボートの後ろに連れてきました。

ラッセルは友人に向かって、「彼氏とどうしてる?」「最近会ってるの?」などと聞いていました。

ラッセルが真剣な顔で場違いな話をしているので、不思議に思っていたら、

次のラッセルの言葉にひっくり返りました。

「あなた妊娠してる?」

友人は「いや、多分、そんなコトないと思う」

ラッセルは「すぐ調べなさい。あのイルカの動きは怪しい。すぐによ。」と言いました。



彼女は妊娠していました。

イルカと泳いだときは、妊娠数日という頃でした。

ラッセルによると、妊娠したイルカに対する仲間のイルカの行動にソックリだったそうです。

「それってイルカの儀式なの?」と聞くと、「分かるわけないじゃない!」と言われました。
(ラッセルは、テキサス生まれの豪快な女性です。)

イルカに祝福された彼女は、生まれてきた女の子を“Dolphie”と名付けたそうです。





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