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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.09.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
夜風が気持ちいい季節が巡ってきた。

私は、星空のきれいな場所にわが列車を停止させて、
ヤンスカ様の深夜のティータイムにお付き合いしている。

このところ、あのお方と私の間には、
微妙な空気が流れていた。
ちょうど、1週間前の夜に、遡ってみよう。


ウー様のお父上が、ウー様と久しぶりの面会にやってきた。
いつもなら、挨拶をかわし、すぐにウー様をお預けになっておしまいだが、
今回、ヤンスカ様は私に話していた。


私は、先週、あの方が列車の中から夜のウイーンの街を眺めて
涙を流す姿を見守ってきた。いや、あの方は、私がそれを見ているとは知らない。
古い観覧車や、ライトアップされた大きな教会や、シェーンブルン宮殿を見て、
何時間もお一人でいらしたのだ。

おそらく、時間を巻き戻して、確かにそこに存在したウー様のお父上との
幸せだった日々を見つめていらっしゃったのであろう。

私は、もちろん、オーナーの幸せを一番に祈っているので、
もしかして、ヤンスカ様が、やはりウー様のお父上のことを愛していらっしゃるのなら
誰よりもそれをお喜びし、支えなくてはと思っている。
ヤンスカ様の幸せが、私の幸せ。
呪文のように、心の中で何度も繰り返す。


じわじわと私を覆っているのも事実である。

当日、私は、ヤンスカ様を送り出して、ひたすら待っていた。
あの方は、明け方に戻ってきて、上機嫌であった。
でも、何があったのか、教えてはくださらなかった。

先ほど、あなたも一緒にお茶を飲みましょうと言われ、

ヤンスカ様にお出しした。

「あなたも隣におかけなさい、カーステアーズ」
おだやかな口調に、何を言われるのかと身構える自分。
「いつもいつも、心配をかけてごめんなさいね。
 今日は、しっかりと、あなたとお話をしましょうね」
「イワンを呼ばなくてもよろしいのですか?」
微笑みながら首を横に振り、おっしゃる。
「あの子は、まだ若くて、私に希望ばかりを吹き込もうとするでしょうね、
 だけど、今の私は、あなたに、ありのままを聴いてほしいのよ」

私は、自分が息をのみこんだ音が、オーナーに聞こえてやしないかと緊張する。

「ウーの父親はね、この夏に再婚したのよ」
「なんと申し上げたらいいのか…」
「あのね、カーステアーズ。あの人は、自由と、新しい愛情を求めて私のもとを去った。
 努力しても、仕方のない状況ならば、送り出すことが私の精一杯の、最後の愛よ。
 だから、あの人が、再婚して幸せになってもらわないと、
 見送った甲斐がないというものでしょう?」
「それほどまでに、あのお方のことをお好きでいらっしゃったのですね」
「そうよ、どんなに傷つけられても、とても、好きだったのよ」

私は、どうしても、タオルミーナの月夜に思いがとぶ。
無理に訣別を迫ったことで、この方を苦しめていたのだろうかと。
いやはや、それにしても、この夏、ヤンスカ様はせっかく見つけた新たな恋にも破れ、
メチャクチャな状況ではないか。

「なぜ?なぜ、あなた様は笑顔でそれを私に語れるのでしょうか」
「笑うしかないのよ、カーステアーズ。
 私はね、先週、考え抜いて、あの人にきちんとありがとうと伝えなくてはと思ったわ。
 悲しい終末を迎えた私たちだけど、笑顔で過ごせた時間も確実に存在したの。
 憎しみを越えて、前に進むためには、この儀式が必要だった」
「どうして、許せましょうか!」
「カーステアーズ、彼を許すと同時に、私は自分自身をも許さなくてはいけなかったの。
 愛って、エゴよね。本当に暴力と紙一重なんだわ。
 私は、結婚生活で、あの人の心を殺し、自分をも殺していた気がしていたのよ」
「しかしヤンスカ様、結婚とは契約でしょう?
 何があっても、手をたずさえて乗り越えていくものでしょう」

ヤンスカ様は、大笑いをなさる。
「ああ、カーステアーズ!可愛いお馬鹿さん。
 契約しなきゃ実行できないことなんて、そんな程度のものなのよ」

私はちょっぴり傷つく。
ヤンスカ様は、私を優しい目でみながら、おっしゃる。
「ごめんなさい、あなたも、私も恥ずかしいけれど、根っこではロマンチストでしょう?
 だからこそ、結婚という契約などなくたって、
 相手を大切にできるはずじゃない?と言いたかったのよ」

「あの人は言ったわ。私がとても元気そうなのをみてね。
 今まで、自分の人生を私にも歩かせていたんだね、悪かったと。
 そして、出会ったころの快活さを取り戻した私を見て、
 自分が、私の輝きを封じ込めていたんだとね」

「しかし、もし、あの方の心変わりがなければ、あなた様はそれなりにお幸せだったはず」
「いいえ、カーステアーズ、タラレバはやめましょう。事は起きたのよ
 そして、私は数年がかりで、自分の人生を生きる喜びを感じることができているのよ」

わがオーナーは、なにゆえに、これほどまでに強靭でいらっしゃるのか。
ある日、ぷっつりと切れてしまったりはしないのか。
もし、そんな事があれば、このお方は、笑いながら落下されるに違いない。
私が手を伸ばしても、つかもうとなさらないはずだ。

「どうしたの?カーステアーズ。どうして、そんな怖い顔をしているの?」

「怒るのです、ヤンスカ様、暴れてもよろしゅうございます!
 なぜ、なぜ、悟ってしまわれるんです?
 いや、あなたは、臆病になっていらっしゃるんだ。
 外に向けては、まあ、よろしいでしょう。
 しかし、心を閉ざされて、私にまで心をあけわたせないというのは、
 大変な侮辱です!」

「……」
「裏をかえせば、今のあなたは、誰よりも信じられる存在を求めているんだ。
 信じても、本当に大丈夫だと思えるまで、傍にいて支えてほしいくせに」

ヤンスカ様は、ショックをうけている。
私だって、同じぐらいにショックをうけている。
おかげで、私の言葉遣いはメチャクチャであるし、
いまや、感情が流れ出して、止まらないのである。

「あなたは、いつも私の事を誠実だと褒めてくださるが、
 じゃあ、あなたはどうなのか?
 自分自身に誠実でいると、胸をはって私におっしゃることができますか?
 さびしい、苦しいという感情をなぜ、認めないのですか?
 みっともなくて、いいでしょう。
 自分に誠実であれば、人からどう思われたっていいではないですか!」

私は、言いすぎてしまった。
隣で震えている私のオーナーは、その場で消えてなくなりそうな様子である。

「強いあなた様はおおいに結構でございます。
 あなた様は明るすぎる夏の日差しのようなお方ですが、
 光が強ければ、強いほどに、その影も濃いのです。
 いいですか?ヤンスカ様。
 あなた様の光も影もすべて受け入れてくださるお方を待ちましょう、
 そこに、気づかない男など、つきあう価値がないのですよ」

ヤンスカ様は、いまや、涙をはらはらと流し、嗚咽をこらえている。

「カーステアーズ、私は、私は…」

さあ、私。
この時こそ、私の肩をお貸しする時だ。
素早く深呼吸をして、一気に、彼女を抱き寄せる。

甘え方すら知らない、頑固なお方だから。
自分は、好き勝手に私にちょっかいをかけるくせに、
守ろうとすると、するりと逃げてしまうのだから。

空の色が変わるまでは、
私に、あなたを預からせてほしい。
やがて、あなたはバツが悪くなって、また日常の扉の向こうへ行ってしまうだろう。
もしかすると、もう私と顔を合わせることを拒まれるやも知れない。

だから、今は、
ひたすらあなたを抱きしめていたいのだ。





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Last updated  2012.09.16 06:15:44
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