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May 18, 2008
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カテゴリ: 漫画

あかく咲く声(第1巻)
あかく咲く声(第2巻)

私は彼の言葉を
聞いたことがなくて

たまに聞こえる
笑い声に耳をすます



それでもその声はとてもきれいで
私の胸の奥に赤い花を咲かせた


その花の名はたぶん--


「緑川ゆきの原点」とも言われている『あかく咲く声』が文庫で再版されました。
途中からファンになった者としては、たとえ画の小さい文庫とはいえ喜ばしい事です。
あの 『夏目友人帳』の緑川ゆきさんの初期作品です。
新刊の発売日ともなれば単行本が書店に平積みされる あの 『夏目友人帳』です。
妖物が漫画界で今ちょっとしたトレンドとなっているようですが、私は『夏目友人帳』の人気は一過性の物ではなく、この作品は確実に10年後も遺っていると思います(アニメの方はまだ未知数ですが)。
緑川さんは、絵は下手です。下手というか、万人受けはしない絵柄といった方が近いです(私は好きですが)。
私は緑川さんの単行本を現在までに9冊購入しているので彼女の作品の「テンポ」には慣れていて、この初期作品もすんなり読めました。
絵の巧い者が即優れた漫画家ではない事は先日のブログで書きました。

九州でマンガ講師をやった事もあるそうです。

この作品は、皮相的には警察の特殊部隊に協力している少年と、彼を取り巻く人々と、彼を想う少女との恋を描いた、事件物、あるいはサスペンスでしょう。「サスペンス」だと思って読むと明らかに力量不足です。「高校生が警察に協力している」という設定に関して説得力の点で弱いです。

第1巻の帯に「緑川ゆきの原点がここに!!」とありますが、狭義には「緑川ゆきの『美意識』の原点」と言えると思います。彼女の美意識とは、人が人を想う心(男女の恋だけでなく、子供を大切に思う大人、あるいはその逆の想い、人間と人間ではない者の交わりも)、届かない想いや縮まない距離、登場人物が自分の非力さを自覚する様に端的に現れています。集約すると深い悲しみや胸が痛むような切なさ、のような物だと思います。
指輪にサイズがある事も知らずに辛島が国府に贈った指輪、発した言葉が「暗示(命令)」にならないように鼻を押さえて国府に話しかける辛島、こんなどこか不器用な処が私はとても好きです。
辛島がどれだけの言葉を「飲みこんできた」のか。
多感な思春期に犯罪と向き合う彼の「良心的な面で強く彼をつなぎとめてくれるような存在」、それが国府だった。一言で書くとあまりにありきたりに感じられてしまうかもしれませんが、国府の辛島に対する想いがとても真っ直ぐです。とても真っ直ぐで当惑させられるほどですが、「人を想う気持ち」としてとても綺麗な形をしています。

ねぇ 辛島くん
私ね
雪が降ると
桜が咲くと
夕日を見ると
雨音を聞くと
草原に立つと
あかい花を見るとね
辛島くんを思い出すよ
いつもいつも考えて
胸がいっぱいになるんだよ
「私
辛島くんが好き」


読み切りとして描いた第1話が「ララ」平成11年2月号、最終話が「ララDX」平成13年1月号なので、最初と最後で作風の急激な変化はなく安心感があります。
最終話は川口さんの回想を挿入する(&殺されたと一瞬思わせる)形で素敵にまとまってます。

辛島の下の名は「世津」という設定だそうです。 『緋色の椅子』 のヒロイン・セツと同じ響きですね。この作品も大好きです。


「けど島さん変な力が入っている気がする」

思い出した
ギター教えてくれてた人が言ってた
好きだから つい戦ってしまうけど
好きならば愛せばいいんだって-…」
は 蛍火の杜へ
『あかく咲く声』はデビュー直後の作品という事もあり、やや勇み立ってしまっている部分はありますが、「漫画」に対して実直に取り組んでいる姿を感じ取る事ができ、気に入りました。
『夏目友人帳』の方は第5巻まで巻数を重ね、自然な形でさりげなくギャグも入るようになりました。
私はこの人の作品は読んだ事がないのですが、緑川ゆきさんは小説家の緑川七央と姉妹だそうです。
私は所謂「作家の遺伝子」と云う物の存在はあまり信じてませんが、大仰に言えば、緑川ゆきは「物を描く」事を宿命付けられてこの世に生を受けたのでしょう。

彼女は漫画制作に於いて「一番好きなのはネーム」と述べています。
これはペン入れが苦手な事の言い訳ではありません。何故なら「苦しいけれど一番楽しい」と言っているからです。
ネーム切りはいわば「伝えたい事をどう伝えるか」を組み立てる、一番重要なプロセスだと私は思います。その一番重要な部分を大切にしている緑川さんの作品だから、魅力的なのだと思います。

透明ブックカバーはこのサイズ(白泉社文庫は天地が少し多いのでやや詰詰になります)

透明ブックカバー☆文庫版ブックカバー(5pack)☆
透明ブックカバー☆文庫版ブックカバー(10pack)☆

これはお勧めです。誰にでも自信を持ってお勧めできます

『蛍火の杜へ』( ★ )
『緋色の椅子』( ★ )
『夏目友人帳』( ★ )( ★ )( ★ )

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最終更新日  May 18, 2008 09:24:56 PM
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